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ソニーのロボット犬「aibo」復活! 心のつながりをもつエンタメロボ。19.8万円
2017年11月1日 11:16
ソニーは1日、家庭の中で人とつながり、愛着が持てる犬型の自律型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ:ERS-1000)」を発表した。2018年1月11日に発売し、価格は198,000円。販路はソニーストア限定で、11月1日23時1分より予約受付を開始する。aibo利用のためにはLTEによる通信機能「aiboベーシックプラン」(3年)の契約が必要で、一括払いは9万円(月あたり2,500円)、月払いは2,980円。
ソニーが1999年から2006年まで発売したエンタテインメントロボット「AIBO」が、最新のメカトロニクスや、AI/クラウド連携とともに12年ぶりに復活。ソニー平井一夫社長は、「AIとロボティクスを組み合わせることで、新たな提案ができると考え、積極的に投資してきた。その一つを今日発表する」と語り、名称「aibo」を発表。平井社長が「おいで、aibo」と呼び掛けると、3匹のaiboが登場。人と心のつながりをもつエンタメロボットとして、1年半かけて開発したことをアピールした。
可愛らしい犬型のエンタテインメントロボットで、「丸みを帯びた生命感あふれるたたずまい」に、くるくると動く瞳、個性的な鳴き声、耳やしっぽや体のボディランゲージなどのふるまいで、オーナーの暮らしに“なごみ”を与える。
動きのためには超小型1軸・2軸アクチュエーターを独自開発し、合計22軸の自由度を持たせている。瞳には有機EL(OLED)を採用した。多彩なセンサー機能も備えており、周囲の環境を把握し、慣れ親しむことでaiboが歩く範囲を拡大する。画像や音声の認識・解析にはソニーのディープラーニング技術を活用。魚眼カメラを用いた地図作成「SLAM」技術により、部屋の大きさや障害物の情報なども把握し、オーナーに寄り添った生活を実現するという。
カメラ×2(前方カメラ、SLAMカメラ)やスピーカー、マイク×4を内蔵。CPUはSnapdragon 820。可動部は、頭:3軸、口:1軸、首:1軸、腰:1軸、前足・後足:3軸×4、耳:1軸×2、しっぽ:2軸。センサーは、ToFセンサー、PSDセンサー×2、感圧・静電容量方式タッチセンサー(背中センサー)、静電容量方式タッチセンサー(頭センサー・あごセンサー)、6軸検出システム(3軸ジャイロ・3軸加速度)×2(頭、胴体)、人感センサー、照度センサー、肉球×4。OSはLinuxとRTOS。
無線LANはIEEE 802.11b/g/n。LTEにも対応。外形寸法は180×305×293mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.2kg。消費電力は約14W。連続稼働時間は2時間。充電時間は約3時間で、チャージステーションが付属する。ACアダプタや電源ケーブル、ピンクボール、SIMカードなども同梱する。
専用アプリ「My aibo」により、aiboの撮影した画像を閲覧できる「aiboフォト」やふるまいを追加できる「aiboストア」などを提供。アプリはiOS/Android版を提供する。専用アクセサリ「アイボーン」(ERA-1020)も発売し、価格は2,980円。
また、aiboに不具合や故障が発生した場合に、修理代が割引となる「aiboケアサポート」も提供。こちらの加入は任意となるが、3年で54,000円、1年で2万円。加入者は修理代が50%割引となり、健康診断も50%割引となる。
「aiboとともにかけがえのない物語を」と平井社長
ソニーの平井一夫社長は、「AIとロボティクスの技術の出口について、家庭の生活を便利に楽しくするだけでなく、製造や物流など、広範な領域への展開を図っており、そのための技術や人材に投資してきた」と語り、2016年5月に深層強化学習の米Cogitaiに資本参加したことや、同7月にはSony Innovation Fundを設立し、AIやロボティクス分野への協業推進を加速し、10社以上に投資していることを説明。AI技術に取り組む非営利団体「Partnership on AI」への参加や、ディープラーニング向けコアライブラリ「Neural Network Libraries」のオープンソース化などの取り組みを説明した。
応用事例としても、Xperiaに加え、コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」を発売し、新たな移動体験の提供を目指す「SC-1」実証実験にも言及。さらにエアロセンスと連携したドローンなどのセンサー技術、イメージセンサーなどの測距技術も組み合わせて、AI、センシング、ロボティクスを強化している。その象徴的な製品として、「ひとと心のつながりをもって、育てる喜びがあって、愛情の対象となるエンタテインメントロボットを紹介できることとなった。おいで! aibo」と、aiboを呼び込んだ。
