レビュー

数千円で買えるオーディオアクセサリ、FX-AUDIO-「Petit Tank LE」使ってみた

FX-AUDIO-「Petit Tank LE」

ネットワークオーディオの音質対策は、奥が深く面白い。PC向けのネットワーク機器は、もともとオーディオ用途を考慮して作られていないため、ノイズ対策・振動対策・電源対策など、やれることがたくさんある。

筆者は、オーディオアクセサリーを使って対策をしているが、ネットワーク機器は複数台稼働しており、その全てを網羅するにはコストの面からも難しかった。そんな中、1個数千円という手に取りやすい価格のFX-AUDIO-製アクセサリーが気になり、使ってみた。

その結果、ここぞという箇所にはミドルエンド以上のアクセサリーを使用しているが、その他の箇所には漏れなくFX-AUDIO-で固めるくらいの愛好者になっていた……。

家の中に沢山のPetit Susieが

FX-AUDIO-は、小型のプリメインアンプやUSB-DAC、真空管アンプなどをメインに、インターネットに販路を絞って展開する日本のオーディオブランド。“出来る限り低価格で高品質の製品を提供すること”をコンセプトに、アンプだけでなくアクセサリーや電子部品なども取り扱っている。開発販売元は、ノースフラットジャパン(NFJ)だ。

NFJストア ヤフーショッピング店で常時ランキング上位に君臨しているのが、電源ノイズ対策アクセサリー「Petit Susie」。ACアダプターと機器の間に挿入することで、DC電源のノイズを除去しクリーンな電力を供給するというアイテムだ。

電源ノイズ対策アクセサリー「Petit Susie」

税込み1,580円という、DC電源のノイズ対策アクセサリーとしては圧倒的な低価格で、USB-DACやアクティブスピーカー、ネットワーク機器など、幅広い用途でノイズ対策ができる。

筆者は現在、Wi-Fiルーターやスイッチングハブ、さらにはNASと、合計4個のPetit Susieを使っている。数カ月前には、初回ロット版を最新の第4ロットに交換し、その音質向上に感激した。最大消費電力140W、DC 28V以下は電流最大5Aまで対応、DC 35V時は最大4Aまでと対応範囲が広いのも特徴だ。DCプラグ極性はセンタープラスとなる。

そして、今回新たに導入したのは、「Petit Tank Limited Edition(以下、Petit Tank LE)」という製品。

Petit Tank Limited Edition

Petit Tankも、DCケーブル延長型のDC電源ノイズクリーナー・バルクキャパシタで、単品で使用できる。さらに、前述のPetit Susieの効果を高めるためのアドオンパーツとしても使えるという。Petit Susieの後段に連結させると、効果が高まるというものだ。

実はPetit Tankの初回ロットも所有しており、オーディオデータが経由しない無線中継機に使っている。新製品のPetit Tank LEは、Petit Tankの基本性能を大幅に向上させたというもの。さっそく2個入手した。価格は、無印が1,240円、LEでも2,980円とオーディオアクセサリーとしては非常に安価だ。

Petit Tank LEの効果

Petit Tank LEは、電源由来のノイズを軽減すると共にバルクキャパシタとして機能し、接続したデバイスの持つポテンシャルを開放する効果があるという。

刻一刻と変化するデバイスの要求電力に対してリニアに応答する事で、デバイスの持つ本来の性能・能力を最大限に発揮する。Petit Susieと併用することで、よりクリーンでリニアな電源供給が可能になるという。

最大消費電力は125W、電圧はDC 25Vまで、電流は5Aまで、1A未満のACアダプターは動作保証外だ。DCプラグ極性はセンタープラスとなる。通常版のPetit Tank とは一部仕様が異なる。

Petit Tankの初回ロット

Petit Tankでは通常の電解コンデンサを採用していたが、限定モデルは導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを採用している。結果、負荷に対する応答性能向上、高リプル対応性能向上、長寿命による信頼性の向上などなど、あらゆる特性について基本性能が向上したそうだ。

