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車載向けAtmos「Dolby Atmos for Cars」アルファードで体験してみた

「Dolby Atmos for Cars」デモ用のトヨタ・アルファード

ドルビージャパンは1月25~27日に東京ビッグサイトで開催される第15回オートモーティブワールドに出展し、ここで“車での移動空間がエンターテイメント空間になる”と謳う自動車向けの「Dolby Atmos for Cars」のデモカーを日本国内の展示会で初展示する。これに先駆けて、メディア向けの体験会が実施された。

同社は第15回オートモーティブワールドの「カーエレクトロニクス技術展」に出展し、「Dolby Atmos for Cars」仕様のアルファードを展示する。ブースは東5ホール 42-52。会場ではDolby Atmos楽曲の試聴体験ができる。なお、第15回オートモーティブワールドは業者を対象とした商談展のため、一般の人や学生、18歳未満の人は入場できない。

体験会では冒頭、音楽でのDolby Atmos採用状況や、Dolby Atmos for Carsの動向などについて説明され、Dolby Atmos楽曲についてはBillboardでシングルが100位以内にチャートインするトップアスリートの2/3が1曲以上の対応楽曲を配信しているとし、日本でもAdoやAimer、Official髭男dism、宇多田ヒカルのほか、小泉今日子、松任谷由実、矢沢永吉など採用アーティストが拡大していると語った。

Dolby Atmos for Carsについては、自動車業界で“CASE(Connectivity、Autonomous、Service&Shared、Electric)”を軸にした技術開発がトレンドになっていること、このうち“Electric”による電気自動車(EV)の普及により、車内静寂性が向上したことで、より高品質なカーオーディオが求められるようになったこと、少なくとも30分程度かかるEVの充電時間を快適に過ごせる環境を自動車メーカーとして提供する必要性があることなどから、採用メーカーが増えていると明かした。

具体的には2021年3月に米自動車メーカーのLucid Motorsが世界初のDolby Atmos対応EV「Lucid Air」を発表したのを皮切りに、NIOや理想汽車、XPENGなど中国のEVメーカーが相次いで対応モデルを発表。

2022年10月にはメルセデス・ベンツもDolby Atmos対応車の投入を発表

そして'22年10月にはメルセデス・ベンツがメルセデス・マイバッハ、EQS、EQS SUV、EQE、Sクラスから対応を開始し、対応モデルを順次拡大すると表明、翌11月にはボルボ・カーズが電動SUV「EX90」がDolby Atmosに対応することを発表している。

デモ用アルファードの車内
ダッシュボード中央にセンタースピーカーを備える
運転席と助手席前にはフロントスピーカー
Aピラーにはフロントハイトスピーカー

デモ用の車両はトヨタ自動車のミニバン「アルファード」に、合計21個のスピーカーを搭載して、7.1.6ch環境を構築したもの。センタースピーカーと左右のフロントスピーカー、サラウンドスピーカー、サラウンドバックスピーカーは、すべて30mm径ツイーターと170mm径ウーファーの2Way仕様。ハイトスピーカーはフロント、ミドル、リヤともに50mm径ユニットを採用している。トランク部分には250mm径サブウーファーを備える。

後部座席側、スライドドア上部にはミドルハイトスピーカーを備える
スライドドアに備えられたサラウンドスピーカー
サラウンドバックスピーカー
リヤハイトスピーカーはリヤゲート付近の天井に装備

今回は天井スピーカー“有”車両向けソリューションの“Configuration A”と、天井スピーカー“無”車両向けソリューションの“Configuration B”の2種類を体験できた。楽曲はApple Musicで配信されているものを使用し、これを車載システム代わりのPCでデコード、あわせて同PC内で車載状態にあわせたDSP処理も行なっている。

250mm径のサブウーファー

試聴はエンジンも掛けず完全に停車した状態で行なわれ、後部座席のセンターシートに座って行なった。まずは世界的DJのTiestoとSevennによるEDM「BOOM」を天井スピーカー有りの“Configuration A”で試聴。音像が運転席から後部座席へ移動し、さらに後ろの3列目/トランクエリア、そして後部座席を通って、今度は助手席側に移動するなど、車内を縦横無尽に動き回る様子が正確に表現されていた。

試聴にはApple Musicの音源を使った

同じ楽曲を天井スピーカー無しの“Configuration B”で聴いてみると、“Configuration A”では頭上から降り注いでいた上方向からの音が耳の高さあたりまで下がってきたものの、音像が動き回る様子は十分に聴き取ることが可能。ハイトスピーカー非搭載でもDolby Atmos楽曲ならではの魅力を充分に味わうことができた。この“Configuration A”では「Firtst Love(2022Mix)/宇多田ヒカル」も試聴したが、こちらでもサビのリバーブ感や、音像の移動感などをしっかりと楽しめた。

続いてはオーケストラの演奏として、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ジョン・ウィリアムズによる「帝国のマーチ(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)」を“Configuration A”で試聴。先程の「BOOM」のように音像が駆け回るような“分かりやすい演出”はないが、なにより音場の広さに驚かされた。

自分がアルファードの車内ではなく、しっかりと防音設備の整ったリスニングルームにいるのではないかと錯覚するほど、各楽器の音がグワッと広がり、ホールならではの響きも感じさせてくれる。それでいて各楽器の配置も丁寧に描かれていた。

そのほか映像コンテンツも試聴。高さ方向からの音がしっかりと再生されるため、ミニバンの中で映像を観ているとは思えない臨場感と迫力、没入感を味わえた。