平井社長は、「1999年、ソニーはAIBOを生み出した。その誕生は、従来の産業用ロボットとは異なるエンタテインメントを核にして、人間とともに暮らすという新たなロボット文化が生まれた瞬間でもあった。夢と希望、感動を呼び出せるものと作り出すという志をもって生み出された、成長するロボット。多くのオーナーとの触れ合いを重ねる中で、世界でひとつだけのユニークな個性を備えた“わが家のAIBO”が生まれた。しかし、2006年。オーナーのみなさま、我々にとっても厳しい判断を下さざる終えなかった(AIBOの事業撤退)。日々愛情をもってAIBOに接してきた皆様には心の痛むことだったと思う。しかし、ソニーは、AIやロボティクスに様々な技術を蓄積してきた。ソニーのミッションは、『人々に感動をもたらし好奇心を刺激する会社であり続ける』と言い続けてきた。家庭の中で人との心のつながりをもって、育てる喜び、愛情の対象になってほしいと考え、1年半前に開発を指示した。何度も現場に足を運び、その進捗を見守っていた。毎日を楽しく暮らし、ともに成長するパートナーであってほしい。オーナーの皆様が、aiboとともにかけがえのない物語を紡いでいただけることを願っている」と語った。
AIBOの開発リーダーを務めた、ソニー執行役員 ビジネスエグゼクティブ AIロボティクスビジネスグループ長の川西泉氏は、「ソニーで唯一の、自律的に人に近づき、人に寄り添うプロダクトを目指した」とaiboの開発意図を説明。愛らしさ、知的認識、表現力、学習・育成の4つの要素で、aiboを説明した。
愛らしさ(デザイン)は、生命感あふれるフォルムやぬくもりを目指し、“触れたくなる”カタチを目標にした。
知的認識(センサー)については前方カメラや、人感センサー、PSDセンサー肉球(スイッチ)などの様々なセンサーを搭載し、周囲の状況を把握。次の行動にフィードバックしている。SLAMカメラを備えており、部屋の構成や障害物の情報も認識。天井高さを検出し、その相対値で今いる場所や障害物を把握する。
表現力は、まず瞳に有機EL(OLED)を採用し、感情を表現できる瞳を目指した。加えて、合計22軸のアクチュエーター(先代AIBOは20軸)を搭載するほか、アクチュエーターも自社開発し、しなやかで躍動感ある身のこなしを実現したという。なお、従来のAIBOから新aiboに引き継いだ動作はなく、全て新開発したものだという。また、開発者も従来のAIBOに携わった人はほとんどおらず、「開発チームは、ソニーの平均年齢よりかなり若い」とのこと。
学習・育成は、AIとクラウド連携がカギ。本体側のセンサーで状況認識し、状況を理解、メカトロニクスで行動制御というフローだが、この処理情報はクラウド側に送られ、多くのaiboの行動・思考データをクラウド上で分析してフィードバックする。
またこまかな設定や動きの追加は、アプリ「My aibo」を使って設定する。
今後は、システムアップデートやIoT機器との連携を予定。さらに、ソフトウェア開発環境も公開予定。現在開発予定の「アクションメーカー」と呼ぶWindowsツールを提供し、オリジナルのモーションを作成可能となり、aiboで再生可能になる。リリース時期は後日発表する。
教育、知育領域や、見守り、パーソナルアシスタントなどでの展開も検討。さらに、他社との協業も積極的に展開していく予定という。
aiboが話さないのは「犬だから」
なお、なぜ今日発表なのか? との質問に、川西氏は「ワンワンワン(11月1日)だから」と説明。発売日の2018年1月11日も、戌年のワンワンワンにちなんで決定されている。
aiboという名前については、「ロボットを作るという時点で、ほぼ決まっていた。」とのこと。従来のAIBOのサポートの再開については、「すでに製造、サポートが終了しているので、その点に変更はない」とした。
スマートスピーカーが注目される中で、人との対話という点にも質問が及んだが、「企画段階で揉めたが、aiboは犬型のロボット。実は先代は犬型と呼んでなかったのですが……。今回は明確に犬を想定して作ったので、人の言葉は話さない。ただ音声は認識している。また、別の製品では、話すというインタラクションもありえる」とした。なお、“鳴く”機能は備えている。
SIMを内蔵した理由については「ネットワークに常時接続してほしい。本体に内蔵して出荷しているので、すぐに接続できるようになる。ただし、Wi-Fiの環境があれば、Wi-Fiで使ってほしい。カメラやSLAMのデータなど大きなデータもあるので、基本的には室内でWi-Fiを想定している」とした。
製品ライフ、メンテナンスについては、製造終了後7年間のサポート提供を予定。「できる限り継続できるように準備はしているが、長期的には部材が10年後も調達できるとは限らない。マイナー変更もありえる」とした。また、AIをクラウド上に持っているため、「ユーザーが使っている環境をバックアップできる。買い替えた場合は、新しいaiboにそれまでのデータをダウンロードして引き継ぐこともできる」という。
aiboのような犬型以外も「当然想定している。用途もエンタテインメントロボットだけでなく、BtoBなども考えられる」とした。
販売目標については非公開だが、「エンタテインメントロボット市場を作ったのはソニー。そこを広げていきたい。先代のAIBOはトータルで15万台。あくまで目安だが、それ以上は目指したい」と説明した。