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「iVDR EXPO 2013」。4K/ハイレゾ向け規格を年内策定へ
“パーソナルアーカイブプレーヤー”実現目指す
(2013/5/31 21:30)
リムーバブルHDDの規格団体・iVDRコンソーシアムは31日、「iVDR EXPO 2013」を開催。市場動向や、今後の可能性などについて加盟各社らがプレゼンテーションを行なったほか、ハードウェアや映像コンテンツなど新製品の展示を行なった。
iVDRカセット/プレーヤーがセットの映画コンテンツを6月発売
会場には、iVDR-S対応テレビである日立「Wooo」のGP1シリーズや、K1シリーズ、日立マクセルが4月に発売した初のBlu-rayドライブ搭載iVDRレコーダ「アイヴィブルー」などを展示。録画メディアとして、対応機器同士で簡単に抜き差ししてコンテンツを共有できることや、大容量のコンテンツを1つのカセットに収められることなどをアピールしている。
また、'12年から本格化した動きとして、あらかじめ映像/音楽コンテンツなどを収録したパッケージメディアとしての活用提案も各社から行なわれ、今後発売予定の作品が会場に展示された。
ワイ・イー・シー(YEC)は、アイ・オー・データ機器製のiVDRプレーヤー「IV-P1」と、300本の映画コンテンツを収めたiVDR-S、650ページの解説本も同梱したセット「クラシック・ムービー・コレクション 300」を6月21日にAmazon.co.jpで先行発売する。Amazonにおける価格は69,800円。なお、プレーヤーを省いたセットも59,800円で販売する。
YECは、業務向けのHDDデュプリケータ(複製機)や、セキュリティ向けにHDDを物理破壊するサービスなどを手掛ける会社。今回発売する「クラシック・ムービー・コレクション 300」のiVDR-Sの製造には、同社のデュプリケータが活用されている。
1930~1950年代のハリウッド名作映画300作品/約600時間を、3本のiVDRカセット(500GB×3)に収録。収録されている映画は「ローマの休日」や「嵐が丘」、「奥様は魔女」、「アンナ・カレーニナ」など。画質はDVD相当だが、DVDなどに比べて大幅に収納スペースを小さくできることなどを長所としてアピールしている。
そのほか、映像/音楽コンテンツの企画や制作を手掛けるジェー・ピー(JP)は、元宝塚・未来優希の芸能生活20周年を記念した映像パッケージをiVDRで今夏に発売することを発表した。タイトルは「未来優希~芸能生活20周年記念~ Shining On - Decades Of Brilliance」。アイ・オー・データ製のiVプレーヤー「IV-P1」と、320GBカセットのセットで、価格は29,800円。
2月23日に行なわれた「20th Anniversaryコンサート」の模様を収録するほか、バックステージの映像や、撮り下ろしドキュメンタリー「未来優希の軌跡」、秘蔵フォトの「未来優希の写真館」、ファンイベントやトークディナーショーの映像、ファーストアルバム音源とスライドショーを組み合わせたコンテンツ、ハイビジョン紀行番組「憧れの都」のアフレコ風景などのコンテンツを収めている。
なお、コンサート映像など一部コンテンツについては、DVDなど他のメディアで販売される可能性もあるとのことだが、上記の特典なども含めたパッケージとして販売するのはiVDRのみの予定。
4K映像/ハイレゾ対応の「パーソナルアーカイブプレーヤー」をiVDRで
同日に行なわれた関係者/マスコミ向けのセミナーでは、これまでの活動や、将来性などについての講演が行なわれた。
日立製テレビの「Wooo」や、日立マクセルのレコーダ「iVレコーダ」、アイ・オー・データ製プレーヤーなど、iVDR関連製品の販売台数は、'07年から現在までで累計800万台を突破。また、カセットHDD「iVDR-S」は、マクセル/アイ・オー・データ/バーベイタム/HGSTの合計4ブランドで販売されており、マクセル「iV」の累計出荷数は'12年12月に100万巻を突破した。なお、現在のiVDRカセットの最大容量は1TB(実売6,000円~9,800円前後)だが、今年はそれを上回る1.5TBモデルの登場も見込まれている。
