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モンハン「英雄の証」のゲーム&アニメ音楽家・甲田雅人。SUPERIORを聴く「作曲でも使っています」

qdc「SUPERIOR」を聴く甲田雅人氏

優れたオーディオ製品で音楽を聴くと、「こんな音も入っていたのか」「こんな意図があったのか」と発見が連続。お気に入りの楽曲をもう一度聴き直したくなる――。今回、そんなオーディオの醍醐味を語ってくれたのは、「モンスターハンター」や「この素晴らしい世界に祝福を!」などで作曲を担当するコンポーザー・アレンジャーの甲田雅人氏。そう、モンハン不朽の名曲、あの「英雄の証」を作ったのが甲田氏だ。

そんな甲田氏の音楽へのこだわりと共に、“最強エントリーイヤフォン”として人気のqdc「SUPERIOR」(14,300円)をじっくりと試していただき、その価格を超えた魅力についても伺った。

qdc「SUPERIOR」
モンスターハンター オーケストラコンサート~狩猟音楽祭2023~

ピアノとの出会い。そしてバンドに打ち込んだ大学時代

甲田氏の音楽との出会いは、ピアノへの強い好奇心がきっかけだった。

「触り始めたのは3歳か4歳くらいだったと思います。姉がピアノを習っていまして、自分も触っていました。とはいえ、楽譜は読めないし、見よう見まねでした。それを見た家族は喜んでくれて。『自分もやりたい』と親に伝えたところ、小学校1年生から通えるようになりました。それから中学の2年くらいまで続けていましたね」(甲田氏)。

「小学生のとき聴いていた音楽はクラシックばかりでした。父のオーディオセットが自分の部屋にあって、『クラシック100選』みたいなレコード集を取っかえ引っかえ再生してました。当時よく聴いていたのは、ベートーヴェンとかチャイコフスキーとか、ドボルザークの『新世界』などです」。

「中学になると、クラシック以外の別のジャンルがカッコいいと思えてきて、ロックバンドの曲や、TV番組「ベストヒットUSA」で紹介されるような洋楽とか、それまで深く触れたことのない音楽にハマっていきました。それこそ独学で耳コピをするくらいに。ただ、当時は作曲まではしてなかったです」。

甲田少年は、ピアノとクラシックを原点としながら、新しい音楽ジャンルにも目覚め、耳コピを始めるまでに成長。ピアノのレッスンからは離れたが、中学ではブラスバンド部でトランペットを担当し、人手が足りないと合唱部に駆り出されたこともあったという。

そして季節は流れ、ついに進路を考える時期がやってくる。

「高2くらいで進路相談があったのですが、普通科の勉強をするよりは、やっぱり音楽をやりたいと改めて思うようになり、音楽大学について調べはじめました。夏季セミナーに行ってみると、周りのレベルがとても高くて……。“これはヤバい”と感じて、ピアノや歌唱の先生を紹介してもらいました。月に2回くらい高速バスで実家の山梨から東京まで通っていましたね」。

努力が実り、国立(くにたち)音楽大学へ入学。「今はもう無い“教育音楽II類”というところで、学校教育に限らない音楽教育を学びました。ピアノや声楽、ギター、和声学、音楽に合わせて身体を動かすリトミックなどを幅広く学びました。教育に関する学部を選んだのは、親との約束でもあります。“音大に行くなら潰しが効くように教員免許は取ってくれと”と言われていたんです」。

そのままキャンパスライフを過ごす……と思いきや、甲田氏はバンドの魅力に取り憑かれることに――。

「大学に入ってからバンドを始めたらハマってしまい、いくつものバンドを掛け持ちしていました。あまりに忙しくて、大学に行く暇も惜しいほどでしたが、ちゃんと4年で卒業して、教員免許も取りましたよ(笑)」。

