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ソニー、最新Crystal LEDを世界初実機展示。チューナレスブラビアも

世界初実機展示となったCrystal LED「C」「B」シリーズ

ソニーは23日、業務用ディスプレイ製品をディーラー向けに紹介する展示会をメディア関係者に公開。今回が世界初の実機展示という最新Crystal LED「C/B」シリーズほか、チューナーレスのAndroid TV搭載4Kブラビア、業務用4K SXRDレーザープロジェクタなどを披露した。

ソニーでは近年、オフィス空間やサイネージ、ショールーム、美術館・博物館、コンテンツ制作などにおいて、ディスプレイ製品のニーズが高まっているとして、これまで培った映像・音響技術を活かした高品質な製品を数多くラインナップしてきた。今回の展示会は、それら関連製品を集めた内容となっている。

展示会に先立ち、同社広報担当は「密を避けながら、効果的に情報の伝達や社会活動を行なうために、様々な領域で大画面・高画質のディスプレイがますます求められている。我々のディスプレイ製品は、独自技術により圧倒的リアリティと臨場感を追求しており、人と人をつなぎ、クリエイティビティを刺激する空間を創造することができる。家庭用からコンテンツ制作の場まで、そしてデスク設置サイズから超大型サイズまで、あらゆるソリューションやサイズを一貫して提供できるのもソニーならではの強み」と説明した。

世界初実機展示の最新Crystal LED。110型フルHD

会場では、Crystal LEDディスプレイシステムの最新モデル「C」「B」シリーズが実機展示されていた。同製品は今年1月に発表したもので、Cシリーズは100万:1の高コントラスト、Bシリーズは1,800cd/m2の高輝度性能が特徴。両シリーズともに1.26mm、1.58mmのピッチサイズを用意している。

写真左が「C」シリーズの1.2mmピッチモデル、右が「B」シリーズ

Crystal LEDは、極めて微細なLED素子を敷き詰めたユニットを組み合わせ、サイズや縦横比を自由に構成できるスケーラブルなディスプレイシステムの総称。

これまで、資生堂グローバルイノベーションセンターや三菱自動車のデザインセンター、本田技研の評価ルームほか、ソニーPCLや米国ソニーイノベーションスタジオでのバーチャルプロダクションセット、Netflixロサンゼルスキャンパスにある編集ルームなどに、現行・旧機種が採用されている。

最新世代のC/Bシリーズは、新採用のLED素子や独自の表面処理・制御技術、信号処理技術等を用い、高コントラスト・高輝度な映像を実現したほか、設置性・メンテナンス性も強化しているのが特徴。HDRや120fpsのハイフレームレート、3Dなどの各種信号もサポートする。

CシリーズとBシリーズの表面処理の違いを分かりやすくしたキャビネット。モジュールを8枚組み合わせて、1個のキャビネット(約27.5型に相当)を構成している
ディープブラックコーディングを施したCシリーズのモジュール
低反射コーティングを施したBシリーズのモジュール

会場では、27.5型サイズのキャビネットを16個組み合わせた110型フルHD解像度の「C」「B」シリーズを展示。ラスベガスの夜景や、ヴェネツィア市街、ビーチ、3DCGの映像を上映し、画質デモを行なった。

「C/Bシリーズともに量産前のサンプル機」としながらも、通常の大型LEDビジョンはもちろん、会場で比較展示に使われていた他社ハイエンドLEDと見比べても、Crystal LEDがレベルの異なる映像を描写していた。

写真左から「C」シリーズ(110型フルHD)、「B」シリーズ(110型フルHD)、他社ハイエンドLED(ハーフ110型)。いずれもLED画素ピッチは1.2mm
高輝度性能のデモ

特にBシリーズの発色と高輝度性能が際立っており、フルHD解像度ながら、水しぶきの光沢感や青空に浮かぶ雲の陰影、実物や建物の奥行き感などをリアルに再現する。

Cシリーズにおいても、微妙な階調と明暗の高いコントラストが確認できた。またX1プロセッサのモーションフローにより、動きの激しい映像でもカクツキが目立たず、スムーズな表示が行なわれていた。