iVDRコンソーシアムの日置敏昭理事長は、「ハイビジョンテレビが安く手に入るようになったが、もっと画質の良いものを求める声もある。映像では4K/8K、音楽ではハイレゾを収められる大容量メディアが求められる時代になり、iVDRはその期待に沿うメディア。'14年7月にCSで4K放送が始まるという話もあるが、iVDRは実用的な容量とデータ転送レートを実現している」と述べた。4K映像やハイレゾ音源などを記録するための専用規格を'13年中に完成させるとしており、“パーソナルアーカイブプレーヤー”実現のための記録媒体としてiVDRを訴求した。
この「パーソナルアーカイブプレーヤー」の具体的な機能/特徴としては、高精細/高音質での録画と録音、再生、ダウンロード蓄積、リッピングが可能で、コンテンツをデータ破壊から守る“パーソナルクラウド”としての役割も持つという。さらに、タブレットやスマートフォンとの連携なども想定している。
映像/音楽パッケージメディアとしてのiVDR活用については、アイ・オー・データによる文教向けの「東京書籍コネクトライブラリー」や、桃井はるこのライブ「しょうわ歌謡ショー」などを例に挙げ、特定ターゲット向けに小ロットでも販売しやすい点などを説明した。
前述した未来優希のiVDRコンテンツを発売するジェー・ピーの中西聡副社長は、コンテンツ制作の立場からiVDRのメリットや今後の活用などについて講演。Blu-ray Discでリリースする場合の初期コスト(オーサリング/スタンパ/コピーガード費用など)に言及し、特に1シリーズあたりのタイトル数が多い作品(同社が手掛ける紀行番組など)や、ニッチな層に向けたコンテンツもリリースしやすい点を強調した。
さらに、Blu-rayにない機能として、メニューの「検索機能」を紹介。同社が発売する未来優希のiVDRは、BD/DVDのメニューにも似た「スマートメニュー」を採用しており、この中に作品内の検索機能を実装。従来の豪華な解説書などに替わる機能になると見ている。今後、同社が手掛ける長編の紀行番組を、1TBの大容量を活かして発売する企画もスタートしたという。そのほかにも、同社はアニメ「蒼穹のファフナー」の舞台化など、他社からライセンスを受けたコンテンツ制作も行なっている。こうしたアニメ/ドラマ関連のコンテンツについても、DVDのようにディスクの入れ替えの手間が無く続けて楽しめる点なども付加価値として訴求しながら、コンテンツホルダと交渉していくとしている。
「e-onkyo music」を手掛けるオンキヨーエンターテイメントテクノロジーも「ハイレゾ配信の現状とiVDRとの連携の可能性」と題して講演。同社のネットワークサービスマネージャー 田中幸成氏が登壇し、e-onkyo musicでの取り組みなどを説明した。なお、同社はiVDRコンソーシアムには加入していないが、具体的な活用方法として、ファイル容量が大きいハイレゾ音源を、iVDRカセットで家庭内で自由に持ち運んだり、クラシック全集などハイレゾならではの商品企画でパッケージ化するといった案を示した。
田中氏は、オーディオ業界がハイレゾ配信に期待を寄せている一方で、若者の間では音楽を聴く手段としてYouTubeが大きな存在になっているという現状や、Spotify/Music Unlimitedなどの定額配信サービスが増えている動きにも触れ、「“良い音で聴いて欲しい”という思いはオーディオメーカーも、制作者も持っている。例えば、試し聴きではこういうサービス(定額配信)を利用して、実際に自分の物にしたい場合は高音質でダウンロードしたり、パッケージで保存しておくといった音楽の聴き方も、今後提案していけたらいいと思う。iVDRはこういった枠組みの中で大きな役割を担っていくのでは」と述べた。