NFJのBlogには、詳細な技術解説があるので、電子回路に詳しい方はぜひご一読いただければと思う。筆者も学生時代に電気(主に強電、電子は触りだけ……)を学んだ人間として、興味深く読ませてもらった。

Petit Tank LEの詳細ブログ

Petit Tank LEの主なターゲットは、ACアダプターで駆動する小型のデジタルアンプやアクティブスピーカーなど。小型のオーディオ機器では、瞬間的な電力消費が発生した場合、電源回路が負荷変動に対応しきれず、電圧が低下したり電流不足が起こったりする。結果、音によろしくない影響が出てしまう。

Petit Tank LEに搭載された合計2,640μFのコンデンサにより、接続する機器の電源回路を補うことで、安定したデバイスの動作をサポートするそうだ。ノイズ対策アクセサリーのPetit Susieと併用すると、合計3,630μFの容量を確保することが出来る。

Petit Tank LE

Petit Tank LEを入手した理由

筆者は、本来のターゲットとは違う、オーディオ用NASに使用することを想定していた。アイ・オー・データ機器のSoundgenicである。Soundgenicは、ACアダプターで動作するオーディオ用NASだ。リビングでは3TBのHDD版HGモデルが、防音スタジオでは1TBのSSD版が稼働している。

防音スタジオに設置しているSoundgenic 1TBのSSD版
リビングでは3TBのHDD版HGモデルを使っている

リビングのSoundgenicにPetit Susieを使用していたのだが、試しにPetit Tankの初回ロット版をPetit Susieの後段に追加してみた。すると、Petit Susie単体でもまったく悪くなかった音楽が、Petit Tankを加えた途端、中低域のエネルギー感が明らかに増したのだ。ノイズ対策でネットワークオーディオの音質が改善するのは定石であるが、バルクキャパシタの追加で音質が変化するというのは、少々驚いた。

リビングのシステムは、ヤマハのAVアンプ「RX-V6A」をネットワークプレーヤーとして、Soundgenicは純粋なNASとして使用している。接続は、LANケーブルによる有線だ。Soundgenicからデジタルの音声信号がLANケーブルやスイッチングハブを経由してV6Aに送られている。

ヤマハのAVアンプ「RX-V6A」

伝送されているのは、アナログの音声信号ではないし、USBバスパワーのようにSoundgenicが電力供給元になっている訳でもない。しかし、明らかに音が変わった。Soundgenicの電力供給が安定することで、HDDの読み出し動作やメディアサーバー等の演算処理が安定化して、結果ノイズの低減などに繋がっているのかもしれない。後述するが、電源ノイズ対策のみでは中低域が若干痩せてしまうため、本来のバランスに戻す(あるいはそれ以上の効果がある)のがPetit Tankである。

接続の順番はこうだ。


    ACアダプター

    Petit Susie

    Petit Tank

    Soundgenic

普通に繋ごうとすると、「ACアダプター → Petit Susie」の時点で、DCジャックの規格が合わないので刺さらない。そこで、純正ACアダプターをサクルのPSE認証付きDC12V/3Aのアダプターに変更した(ACアダプターの交換は自己責任で)。

純正ACアダプターは、DC12V/2Aの一般的なACアダプターである。こうすれば、Soundgenicの直前まで変換アダプターなしで接続出来る。Petit TankからSoundgenic間は、5.5mm/2.1mmをEIAJ4に変換するプラグを取り付けた。EIAJ4は国内のネットワーク機器にたびたび見かけるDCジャック/プラグの規格で、日本電子機械工業会が定める。世界的に使われている外径5.5mm×内径2.1mmの規格に対して、それほど見かけることは多くない。

リビングの接続順。末端にEIAJ4変換プラグを取り付けている

そんなこんなで、明確に音が変わることが分かっていたので、基本性能が向上したPetit Tank LEは筆者にとって魅力的に見えたのだ。

Petit Tank LEの効果は!?