コントラスト性能のデモ

同社担当は「我々が提供するのは“ただ大きい”だけでない。ディスプレイとプロセッサの両面で独自の技術を搭載することで、Crystal LEDは他を凌ぐ圧倒的な高画質を提供する。4Kマスターモニターと比較しても、階調や色域など高精度な表示性能を備えているのが確認できると思う。発売は今夏で、いまは画質の最終調整と量産体制を整えている段階だが、すでに多くの問い合わせが来ており、展示会での評判も上々」と話す。

他社モデルとの比較
4Kマスターモニター(写真右端)との比較も行なった

なお家庭用テレビへの展開について尋ねると「まだまだ解決すべき課題があり、簡単ではない。例えば家庭用サイズで4K解像度を実現しようとした場合、LEDの画素ピッチを今よりももっと狭める必要があるが、現状はコストがかかりすぎる。ただ、このデモを見て感じてもらったように、Crystal LEDには非常に大きな可能性があると思っている」とした。

ディスプレイコントローラー

チューナーレス4Kブラビア。XRエンジン搭載の100型は約200万円

今年6月に発表された4K液晶「BZ40J/BZ」、「BZ35J/BZ」、「BZ30J/BZ」シリーズは、チューナーレスのAndroid TV搭載ブラビア。32型から100型まで、全7サイズ9機種をラインナップする。

高輝度な「BZ35J/BZ」シリーズ。VA型でアンチグレア
エントリー「BZ30J/BZ」シリーズ。50型と32型のみVA型。すべてアンチグレア

いずれのモデルも、オフィスや商業施設、教育機関などを対象に企画・発売する製品ながら、民生用ブラビアと同じ高画質機能やAndroid TVシステムを採用しているのがポイント。「業務の場であっても、ソニーならではの高い画質性能や機能、優れたデザインを提供する」としている。

オフィスでの作業や在宅勤務の個人用として訴求する「FW-32BZ30J/BZ」は、ブラビア初の32型4Kモデル。想定売価は9万円前後。

「これまでの最小サイズは43型だったのだが『デスクの上に設置するのは、やや大きい』との声が多かった。32型であれば、在宅のデスクはもちろん、テレビ電話システムなどを使った打ち合わせコーナーなどにも設置しやすい」という。

32型「FW-32BZ30J/BZ」。VAパネルで、輝度は300cd/m2
打ち合わせコーナー(ハドルスペース)での設置例

最大サイズの100型「FW-100BZ40J/BZ」は、オフィスのエントランスや、役員・VIP用の大会議室などへの設置を想定し用意されたモデル。民生用の最新ブラビアにも搭載されている「XRエンジン」を業務用ブラビアで唯一搭載しているのも特徴。想定売価は200万円前後。

「バックライトは直下型で、ピーク輝度は940cd/m2なので、明るいオフィス空間でも鮮明な表示ができる。最新のXRエンジンにより、あらゆるコンテンツをキレイに映し出せる高画質性能にもこだわった。またビジネスの場で表示するコンテンツを引き立てるよう、ソニーロゴは側面に配置。ベゼル幅も上下左右均一にするなど、現場第一を反映させたデザインにしている」という。

なお、チューナーレスブラビアは、業務用製品を取り扱う専用の販路でのみ販売されるとのこと。量販店などで個人購入することはできない。

100型「FW-100BZ40J/BZ」。VA型、表面処理はハードコートローリフレクション
ビジネス用途を想定し、ソニーロゴは側面に配置。背面にはキャリーハンドルも用意する
会場では業務用8K/98型ブラビア「KJ-98Z9G/BZ」も展示。4Kチューナーを2基搭載。8Kチューナーは非搭載。輝度は非公表。想定売価は約1,000万円