バンドで担当したパートは、キーボード兼マニュピレーター。

「オリジナルではなく、コピーバンドがメインでしたので、色々なアーティストの曲を聴いて耳コピし、アレンジする訓練を積むことが出来ましたね。キーボードのユーザーバンクってあるじゃないですか。当時使っていたのは、128パターン保存できるのですが、それでも足りないので、高価なRAMを買って256パターンにしてました(笑)。鍵盤が上から下まであったとして、中央付近はピアノ、上はストリングス、下の鍵盤にはオーケストラヒットを配置したり。そんな感じで2台を使って演奏していたのですが、それでも音が足らないんです」。

1人何役かも分からないほどの活躍ぶりを見せていた甲田氏。いよいよ2本の手では追いつかなくなり、覚えたのは打ち込みだった。

「MC-50というRolandのシーケンサーを買って、ダイヤルをクルクルしながら打ち込んでいました。ライブ中には、カウントをドラマーに聴いてもらって、シーケンサーからの打ち込みの音と、生演奏がずれないようにしていました。89年に大学に入ったので、90年代の初頭だったかと。まだシーケンサーが一般的ではなかった頃ですね」。

ゲーム音楽家への道、キッカケは『どうぶつの森』の“とたけけ”!?

バンドで青春を謳歌する中、将来のことも考え始める。今へと続くゲーム音楽作曲家の道は、ひょんなことから、知ることになった。

「当時は、卒業してもバンドを続けたいと思ってはいました。所属していたバンド経由で、お金をもらえる仕事もあったので。TVドラマのちょい役で演奏する人の役として出演したり。プロダクションにも所属してました」。

「その頃、同じ学科の先輩が任天堂に入ったという噂を聞きました。“とたけけ”という『どうぶつの森』に出てくる白い犬のモデルとなった戸高一生さんです。僕は、ゲームは大好きだったのですが、自分がゲームの音楽を作るイメージはなかったんです。でも、戸高先輩のように、会社に就職して作曲をする道もあるんだと、そのとき初めて知りました」。

甲田氏がカプコンの門を叩いたのは、あの超有名格闘ゲームがきっかけとなった。

「実は、ゲームは全然やってなくて、本格的にやったのは大学に入ってからでした。当時、ぎりぎりファミコンがあって、すぐにスーパーファミコンに移行した時期です。今になって思えば、そこで『ストリートファイターII』を買ったのが運の尽きというか(笑)。音楽面で衝撃を受けたのは、『ファイナルファンタジーIV』です。それまではPSG音源だったのが、スーパーファミコンで“あ、ちゃんと楽器の音で鳴ってる”って」。

「いざ、就職活動する訳ですが、任天堂ではなく、ストリートファイターIIを作っているカプコンを受けたんです。無事受かって、第一志望に就職が決まりました。時代は、アーケードメインで作品をリリースしていた頃でした。バンドのメンバーにも報告しましたよ」。

「オリジナル曲は、バンドでは作る機会があまり無く、学校の課題がメインでした。夏休みにピアノ曲をテーマに沿って作る課題がありまして。1年の頃はモーツァルトっぽい曲、2年の時はショパンっぽい曲、3年になると印象派とかそのあたり。意外と自分でも作れるかも?と実感できました。カプコンへ送るデモテープは、当時好きだったフュージョンとかを作って提出しました。そこで、バンドでやっていた打ち込みの技術が活かせました」。

「カプコンでは作曲と効果音は分業制だったので、研修ではまず適性を見られました。作曲に関するいろんな課題を出されて、割り当てられた時間内で作ります。その結果を見て、半分が作曲担当として配属になりました。アーケードの作曲チームに入って最初にやった作品は『サイバーボッツ』というロボット同士がたたかう対戦格闘ゲームです。そこで何曲か作ったのが最初でした」。

