ミニレビュー

ソニー新完全ワイヤレス「WF-1000XM4」、進化点を速攻レビュー

「WF-1000XM4」

ソニーの人気完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM3」に、ついに後継機が登場した。6月25日発売の「WF-1000XM4」(オープンプライス/実売33,000円前後)がそれだ。ノイズキャンセリング機能と音質をさらに高め、ワイヤレスでもハイレゾが楽しめるLDACにも対応するなど、注目ポイントが多い。詳細なレビューは後日掲載予定だが、ここでは実機に触れ、短時間だが試聴した感想などをファーストインプレッションとしてお伝えする。

詳細は、本日掲載したニュース記事を参照していただきたいが、WF-1000XM3からWF-1000XM4への進化点を簡単にまとめると、以下のようになる。

  • 本体と充電ケースが小型に
  • 統合プロセッサー“V1”搭載で処理能力アップ。低歪率、高SN比、NC性能向上
  • ハイレゾを最大転送速度990kbpsで伝送するLDACに対応
  • 圧縮音源をハイレゾ相当に変換して再生する「DSEE Extreme」搭載
  • 360 Reality Audio認定モデル
  • 付属ピースがフォームタイプで独自開発のノイズアイソレーションイヤーピースに
  • アプリからイヤーピースのサイズがマッチするか測定可能
  • 6mm径ドライバーも振動板やマグネットを改良
  • BluetoothのSoCの性能アップ、省電力化しつつ業界最高レベルというNC機能
  • 風ノイズ低減、外音取り込み機能も向上
  • 4つのマイクと骨伝導センサーで通話の声もクリアに集音
  • IPX4相当の防滴性能搭載、雨や汗に強い

本体も充電ケースも小さくなった

まず、WF-1000XM4の充電ケースを手にして感じるのは「小さい!」だ。WF-1000XM3のケースは大型だったので、1000XM4のケースはかなりコンパクトになったと感じる。これならば、ポケットやバッグなどに入れやすそうだ。また、WF-1000XM3のケースは自立しなかったが、1000XM4のケースは自立する。細かい話だが、机の上などに省スペースで置けるため、自立できるようになったのは歓迎したい。

充電ケースの比較。左がWF-1000XM3のケース、右がWF-1000XM4ケース。手で抑えていないと倒れてしまうWF-1000XM3ケースに対し、WF-1000XM4のケースは自立するようになった

イヤフォン本体もWF-1000XM3から小型化。前モデルは、大きいというか、“長い板”が取り付けられたような形状だったが、WF-1000XM4は“豆”のような丸いフォルムへと変わった。実際に小さくなっているのだが、特定の方向に長かったりもしないので、よりコンパクトになったと感じる。

耳に装着しても、WF-1000XM4はあまりイヤフォンの筐体が外に飛び出さない。さりげなく完全ワイヤレスを使いたい人には、WF-1000XM4の方が魅力的に感じるだろう。

左がWF-1000XM3、右がWF-1000XM4。
AirPods Pro(左)も含めたサイズ比較
WF-1000XM3
WF-1000XM4。本体も小さくなり、装着した状態であまり飛び出なくなった

NC性能も進化、圧迫感が少なく

WF-1000XM3とWF-1000XM4のNC性能を比較してみよう。その前に、イヤーピースも従来と変わっている。1000XM4に付属するピースは、素材としてポリウレタンフォームを使ったもので、いわゆる“フォームタイプ”のピースになった。柔らかく、指で少しつぶしてから耳に入れ、中で復元して遮音性能を高めるもので、高音域の遮音性が特に向上したという。

注意点としては、普通のシリコン製イヤーピースは付属しないという事。フォームタイプは、ペタペタとくっつくような質感で、シリコンタイプより苦手という人もいるだろう。しかし、ソニーとしてはNC性能をさらに高めるため、“フォームタイプを使って欲しい”とのメッセージも込めて、ピースを独自開発し、それのみを付属にしたという。

「WF-1000XM4」に付属する、独自開発のノイズアイソレーションイヤーピース

装着後は、アプリ「Sony | Headphones Connect」を使い、ユーザーの耳に、イヤーピースのサイズが合っているかどうかのテストができる。測定音として短い音楽が3、4秒ほど流れ、イヤーピースが耳穴の中で密閉しているかどうかを確認してくれる。「現在装着したピースのサイズが合っているか」という測定だけでなく、幾つかのサイズのピースからどれが合っているかを判断するという測定も可能だ。

アプリ「Sony | Headphones Connect」を使い、ユーザーの耳に、イヤーピースのサイズが合っているかどうかのテストができる

飛行機や地下鉄の中のような、「ゴーッ」という騒音を大音量でスピーカーから流し、WF-1000XM3とWF-1000XM4でNC機能をONにし、どちらがノイズを低減できるかを比較した。

「WF-1000XM4」

WF-1000XM3も、完全ワイヤレスイヤフォンではトップクラスのNC性能を持っているが、1000XM4ではさらに騒音が減る。どちらの機種も「ゴーッ」という騒音全体において、低音~中高域まで、かなりの範囲をキャンセルできる。その範囲が1000XM4ではさらに広くなったと感じられ、騒音も「サーッ」という高い音しか残らない。

NCをONにした状態では、「静かなオフィスで空調が動いているのかな?」という程度の音しかしないのだが、イヤフォンを外してみると、「ゴォオオー!」という騒音が鳴り響いていて驚いた。

単調な騒音だけでなく、レストランでの騒音もキャンセルしてみた。人の話声や食器がぶつかる「カチャカチャ」という音が、WF-1000XM4の方がより小さく、目立たなくなる。人の声の高い部分や、カチャカチャという食器の音の上の方の「チャ、チャ」という音だけが少し聴き取れる……という感じだ。

NC機能を聴き比べていると感じるのは、1000XM3よりも、1000XM4の方が、NC ON時の音に圧迫感が無いという事。NCをONにすると、音がこもったり、音場が狭くなるなどして、圧迫感・閉塞感を感じるイヤフォンが存在するが、1000XM4にはそれがほとんど無い。楽器やボーカルの声が、音像の背後へと広がっていく様子も、1000XM4の方がより遠くまで見通せる。開放的な気分で聴けるため、長時間の使用にも適していそうだ。

音を聴いてみる

LDACに対応している「Xperia XZ3」とペアリングし、「yama/春を告げる」や「Bruno Mars/24K Magic」を聴いた。1000XM4はLDAC、LDAC非対応の1000XM3はAACで伝送している。

まず、前モデル・1000XM3の音の傾向をおさらいしておこう。低域がパワフルで押し出しが強く、メリハリのあるサウンド。全体としては“元気の良い音”だ。

同じ曲を1000XM4で聴くと、低域のパワフルさは少し控えめになり、低域から高域にかけて、全体のバランスが良くなった。モニターライクなサウンドで、曲のジャンルを選ばずに再生できる音になった。

単にバランスが変わっただけでなく、サウンド自体の情報量もアップ。LDACで伝送しているというのもあるが、SN比が良くなり、音が出ていないときの音場の静けさや、そこから音がスッと出てくる時のトランジェントも進化。細かな音がより細かく描写され、それらをキチッと聴き取れる、イヤフォンとしての基本的な再生能力に磨きがかかっている。

特に、低域はより深い音まで出るようになっており、それでいてタイトでハイスピードさも兼ね備えている。余分な響きが膨らんだりもしない。キレの良い低音であるため、24K Magicのようなビートが心地よい楽曲が非常に美味しく聴ける。それゆえ、バランスとしては1000XM3よりも控えめになった低音でも、存在感は低下しておらず、迫力のある音もキッチリ再生できる。

簡単にまとめると、パワフルで目立つサウンドの「WF-1000XM3」から、モニターライクかつピュアオーディオライクな、大人っぽいサウンドに進化した「WF-1000XM4」という印象だ。

山崎健太郎