ビジネス向け空間再現ディスプレイ。7月「恐竜博」に32型展示

「ELF-SR1/BZ」は、空間再現ディスプレイのビジネス向けモデル。視聴者の顔を捉え、3DCGをリアルタイムにレンダリングし、視点位置に合わせた高精細な裸眼立体視を実現することができる。画面サイズは15.6型で、想定売価は52.5万円前後。

空間再現ディスプレイ「ELF-SR1/BZ」

ビジネスシーンにおいては具体的に、自動車メーカーでのデザイン確認や、スイーツ店舗での商品販促、住宅メーカーでのプロモーションなどに活用されているという。さらに最近は医療への活用にも注目されているとのこと。

「CT/MRデータを3D化することで、体の臓器等を鮮明かつリアルに立体視できる。立体的に捉えることで、メスの入れ方など具体的な手術の事前議論に活用できたり、また医療を学ぶ学生達の教材として活用するなどの事例が出てきている」という。

活用事例

新しい展開としては、空間再現ディスプレイとブラビアを組み合わせたSRDサイネージソリューション(開発中)。これはブラビアにタッチオーバーレイキットを装着し、タッチ機能をブラビアに追加。ブラビア側でタッチすると、空間再現ディスプレイが連動して、コンテンツを切り替えることができるというもので、教育などへの用途を見込んでいる。

なお、7月17日からパシフィコ横浜で開催予定の「DinoScience 恐竜科学博」において、32型の空間再現ディスプレイを技術参考展示するという。

SRDサイネージソリューションのデモ

海外では富裕層が自宅導入も。4Kレーザープロジェクタ「VPL-GTZ380」

「VPL-GTZ380」は、4K SXRDパネルを搭載した同社レーザープロジェクターの最上位モデル。2020年8月に発表され、'21年1月に発売した。想定売価は約850万円(ボディのみ)。

4Kレーザープロジェクタ「VPL-GTZ380」

DCI 4K解像度と明るさ10,000ルーメンの高輝度、16,000:1のネイティブコントラスト、そしてDCI-P3/HDR対応の広色域性能に加え、ネイティブ4K解像度かつ10,000ルーメンレーザープロジェクターとしては業界最小サイズの51kgを実現しているのも特徴。プロジェクター用に最適化したX1プロセッサも搭載する。

プロジェクター用に最適化したX1プロセッサも搭載

「Crystal LEDよりも安価で、凹凸のある様々な場所に映像を投影できるのもプロジェクターの強み」としており、GTZ380は美術館や博物館、企業のショールームほか、プラネタリウム、航空機シミュレータなどに採用実績を持つという。

展示会場では、147インチのスクリーンに量産機による画質デモを実施。ペルーを撮影した4K HDRコンテンツを上映した。

プロジェクターとは思えないほどの高輝度・高コントラストを実現しながら、直視型ディスプレイのようなギラつきを感じさせない、柔らかいHDR映像が大画面に展開。発色も驚くほどにビビッド。明部も色が飛ぶことなく、しっかり描写されている。目の覚めるような大画面・高精細映像を体感することができた。

投写映像

同社担当によれば「GTZ380は、青色レーザーに加えて、深みのある青を出す紺色レーザーと深みの赤を出す赤色レーザーを補助的に光源に組み込んでいる。紺・赤のレーザーにより、カラーフィルターを使うことなく、DCI P3色域を全てカバーし、明るさも保持した。色温度6500Kの時に最大輝度が出るように工夫しているのもポイント」という(VPL-VW5000は色域優先でカラーフィルター搭載、VW5000の業務用モデルVPL-GTZ280は明るさ優先でフィルターレス仕様)。

また「海外では、GTZ380を家庭用プロジェクターして使う富裕層もいる」そうだ。なお、銀座のソニーストアでは7月4日まで、VPL-GTZ380の視聴会を実施している。詳細はホームページを参照のこと。