苦労したのは内蔵音源の使いこなしだ。

「『ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ』というゲームでフルオケ的な音源を16音のアーケード基板で作ったことは、印象に残っています。このゲーム、4人同時プレイなんですよ。例によって効果音がいっぱい鳴りますから、SEが鳴るたびに音楽のトラックが消えちゃうんです。16音というのは、“効果音込みで16音”なので決して余裕はありません。細かいパーカッションとかのチキチキした音は、消えても復帰してくれるからいいのですが、長い音とかは一度プツッと消えると復帰してくれないので、優先度を調整したり工夫してましたね」。

「当時は、サウンドメモリの容量も小さいので、効果音が増えると、音楽用にメモリを割けないんですよ。ボイスも増えてましたので、そっちでもサウンドメモリを取られます。CPシステム2という基盤でした。とにかく制約の中でも出来ることを頑張っていた記憶があります」。

不自由さから解放され、ストリーミングによる音楽を流せるようになったのはPlayStation 2が最初となった。

「『Devil May Cry』で初めてストリーミングで流せるようになりました。その頃は、内蔵音源との併用で、例を挙げますとフィールド曲は内蔵音源で鳴らし、戦闘曲はストリーミングでした。戦闘に合わせてクロスフェードするんです」。

「ストリーミングが使えるようになって、やっぱり嬉しかったですね。ゲーム音楽が好きな方は、いわゆる “内蔵音源で奏でられるゲーム音楽”が好きだったりします。僕は、早く普通の音楽がゲームで自由に作れればいいなと思っていましたので、やりたいことが出来る喜びしかなかったです。一番印象深いタイトルはやはりモンスターハンターですね。初めてフルオケを録れたのはモンハンでした」。

“二人で一台のパソコン”で蓄積された引き出しのバリエーション

カプコン時代の経験は、「手数や引き出しのバリエーションとして、今も活きています」と懐かしそうに語る甲田氏。

そうしたテクニック習得のキッカケは、研修時代にあった。甲田氏が入社した年度は新人が多く、パソコンも一人一台ではなく、二人で一台を共有することに。しかし、「それが逆に良かった」という。

「研修の時は、二人で一台のパソコンを共有して使っていました。僕とペアになった方が今はスクウェア・エニックスでFINAL FANTASY XIとかを手掛けられている水田直志さんだったんです。研修のときから仲が良くて、ずっと一緒にやっていました。代わる代わるパソコンを使うのではなく、二人で一台のPCに貼り付きです(笑)」。

「“次のコードはどれがいい?”“こんなのがあるけどどうしよう”とか議論しながら、一日中やってたので、自分の中にはないコードが出てきたりとか。“これはどう?”ってアイデアを出し合ったり……とても面白かったですね。コードだけじゃなくて、スケールとかを知ることが出来ました。それまで感覚的にしかやってなかったことが、自分の中で体系立てて理解することが出来たと思っています」。

「水田さんとはコードに独自の呼び名を付けたりしてました。坂本龍一さんとかが好きな方だったのですが、『美貌の青空』という曲の中に、印象的なコードがあって、“ここのコード、胃に悪いよね~”などと言い合いながら、じゃあこれは“胃に悪い増5度”にしようとか(笑)。そうした経験が、引き出しになっていきました」。

その後、数々のゲーム音楽を手掛けた甲田氏は、2003年にカプコンを離れることに。

「実は、モンハンの『英雄の証』を作り終わったころ、既に退職の意思を会社に伝えて、辞めることは決まっていました。家族の都合もあり、大阪ではなく東京へ拠点を移す必要があったためです。決してケンカ別れという訳ではありませんので、カプコンさんからお仕事もいただいたまま、東京で活動を継続できました。フリーになってからは、ソニーさんのお仕事もいくつかやらせていただいていました。ワイルドアームズシリーズはまさにその時期の作品です」。

フリーランス期間を経てデザインウェーブ株式会社に所属。「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」を皮切りに、アニメを中心に様々な人気作品の音楽を担当していく事になる。