自宅に届いたPetit Tank LE、計2個。アクリルケースキットも同時に取り寄せて、1個のPetit Tank LEに取り付けた。キットは500円と非常に安価だ。熱収縮チューブのままでも危なくはないが、キットを取り付けると、チューブで包まれている物理的制約がなくなり、開放的で躍動感の溢れる音に変わる。見た目もよくなるし、買わない選択肢はないだろう。

アクリルケースキットに入れたところ

まず、リビングのネットワークオーディオに使ってみる。Soundgenicは「HDL-RA3HG」、スイッチングハブはTP-Linkの「TL-SG505」(Petit Susie使用済み)、ネットワークプレーヤーはAVアンプのRX-V6Aだ。

まずは、久しぶりにSoundgenicからPetit Susieを外してみた。「嘘でしょ!?」ってくらい残念な音になってしまう。高域を中心に雑味が混じって、音場は混濁し、見通しも悪い。ざらついた楽器音は質感の良さもあったものではない。決して故障とか不具合ではないけれど、いい音を一度でも聴くと、元の音がとたんに残念に感じる現象は、まさに“オーディオあるある”だ。

そんな衝撃を味わいつつ、Petit Susieを挿入すると、雑味が大幅に減少した。サウンドステージはクリアになり、淀みも一掃。気付きにくかった細かくて小さな音がすっと耳に入ってくる。正直、最低限のクオリティはこのレベルだと痛感した。ただ、中低域の量感がやや減衰している。Petit Susieを外すと、確かにピアノは骨太で、バスドラやベースの量感は十分に感じられた。

そこで、初回ロットのPetit TankをPetit Susieの後段に加えたところ、中低域の量感が復活したではないか。復活どころか、さらに充実してエネルギッシュになっている。ただ、モリモリの演出過多ではなく、本来のバランスが再現された印象が強い。さらに別の効果として、楽器の音に温度感や生命が宿ったことを特筆したい。

Petit Susieのみでは、確かにクリーンな音にはなるけれど、無味乾燥なイメージだ。Petit Tank を追加することで、質感が豊かに変化し、生演奏はより生っぽくなり、まさに“楽しい”音楽になった。オーディオってこれだから面白いよね! と膝を打つ。

続いて、いよいよ大本命。Petit Tank LEのお出ましだ。Petit Tankを外して、Petit Tank LEと交換する。これは素晴らしい! 初回ロットの効果と同じく、中低域の充実と質感の改善、オーガニックな音の豊かさは健在だ。さらに追加効果として、ノイズ対策を施したときと同じような変化があった。音像が広がっていたのがシャープになったり、解像感が上がったり、聴感上のS/Nが改善したり。音場もさらにもう一段、透明度を増した。ストリングスの演奏やホール録音の音源は空間の広さが真実味を増し、響きの余韻が階調豊かに変わった。もはや「コンデンサによって音が変わるので、好みで選んでください」という次元ではない。Limited Edition一択だ。

おそらくだが、リプルの低減が最も効いていると思う。リプルノイズは、直流電源における最も代表的なノイズらしい。直流成分に混じる交流成分のことで、本来一定電圧であるべき直流を波のように脈動させてしまう。コンデンサを通すことによって、リプルを平滑化する訳だが、Limited Editionの個体コンデンサはその特性が極めて強力なのだそうだ。

ただ、コンデンサの抵抗成分が小さいため(Q値が高い)、発振が起きる確率が少し高くなっている。発振は、コンデンサのインピーダンスがインダクタンス(コイル)のインピーダンスと打ち消し合ってゼロになってしまうことだが、これによって異常音や発熱などが起き得る。発振が起きるかどうかは、接続先の機器や使用するACアダプターによるとのことで、万一発振した場合は使用を止めてサポートに相談を促している。

なお、安全マージンを取った設計のおかげで、開発段階で発振したケースはないとのこと。相性問題の可能性は通常版のPetit Tankよりは高いが、極めて稀ということだと思われる。

それにしても、NASの電源対策は、実に重要であると痛感するテストだった。これでも、NASとハブ間にはiFi audioの「LAN iSilencer」を、ハブとネットワークプレーヤー間にはAcoustic ReviveのLANアイソレーター「RLI-1」を使用して、LANケーブル経由で伝わるノイズ対策を施しているのだ。ネットワークオーディオにおける音質対策は、どこか1つでもやるとすぐに効果が出るが、積み重ねることでみるみる音が変わっていくから本当に面白い。

