プレイバック2019

悩ましい3つの「C」で2020年以降を占う by 海上忍

2019年を振り返ると、いろいろ「C」について考えさせられる1年だった。「C」ashlessとか「C」loudとか、書く媒体を考えなければいくつもあるのだが、ここはAV Watchなのでオーディオ&ビジュアル関連に絞り今年と来年以降のトレンドについて書いてみたい。

2019年を3つの「C」で振り返りつつ、2020年について考察したい

最初のCは「Camera」。筆者が取材に出かけるときは、機動力を重視しいわゆるコンデジ(1.0型センサー搭載機)を持参するが、今年の秋からスマートフォン(iPhone 11)との二刀流に切り替えた。両方で撮影することは正直手間だが、「とっさの1枚」でiPhone 11は失敗しにくく、撮れ高が高い。一瞬で撮影を終えねばならないときでも使える写真が撮れるのは、ありがたいことだ。

使えることを実感すると欲が出てくるもので、シャオミの5眼スマホ「Mi Note 10」にはかなり心が揺れた。イメージセンサーは1/1.33と大型で明るく、2種類の望遠レンズにマクロレンズ、さらに4軸光学式手ブレ補正とくればスペック的にはかなり魅力的。iPhone 11の場合、「スマートHDR」と「Deep Fusion」の効きを念入りに確認してから取材で使うようにしたので、これを超えるようなソフトウェアがあるかどうかじっくり検証せねば。

今年はデジタルカメラの、特にソフトウェアレベルでの機能向上が目立った。iPhoneでいえば「Deep Fusion」、Google Pixel 4では「ポートレートモード」が好例だろうか。いずれも機械学習を応用したもので、イメージセンサーやレンズといったハードウェアの話ではない。この2製品以外の新型スマートフォンも、軒並みHDR技術が大きく向上しているが、それもソフトウェアの話。スマートフォンに限らず、ビジュアル製品全般がAI/ソフトウェア技術で鎬を削る日は遠くなさそうで、そうなればそっち方面の資料の読み込みが必要になるため筆者的には実に悩ましい。

ほぼ同時にコンデジ(写真上)とiPhone 11(写真下)で撮影した写真(コンデジはオートモード)

次なるCは「Type-C」。言わずと知れた新興のUSB端子規格だが、これが悩ましいというか悩まされた。ここ数年、外へ持ち出すPCにはMacBook Airを利用していたのだが、諸事情あってMacBook Proを使うようになり、その結果USB機器/ケーブル全般を買い替えるはめに。SDカードリーダー、iPhoneを接続するためのケーブル、etc...買い替え対象を一度に思いつかないから、何度も慌てて通販を使う事態に陥った。

それはともかく、端子をType-Cに更新して大幅に利便性がアップしたことがある。モバイルバッテリーを利用した充電だ。頭ではじゅうぶん理解していたつもりだが、海外出張で場所を選ばずPC/スマートフォンを充電できる有り難さといったら。

Type-Cが普及し始めた頃と比べると、2019年はUSB PD対応のPC/スマートフォンがさらに増え、それに呼応してUSB PD対応モバイルバッテリーのラインナップが充実。風が吹けば桶屋が儲かるの理屈ではないが、モバイルバッテリーが増えればデジタル機器全般にUSB PD対応が拡がるのは道理で、AV分野にもType-C/USB PD採用製品が現れ始めた。来年は、この流れがより鮮明に現れるに違いない。

USB PD対応のデジタルオーディオプレーヤー「iBasso DX160

USB PDのメリットは、モバイル用途だけではない。最大100W(20V/5A)という出力があれば、PCのみならずオーディオ機器など据え置き型デバイスの電力すら賄える。具体的な用途はさておき、ACアダプタを置き換えるような存在に成長するのかも? 早ければ来年にはそのような動きを見られるかもしれない。

深圳出張もUSB PD対応バッテリーで乗り切った

もう1つの悩ましいCは「China」だ。ここ数年、デジタルオーディオプレーヤーとイヤフォンを中心に「中華オーディオ」が多数国内発売され話題を振りまいたこともあるが、先日レポートしたとおり、深圳など珠江デルタ地帯の変わりようをこの目で見たことが大きい。

いまや中国メーカーは、製造技術だけでなく商品企画力も身につけている。かつては日本や欧米のメーカーが商品を企画・設計し、製造だけを中国メーカーが担うパターンが多かったと聞くが、現在ではある程度(モノによってはほぼ)完成した製品に若干の味付けを行ない、Made in PRCではあるが日本・欧米メーカーの製品として販売されている製品は少なくない。

エンドユーザー目線でいえば、どこの国で企画しようが作ろうがあまり関係はなく、安くて良質な製品であればそれでいいのだが、長い目で見ると我々日本人にはデメリットが大きい。これまで日本メーカーは手間暇かけてユーザーや評論家の意見を吸い上げ、製品に反映してきたが、そのしくみが機能不全に陥るからだ。

レポートでも少し触れたが、中国国内の(ポータブル)オーディオ市場は順調に伸びており、商品企画担当者の目線もやや内向き傾向を見せている。安くて良質で日本人好みの製品が欲しい自分としては、我々のニーズをどうにかして彼らに伝える方法はないか、これから悩んでみようと思う。

急速な開発が続く中国・深圳を抜きにAV製品を語れない時代に入っている

海上 忍

IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。オーディオ&ビジュアル方面では、OSおよびWeb開発方面の情報収集力を活かした製品プラットフォームの動向分析や、BluetoothやDLNAといったワイヤレス分野の取材が得意。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。