『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ−』オリジナルサウンドトラック完全版クロスフェード

「今所属しているデザインウェーブの社長は、カプコンのサウンドチーム出身で、『バイオハザード』や『逆転裁判』などのサウンドデザインを手掛けていました。以前から独立して会社を立ち上げたとは聞いていて、そこで、とあるタイトルのテーマ曲を作れる作家を探しているという話が僕のところに来ました。当初、外部作家としてスポットで請けるつもりだったのですが、いざプロジェクトが 始まってみると、様々な事情でそうも言ってられなくなり、“制作期間だけでも社員として仕事をしてほしい”という依頼を受け、デザインウェーブに入ったというのが経緯になります。今も所属しているのは、作曲以外の業務全般を任せることができるのと、会社の風土が自分に合っていると感じているのも大きな理由の一つです」。

“アレンジしやすい曲”でもある「英雄の証」

個別の作品についても質問してみた。まず、「英雄の証」がなぜ国内のみならず、世界中でも愛される名曲になったのか。

「そうですね……まず、最初から意識していたのは、メインテーマを作るという前提で書いていたというのがあります。モンスターハンターはシリーズ1作目でヒットするかもまったく分からなかったですが、ゲームが出来上がって行くにつれ、大きな世界観のテーマ曲を作りたいという気持ちが沸き上がってきました。最近のハリウッド映画の音楽って、あんまり記憶に残らないと思うんです。映像に合わせて、ゲーム音楽もそっちに寄り始めています。ある意味、それで正解だと思うのですが、モンハンのメインテーマはあえてメロディを口ずさんでもらえるようなものにしようという方向性がありました」。

「メインテーマというからには、それをモチーフとしていろんな曲に使いたいというのがあって、メロディを考えるときにいろんなコードにも乗せられるメロディにしたのです。メジャーとかマイナーとか関係なく使えるように、主題部分のモチーフには3度とか6度の音は入っていません。あとからいろんなアレンジが出来るように。例えば、狩りが成功したときのジングルは、メジャーで明るくなっていますよね」。

「僕がモンハンの担当を離れてからも、アレンジされていろんなバージョンに使われています。一番面白かったのは、メディアインストールの最中に流れる『もうひとつのお楽しみ』という曲で『キュッキュッキュッ にゃあ!』ってのがありますよね。あれを聴いてメジャーで使えるようにしておいて本当によかったと思いました。こんな可愛くも出来るんだって。あのアレンジは僕じゃないんですけど、聴いてひっくり返りましたね(笑)」。

メロディが立っている曲と言えば、RPG風の曲を作ってほしいとオーダーを受けたという「この素晴らしい世界に祝福を!」シリーズも甲田氏の代表作の1つ。

「アニメだと、あまりメロディが立ちすぎても合わなくなってしまいますが、でもやっちゃうんですよね(笑)その分、音数を絞ったりステムで納品して、BGMを当てる方に適度に音を抜いてもらったりと、すごく巧く使っていただいてます。ゲームの場合は、実装してどう使うかの指示も作曲者がやります。サウンドプログラマーのところまで行って、タイミングやフェードアウトやクロスフェードなども自分で指示します。アニメは納品したらそこから先はお任せですね」。

筆者が特に衝撃を受けたのは、「この素晴らしい世界に爆焔を!」で「エクスプロージョン(M-24)」をアレンジした「闘う覚悟(M-10)」や「放て! 爆裂魔法(M-01Bカホンバージョン)」と「炸裂! 爆裂魔法(M-01Bドラムバージョン)」だ。映像の迫力と相まって、鳥肌が立ったことを覚えている。

TVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』 第1弾PV

「ストリングスのモチーフはまず外せないものとして作っていました。第一期で最初に作った「エクスプロージョン(M-24)」は、どっちかというと黒魔術的な要素を前面に出してますよね。爆焔編は若い頃の学園もののノリですし、おどろおどろしいのは違うかなと。ですので、ああいう爽やかな感じにまとめました。カホンとドラムの2バージョン作ったのは、僕からのアイデアです。ドラムだと大層すぎるというシーンでは、カホンバージョンを使ってもらっています」。