試しに、もう一つのPetit Tank LEをスイッチングハブにも使ってみた。スイッチングハブに接続しているPetit Susieの後段に熱収縮チューブに包まれたPetit Tank LEを追加する。若干中域が芳醇になったがSoundgenicに比べて効果は小さく、しかも過剰になってしまった。何というか、ここまで“つゆだく”じゃなくていい。消費電力の大きいスイッチングハブなら、また結果は違うかもしれない。TL-SG505はDC 9V/2.49Wだ。

続いて、Soundgenicを使ったもう一つの検証をやってみた。Soundgenicは、USB DACに直結をして、ネットワークトランスポートとしても使用出来る。スイッチングハブを経由しないUSBケーブルでの直結なら、電源対策によって顕著な音質変化があるかもしれない。

せっかくなので趣向を変え、「既にDC電源のノイズ対策をやっている」という方に向けて、他社製品との組み合わせでテストしてみたい。我が家の防音スタジオに設置したSoundgenic「RAHF-S1」には、iFi audioの「iPurifier DC」を使用している。そこにPetit TankとPetit Tank LEを加えるという試みだ。価格的にアンバランスであるが、結果はさてどうなるか。なお、USB DACはUSBセルフパワーの機種を使っているため、SoundgenicのUSBバスパワーの影響は無視できる。

iFi audioの「iPurifier DC」と組み合わせたところ

iPurifier DCはそのままではSoundgenicに刺さらないため、トップウイングのRed Barrel Cableを適用済みだ。EIAJ4を5.5mm/2.1mmに変換するケーブルと、5.5mm/2.1mmをEIAJ4に変換するケーブルをセットにしたオーディオグレードのアクセサリー。これを併用すれば、Petit Tank LEはiPurifier DCの後段に直接挿入できる。

まず、iPurifier DC単体でも何ら問題は感じない。ノイズ低減の効果は圧倒的で、非常にクリーンな出音にうっとりしてしまう。初回ロットのPetit Tankを挿入すると、中低域は確かにエネルギー感を持って鳴るように変化するのだが、全体的に淀みが加わってしまった。特に高域の付帯音が気になる。数kHz付近に耳障りなピークが現れる。これなら無い方がいいと個人的には思う。

次にPetit Tank LEに交換してみたら、ビックリ! 中低域の量感の改善はそのままに、付帯音が一掃された。気になる高域のピークも嘘みたいに消え失せた。iPurifier DC単体のクリーンな音場は毀損することなく、質感の向上が新たにプラス。ドラムもサックスも、シンガーの歌声も、生で聴くあの有機的で滑らかな音が次々と降り注ぐ。

デジタル録音の無機質な感じは魅力でもあり、欠点でもあると筆者は考えているのだが、Petit Tank LEによって、生々しい音楽の世界に心までドップリと浸かったような気持ちにさせられた。「単純にいい音」は再生を停止できるけれど、「生々しい音」はなかなか停止したくない。最後まで聴きたくなる。そんな心情を揺さぶる音のグレードアップにため息が出てしまった。今回のケースでは、NASからのUSB DAC直結において、バルクキャパシタの性能や特性に対して、音が敏感に反応することが確かめられた。

なお、読者の方が既に使っているノイズ対策アクセサリーによって、効果が変わる可能性は補記しておく。据え置き型のオーディオ向けDCパワーサプライなども昨今は発売されている。機器の仕様を確認して、適用できるなら試してみるのはよいだろう。

Petit Tank LEは、ネットワークオーディオにおいて、電源対策はノイズだけではないということを筆者に教えてくれた。内部パーツはコンデンサのみということで、その働きから想像できる効果はもちろん、予想だにしない側面からポジティブな変化をもたらしてくれた。2,980円という超弩級のコストパフォーマンスは、アクリルケースキットを含めても4,000円以下で収まるので、気軽に試せるだろう。ただ、限定モデルで人気もあるため、在庫切れになるかもしれない。再生産は、公式Blogなどでもアナウンスがあると思われるので、気になる方はチェックしてみてほしい。

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト