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明るい新世代OLED、AI/ミリ波レーダで自動調整。'23年の新テレビまとめ

今春から初夏にかけてTVメーカー各社が発表した2023年の最新モデルが、ネットショップや家電量販店に並び始めている。新世代「マイクロレンズアレイOLED」で輝度性能を大幅に高めたLGとパナソニック・ビエラ、ブランド初の量子ドット有機ELを採用したシャープ・アクオス、業界初のミリ波レーダー搭載で画音質を自動調整するレグザ、独自プロセッサとミニLEDで画質性能を一段と高めたソニー・ブラビアなど、今期も各社各様のラインナップが勢ぞろいしている。ブランド別に、2023年モデルの特徴をまとめた。

レグザ:ミリ波レーダで画音質調整。コストかけ過ぎ4K液晶も

85型「85Z970M」

TVS REGZAは、4K有機ELの最上位「X9900M」、ミニLEDと量子ドット採用の4K液晶「Z970M」「Z870M」の3シリーズ9機種を4月から順次販売している。サイズは55から85型まで。

型名タイプ85型77型75型65型55型
X9900M有機-93.5-59.444
Z970M液晶93.5-7752.8-
Z870M液晶--5541.830.8

※数字は店頭予想価格(万円)

X9900MとZ970Mシリーズには、最新世代の「レグザエンジンZRα」を搭載。さらに業界初となるミリ波レーダーを内蔵しており、レーダーによるセンシング技術で視聴環境や視聴位置を認識。視聴距離に合わせて、適切な画音質に自動調整する機能を実現した。

Z970Mは、新開発のミニLEDと量子ドットに加え、低反射ARコートや広視野角シートを初採用することで「レグザ液晶史上最高画質」を目指した、“コストかけ過ぎ”(関係者談)のフラッグシップ。新世代の映像エンジンと従来比10倍の緻密なエリアコントロールを組みわせることで、有機ELテレビ同等の高いコントラストを実現しているのもポイント。

レグザならではの、マニアックな新機能も追加。「アニメビューティPRO」は、地デジやネット動画のアニメの種類を識別し、精細感やノイズ処理を最適化し高画質化。さらにAIがアニメキャラクターの顔を検出し、人物はノイズを抑制し、なめらかに再現しつつ、実写のような描写の背景はきめ細かくリアルに再現してくれる。

“アニメ顔”を検出している様子

ゲームには、3つのモードを用意。なかでも「ロールプレイング」は、0.93msの遅延に抑制しながら、超解像技術やコントラスト感の向上を実現しており、一段とリアルなゲーム映像が楽しめるようになっている。

ブラビア:「ゲームメニュー」を新搭載。PS5との親和性がアップ

85型「XRJ-85X95L」

ソニー・ブラビアは、ミニLEDと量子ドット搭載した4K液晶「X95L」を筆頭に、6シリーズ22モデルを4月から順次販売している。サイズは43から85型まで。

型名タイプ85型77型75型65型55型50型43型
A80L有機-84.7-50.639.6--
X95L液晶99-71.547.3---
X90L液晶60.5-4435.2---
X85L液晶---27.521.5--
X80L液晶41.8-30.824.218.716.515.4
X75WL液晶--24.218.714.913.812.7

※数字は店頭予想価格(万円)

X95Lは、ミニLED×量子ドット搭載4K液晶ブラビアの第2弾。最新世代のXRプロセッサ搭載やピーク輝度最大30%アップ(前モデル比)の高コントラスト化ほか、国内モデル初導入となる新しいツイーターシステムを搭載し、画質・音質性能を大幅にアップデートしている。

A80Lは、4K有機ELブラビアのスタンダードモデル。ノイズと動きブレを抑制した機能を新搭載したほか、最新パネルによるピーク輝度の向上が図られている。残念ながら、QD-OLED搭載の最上位「A95L」の発売はない。

2023年ブラビアの特徴の1つが、PlayStation 5などを遊ぶ際に活用できる、ゲーム専用ユーザーインタフェース「ゲームメニュー」の搭載。

ゲームメニュー

これはゲームのステータスや設定などのアシスト機能をメニューに集約させたもの。シューティングゲームで活用できる中心点表示「クロスヘア」、暗部を持ち上げて視認性を高める「ブラックイコライザー」、プレイ画面のちらつきやカクツキを抑える「VRR」など、ゲームプレイに直結する機能のオンオフや調整がまとめられている。

ブラビアだけの機能として、プレイ画面を“縮小”できる「画面サイズ調整」も搭載(後日アップデート)。例えば65型モデルの場合でも、30型前後の画面サイズで表示することが可能で、見慣れたゲーミングモニターのサイズに合わせたり、視線の移動距離を減らしながら対戦相手の動きを確認する場合などに活用可能だ。

ハイセンス:初の本格最上位液晶「UX」。主要パーツはレグザ同等

65型「65UX」

ハイセンスジャパンは、ミニLEDと量子ドットを使った4K液晶「UX」「U8K」の2シリーズ5モデルを5月より販売している。サイズは55型から75型まで。

型名タイプ75型65型55型
UX液晶49.839.8-
U8K液晶26.819.816.8

※数字は店頭予想価格(万円)

注目は、価格を抑えながら“ハイセンス史上最高画質の4K液晶テレビ”を実現したというUXシリーズ。2011年の国内テレビ市場参入以降、ハイセンス初の本格的フラッグシップとして展開する高級モデルで、ミニLEDバックライトや量子ドットフィルム、低反射と広視野角を両立した独自設計パネル、AI高画質化技術など、液晶テレビにおける最新技術を投入している。

映像エンジンには、「16ビットHI-VIEWエンジンX」を搭載。人間が肉眼で見ているリアルな世界を高性能AI技術によって再現。16ビット大容量信号処理と最新の超解像処理技術により、自然で美しい臨場感のある高画質体験を目指した。技術者によれば、UXで採用している主要パーツはグループ会社であるレグザ「Z970M」と同等とのことで、ポテンシャルの高さがポイント。

ビエラ:高輝度のマイクロレンズOLED、初のミニLED×量子ドット

65型「TH-65MZ2500」

パナソニック・ビエラは、4K有機ELの最上位「MZ2500」、ミニLEDと量子ドット採用の4K液晶「MX950」など、5シリーズ15機種を6月から順次販売している。サイズは43型から75型まで。

型名タイプ75型65型55型50型48型43型
MZ2500有機-5237---
MZ1800有機-4029-27-
MX950液晶534030---
MX900液晶---19-18
MX800液晶27201714-13

※数字は店頭予想価格(万円)

MZ2500は、新世代有機ELパネル「マイクロレンズアレイOLED」(MLA-OLED)を搭載した、4K有機ELビエラのフラッグシップ。独自のメタル放熱シートと制御技術を組み合わせることで、2022年モデル比(LZ1800)で約2倍もの高輝度化を達成している。

マイクロレンズアレイは、1画素あたり数千個の微細な凸レンズを面上に配置したもの。凸レンズを従来の有機EL発光層と一体成型する事で、内部反射で失われていた光を表面に取り出す。電気的な負荷をかけて、輝度を持ち上げているわけではないため、消費電力はそのままに、輝度とコントラストを大幅に高めることができるのが特徴。

スピーカーにもこだわっており、多数のユニットを線上に並べて構成したラインアレイスピーカーをフロント部分に搭載。イネーブルドスピーカーも配置しており、65型で160W、55型で150Wもの出力を実現した。

75型「TH-75MX950」

MX950は、4K液晶ビエラとして初のミニLED×量子ドット採用機。従来の液晶ビエラよりも、明るさと色鮮やかさが向上。加えて、駆動電力を明るい部分に集中させて輝度を稼ぐブースト技術を導入することで、より高いコントラスト表現を可能にしている。

LG:2000nit超の高輝度有機。写真選ぶと好みの画にする機能

65型「OLED65G3PJA」

LGは、国内唯一の8K有機EL「Z3」を筆頭に、4K有機EL「G3」や「C3」、ミニLED×量子ドット採用の4K液晶「QNED85」など、8シリーズ25機種を7月から順次販売している。液晶テレビ「QNED75」「UR8000」シリーズは8月下旬の発売予定。サイズは42型から88型まで。

型名タイプ88型83型77型65型55型48型42型
Z3有機396------
G3有機--886143--
C3有機-99-49363029
B3有機--654330--
型名タイプ86型75型65型55型50型43型
QNED85液晶7250----
QNED80液晶5938302018-
QNED75液晶-----14
UR8000液晶-2619161311

※数字は店頭予想価格(万円)

注目は、4K有機ELのフラッグシップ「G3」。LGディスプレイがCES2023で発表した、第3世代有機ELパネル「マイクロレンズアレイOLED」(MLA-OLED)を採用しており、ピーク輝度2,000nits超を達成。視野角も向上しており、斜めから観た時の明るさや色再現も改善されている。

なお、2023年モデルでMLA-OLEDパネルを搭載しているのは、パナソニックの4K有機ELビエラ「MZ2500」とLG「G3」の2つのみ。77型サイズで同パネルを採用してるのは、LGのG3が唯一。

映像だけでなく、オーディオ機能も進化。最新プロセッサ「α9 AI Processor Gen6」を搭載するG3/C3では、2chの音源ソースもバーチャル9.1.2chの立体音響で再生できるようになったほか、音色と音の輪郭を補正して音をクリアにする機能や、音量によって高音・低音の聞こえ方の違いを均一に自動調整する機能も加わっている。

「パーソナルピクチャーウィザード」機能を新搭載

2023年のLGテレビでは、写真を選ぶだけで好みの画質に調整してくれる「パーソナルピクチャーウィザード」が新しく搭載されたのも特徴。

テレビを購入したユーザーは、画面の案内に従って、表示された6枚の画像の中から、自身が好ましいと感じる画像を1~2枚選択。この作業を6回繰り返すことで、AIがユーザーの好みの画の傾向を判別。8,500万通りの中から、AIがユーザー好みの画と判断したチューニングにして映像を楽しむことができるようになっている。

また国内のテレビメーカーで唯一、HDMIの4入力全てで、HDMI2.1をサポート。ゲームプレイ中も現在の設定が一目でわかる「ゲームダッシュボード」機能、自身のプレイ環境やゲームジャンルに合わせて画質モードを選択できる「ゲームオプティマイザ」、4K120pのDolby Visionゲーム対応など、ゲーム関連機能も幅広くサポートしている。

アクオス:QD-OLED初採用。“音質”も自動で調整するAIオート

65型「4T-C65FS1」

シャープ・アクオスは、4K有機ELの最上位「FS1」や4K液晶「FN1」など、5シリーズ13機種を6月から順次販売している。FS1やFL1の50型など、一部モデルは9月16日の発売予定。サイズは42型から75型まで。

型名タイプ75型65型55型50型43型42型
FS1有機-60.544---
FQ1有機-47.333---
FN1液晶38.528.625.3---
FN2液晶--20.918.717.6-
FL1液晶-19.8-13.8-12.1

※数字は店頭予想価格(万円)

FS1は、アクオス初の量子ドット有機ELパネル“QD-OLED”搭載モデル。青色OLEDと量子ドット層を組み合わせることで、多彩な色を再現性高く鮮やかに描写。視野角特性も向上しており、斜めからでも鮮やかな映像が楽しめるようになった。

機能としては、テレビ番組などのコンテンツに応じて最適な映像に調整する「AIオート」モードが進化。2023年モデルのアクオスでは、AIによる“音声の自動調整”も可能になった。

独自のヘルスケア関連アプリ「AQUOSヘルスビューワー」も特徴の1つ。スマートウォッチや体重計などの“Google Fit”対応機器と連携させることで、それぞれの機器が測定した数値の変化をグラフ化して、アクオスで表示できる。オリジナルのアプリ「リビングカメラ」では、カメラ映像の上にYouTube映像を同時表示できるように進化している。

阿部邦弘