「アニメ劇伴をはじめた当初はがむしゃらに取り組むだけでしたが、今となっては、ゲームとアニメの音楽の作り方は全然違うと思えます。掛ける期間も全然違いますね。アニメは、結構タイトなスケジュールです。僕が携わった作品ですと、長くても2~3カ月とかの期間で作曲からレコーディングとミックスまで終わらせます。その期間で40~50曲作らないといけません。ゲームは何年という制作期間があったりしますよね。アニメの劇伴はレコーディングすることが前提ですので、DAWで作った曲を演奏できる譜面に起こしたり、様々な準備があります。ゲームは〆切伸びることが前提でやることもあるのですが(笑)、アニメは放送日が決まっていて延びませんから」。

アニメやゲームと幅広く作品を手掛けてきた甲田氏。改めて、ゲーム音楽のこれからについても尋ねてみた。

「ゲーム音楽としてこだわるというよりは、映像や作品に合わせてベストマッチした曲を作っていきたいと僕は思っています。アニメにしても、“このすば”のために作ってる曲は“RPGっぽく作ってほしい”という要望に応じて、あのような曲調になっていますが、他の作品には合いませんから。また、“ゲーム音楽はループするもの”という認識も変わってきていますよね。場面に合わせていつのまにか自然に曲が変わったり、オープンワールドのゲームでは自分でカーステレオの曲を選んだり。そう考えると、モンスターハンターは、モンスターが出てくるまでBGMがなく環境音だけでした。あそこでRPGみたいな曲がずっと流れていたら、逆に没入感を阻害するよねって。当時からそういう先進的なゲーム制作に関われたことが、今の自分のスタイルに繋がっているのかもしれません」。

SUPERIOR「作曲の作業でも使っています」

劇伴制作に並々ならぬこだわりを持つ甲田氏。そんな同氏が使用している機材を探ったところ、プロクリエイターならではの答えが返ってきた。

「リスニング用のイヤフォン/ヘッドフォンは、好きなのは好きなんですが、あまり買い換えないです。前は日常的に聴いていたのですが、最近は仕事でずっと音を聴いていますので、普段は音楽を聴くことを意図的に控えてるんです。耳の休養も大切ですから。

仕事用の機材は何年か前に新調しました。オーディオインターフェースは、RME『ADI-2 Pro FS R』。ヘッドフォンは、密閉型なのに空間が広めに感じられるTAGO STUDIOの『T3-01』を選びました。モニタースピーカーは、DYNAUDIO『BM5A Compact』をずっと使っています」。

SUPERIOR

SUPERIORを試したところ、作曲の作業にも普段使いするほど好印象だったという。

「遮音性がとても高いので、生活ノイズがまったく聴こえないのがいいですね。装着感もとても楽です。ポロッと取れることがなく、有線なので屋外で落としても無くしにくいですよね」。

「デザインは、フェイスプレートのミラーパネルが高級感あります。共感してもらえる方もいると思うのですが、メガネを掛けながらのヘッドフォンって結構キツいんです。なのでSUPERIORを試してからは、作曲の作業でも使っていますよ。音はすごくいいです。最初に聴いた段階で、あまり癖がないのも気に入りました。印象としては、低音は結構出ますね。ローが出過ぎかなと思ってDAW側で下げてしまうと、T3-01で聴きなおしたときに低音が物足りなくなってしまうので気を付けています」。

「音楽を聴いていて楽しくなれるイヤフォンです。あの曲もこの曲も聴いてみたくなるような。昔聴いていた曲を聴き直しています。最近はスマホ用のゲーム音楽も作っていますので、SUPERIORのような音のいいイヤフォンで聴いて、もっともっと楽しんでいただけるといいかなと」。

多くのカスタムIEM開発から得られたqdcの知見と技術が、ユニバーサルタイプであるSUPERIORの装着性の良さや、どんな曲にも合う癖のないサウンドに繋がっているのだろう。14,300円というお手頃な価格ながら、イヤーピースは、シングルフランジとダブルフランジがそれぞれ3サイズ付属。専用キャリングケースやクリーニングツールも付いているので、初めてのIEMとしても安心して導入できそうだ。

続いて、SUPERIORで聴いてほしい自身の作品をズバリ聞いてみた。

「『Pikmin Bloom』とか『モンハンNow』は、アプリゲームながら、音楽もしっかり作り込んでいます。Pikmin Bloomは、アコースティックな空気感が聴きどころですが、ハイがちゃんと出てないとそれが伝わりません。SUPERIORなら安心して楽しんでいただけるでしょう。音楽試聴の合間にプレイしてみたんですが、こんな音が出てるんだって僕も改めて気付くことがありましたよ。モンハンNowはオーケストラレコーディングをしていますし、再現性の高いイヤフォンで聴いてみてほしいですね。スマートフォンにイヤフォンジャックがなければ、スティック型DACと組み合わせて聴く方法もありますので」。

qdc EMPEROR

SUPERIORの特徴とポテンシャルに感銘を受けた様子の甲田氏。せっかくなので、qdcとアユートの共同企画イヤフォンの“最上位機”、「EMPEROR」も聴いていただいた。EMPERORは、5ウェイ・トライブリッド15ドライバー搭載のユニバーサルIEM。価格は550,000円と皇帝の名にふさわしいウルトラハイエンドモデル。

しばしその音を聴いた甲田氏は、空間描写の広さに驚いた様子「いつかは手に入れたいですね」と圧倒された様子だった。

qdc EMPERORを聴く甲田氏

最後に、劇伴作家として今後手掛けてみたい楽曲について尋ねてみた。

「基本は、いただいた仕事を精一杯やるというタイプの人間なので……あえていえば、ボーカルが入ってる曲をもっとやってみたいですね。爆焔編のときは、声だけの曲も作りました。楽器のひとつとしてボーカルを使うという手法です」。

筆者も爆焔編の「赤い爆焔の焔(M-01)」などがとても印象に残っている。

「やっぱりボーカルが入ると、とてもインパクトがありますよね。人の声ってパワーがあるんですよ。BGMもいいですが、挿入歌もそれほど多くはやっていないので、もっと手掛けてみたいですね」。

ゲーム音楽でも映像劇伴でも、広く愛される名曲を生み出してきた甲田氏。その実績は、音楽に実直に取り組む姿勢と、多くの経験によって支えられている。同氏のこれから紡ぎ出す新たな音楽世界に期待が高まる。SUPERIORを使って甲田氏の名曲を聴き直せば、新たな魅力に気がつくだろう。

甲田氏サイン入り「SUPERIOR」を1名様にプレゼント!

本記事の公開を記念して、甲田氏のサイン入り「SUPERIOR」を1名にプレゼントする。

応募方法は、アユート Audio事業部とAV WatchのXアカウント「@aiuto_audio」「@avwatch」の両方をフォローして、AV Watchの、この記事のポストをリポストするだけ。応募期間は記事公開から2週間の8月19日23時59分まで。奮って参加して欲しい。

橋爪 徹

オーディオライター。音響エンジニア。2014年頃から雑誌やWEBで執筆活動を開始。実際の使用シーンをイメージできる臨場感のある記事を得意とする。エンジニアとしては、WEBラジオやネットテレビのほか、公開録音、ボイスサンプル制作なども担当。音楽制作ユニットBeagle Kickでは、総合Pとしてユニークで珍しいハイレゾ音源を発表してきた。 自宅に6.1.2chの防音シアター兼音声録音スタジオ「Studio 0.x」を構え、聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。ホームスタジオStudio 0.x WEB Site