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第569回

新PS5と“PlayStation Portal”はなぜ生まれた? SIEプラットフォーム責任者に聞く「年末商戦」で狙うもの

ソニー・インタラクティブエンタテインメント プラットフォームエススペリエンス担当シニアバイスプレジデントの西野秀明氏

PlayStation 5が発売になって3年が経過し、またホリデーシーズンがやってくる。

すでにレポートも掲載しているが、このタイミングで新型の「PlayStation 5(PS5)」と、その周辺機器である「PlayStation Portalリモートプレーヤー(Portal)」も市場に出る。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)でPlayStationプラットフォームエススペリエンスの責任者を務める、シニアバイスプレジデントの西野秀明氏へ、単独インタビューを行ない、PS5のこれまでとプラットフォーム展開の方向性、Portalのような製品を発売する狙いなどを聞いた。

このホリデーシーズンはPS5にとって「勝負の時期」

前回、筆者が西野氏に長時間インタビューしたのは、PS5がローンチするタイミングだった。

その前後に話を聞いた時、彼は「PS4からPS5への移行には3年くらいはかかるだろう」との予測を語っていた。

ご存知の通り、PS5は発売時から品不足に見舞われた。PS5自体のニーズが大きかったこともあるが、コロナ禍での物流混乱やパーツ供給バランスなどにも問題が起きていた頃だ。SIEの望み通りに増産して流通させられる状況にはなく、品不足が続いていた。

それが解決されてきたのは今年に入ってからである。西野氏は「今年4月頃からは、量販店の棚でも製品在庫を見かける状況になった」と説明する。企業にとって過剰在庫はもちろん大変なことだが、「店に行っても買えない」というのはやはり異常なこと。同時に転売の功罪が注目されたりもしたが、これも供給が限られていたゆえに起きたことでもある。

西野氏(以下敬称略):PS5の立ち上がり当初は、PS4と同じようなカーブを描ければ……とイメージしていました。

しかしご存知のように、コロナ禍もあって物流や調達が滞り、需要を満たしていないところがありました。

現在は部材の複数社購入を可能にするなど、社内の仕組みを整えてきた結果が出てきました。このホリデーシーズンに勢いをつけ、年度末に向けてPS4の数(発売開始から同時期の累計出荷数量)に追いついて行きたいと考えています。

(PS5の出荷量については)もちろん、供給の問題などで事情が違った部分はあります。ですが、コンソール(ゲーム専用機)はホリデーシーズンの需要が圧倒的に多い。そもそもこの時期に積極展開するのは予定されていたことですし、まさにここに注力すること自体は変わっていません。

3年経過後というのは、使いこなしが進んで良いソフトが増えるタイミングでもありますし……。

すなわち、PS4からPS5への移行について、今年の年末商戦が重要なポイントであるという予測は最初から変わっていないということだ。

ソニーグループの決算説明資料より。PS5は今年2,500万台の出荷を目指している

新型のPS5についても「この時期の投入を目指して開発してきた」と西野氏は話す。

SIEタイトルとして大ヒットが期待される「Marvel's Spider-Man 2」の発売時期(10月20日)であることも重要だ。ゲーム自身の開発とハードの刷新、ソフトの供給タイミングといった事象と、これまでのコンソールビジネスでの経験から、プロモーションを活性化するタイミングとして準備が進んでいるのであろう。

円安の中登場する「新型PS5」

では、新型PS5はどのような考え方で作られたものなのだろうか?

そこにはPS5世代ならではの難しさもある。

今回のPS5は、日本国内では「値上げ」されている。過去のコンソールは、発売後は次第に本体価格を下げて普及を目指すものだったので、かなり異例なことではある。

理由は明白。円安の影響だ。アメリカ市場の場合、新型のPS5(ドライブ付き)は499ドルで、値段に変更はない。しかし円安が進行した結果、日本国内で同じ価格を維持するのは難しくなっている。「為替については弊社だけではいかんともし難いところがある」と西野氏は話す。

手前が新型PS5で、奥が初代PS5。為替の関係もあって価格は上がっている

ただそれでも「値下げがない」ことの理由は必要だ。その点について西野氏は次のように説明する。

西野:普及のために1円でも安くしたい、というのが本音ではあります。しかし、半導体のシュリンクによるコスト削減が難しくなっているのは事実。では今回、(アメリカでは)価格を据え置かせていただく中でどのような付加価値が出せるのか、と考えた時に「小さくする」「ストレージ(SSD)の容量を増やす」「ドライブを着脱可能にする」という発想が生まれました。

この発言については少し説明も必要だろう。

過去のIT機器は、半導体製造技術の進化を「性能」「コスト」の両面で活かしてきた。いわゆる「製造プロセス技術」の進化は、半導体を高性能化させ、消費電力を減らし、生産効率の高いものへと変化させた。すなわちコンソールのように「性能が一定のもの」は、進化が価格低下に結びつきやすい傾向にあった、ということだ。

だが現在は、半導体の製造技術進化による生産効率向上と消費電力低下のスピードが落ちている。そのため、半導体自体の大幅なコストダウンは望みづらく、進化は主に「供給量安定」の方に向かう。価格を高いものに維持するなら性能はアップするが、周辺パーツにかかるコストも勘案すると、性能アップは結局値上げに結びつく。ハイエンドスマートフォンの価格がどんどん上がるのもこれが理由だ。

2010年代半ばからこの傾向は顕著で、どのゲーム機も「若干値上げした上位モデル」を用意するか、「価格改定はあまりせずに現行モデルを販売するか」というパターンが主流になっている。PS5は新型設計に際し、価格引き下げ以上に「生産性向上」を重視したと思われる。

結果として、供給価格が下がっているSSDを増量し、それ以外は小型化を除いて「これまでのPS5そのまま」といっていい製品になっている。

ドライブを着脱式にしたのも、「本質としては、ユーザーの方々に選択肢を提供したかった」とコメントしつつ、「生産性の面でプラスであるのも事実」と、西野氏は話す。ドライブありとなし、双方の在庫状況をよりフレキシブルに変更できるからだ。

新型PS5はドライブが着脱式に

周辺機器からも「PS5の魅力」をアピール

特にPS5世代以降の特徴として、「SIEが周辺機器を手がける例が増えている」という点も挙げられる。

その最たるものは、今週発売を控えているPortalだろう。その前で言えば、VR用HMDである「PlayStation VR 2」も専用周辺機器である。アクセシビリティ対応を拡充する「Access コントローラー」も12月に発売される。

また、PCやスマートフォンからも使えるが、SIEブランドのヘッドフォンである「PULSE」シリーズの展開が加速している。

PULSE Explore ワイヤレスイヤホン

周辺機器を強化した意図はどこにあるのか?

西野氏は「PS5を出しっぱなしで終わらない、ということに関係している」と話す。

西野:PortalにしろPULSEにしろAccessコントローラーにしろ、「PS5でもっと遊んでほしい」というコミュニケーションのつもりです。

例えばヘッドセット。

PS5は「Tempest 3Dオーディオ」を搭載し、立体感のある音響で楽しめることが重要な要素です。ヘッドフォンをして聴いた時の驚きは大きい。

別の言い方をすれば、PS5はPS3以来の「ゲームに必要な処理の中でも、オーディオにシステムリソースをふんだんに割り振れるゲーム機」なんです。

ローンチ時には、マーケティング素材として、製品が並んだ「ヒーローショット」などと呼ばれる象徴的な写真を用意します。それを見た時に「ここにヘッドセットがないのは許せないな」と思ってしまったんですよ。

PS5をローンチする際、「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」を発売しました。正直に言えば、これから出る新型のPULSEと違い、あの商品の中身自体は、PS4世代のものとそこまで大きな違いはありません。しかし、販売は非常に好調でした。PS5とともに訴求することで、PS4版の数倍の売り上げになりました。

PS5ローンチ時の「ヒーローショット」。当初はここにヘッドホンが並んでいなかったという
新型PS5のヒーローショット。PSVR2やPortalを含め、より多くの周辺機器が並ぶ

新型の「PULSE Exploreワイヤレスイヤホン」と「PLUSE Eliteワイヤレスヘッドセット」では、平面磁界型の「プレーナーマグネティックドライバー」を搭載している。

従来なら高級オーディオでの採用例が中心だったものだが、SIEは8月にAudeze社を買収し、製品に組み込むことになった。

これもまた「3Dオーディオ重視のPS5」でヘッドセットをアピールするための施策だという。

PLUSE Eliteワイヤレスヘッドセット

Portalという「説明型商品」を投入した理由

そうした視点で見ると、Portalも「PS5をより長く、濃く遊んでもらうための周辺機器」ということになるのだろう。

ただ、Portalはいわゆる携帯ゲーム機とは違う。PS5+無線LANとセットでなければ使えない「リモートプレイ専用機」という存在は、利用に一定のITリテラシーを必要とする。

PlayStation Portal。11月15日発売

西野:Portalがある種の「説明型商品」であることは理解しています。

一方で、「リビングルームのテレビ以外でPS5を遊びたい」というお客様は大勢いらっしゃいます。家族・子どもに見られたくないゲームコンテンツを遊びたい場合もあるでしょうし、テレビの前にいない時に遊びたい、ということもあります。

従来からあるリモートプレイは、あくまで「どなたかがお持ちのディスプレイにPlayStationのコントローラーをアタッチする」ものです。いずれもコントローラーは手に持つものの、ディスプレイの側は違う。一体型としてホールドするには、(周辺機器を別途使っても)体験として完璧ではないだろう、と思います。

また、PS5向けのゲームはテレビのような画面+コントローラーで遊ぶもの。小さな画面では見づらくなります。

そこで、画面がそれなりの大きさで、フルセットのコントローラーとともに持って遊べるものを作ろう……と考えたのがPortalです。視認性・画面サイズ・フルセットコントローラーのセットが大前提です。

遅延の軽減という意味もあります。リモートプレイではスマートフォンなどにBluetoothでコントローラーをつなぐのが基本ですが、Portalは内部での有線接続。ごくわずかなものですが、操作上のレイテンシーでは有利です。Wi-Fiのレイテンシーだけを考慮すればいいので、エンド to エンドでは一体化のメリットも大きいのです。

裏を返せば、昨今増えている、モバイル型のゲーミングPCを見て作ったわけではないです。あれらが世の中に出るずっと前から開発は始めていました。

Portalはいままでのリモートプレイと異なり、一体型であることに意味がある、という

すなわちPortalはやはり、すべてのPS5ユーザーが買うものではなく、一定層のニーズを満たすもの、ということになる。

西野:収益性という観点より、PS5で遊ぶ時間を増やしたい、ということです。どこでもプレイできるなら、確実にゲームする時間が伸びる方はいると考えます。

一方で、画面と人間の距離感、ビジュアルの課題にはまだまだ検討の余地があるし、いろいろな可能性があるとも思います。実際作ってみるといろんな学びがあるものです。

コンセプト的には「皆さんと一緒に考えたい」製品。お客様からのフィードバックを受け、学んでいきたいです。

クラウドゲーミングには「大事に取り組み続ける」

ここで1つ気になることがある。

PlayStation Networkの有料サービス「PlayStation Plus」では、最上位プランの「プレミアム」でストリーミングゲームを提供している。先日からPS5のゲームも対象となり、ダウンロードを待たずにプレイする……という選択肢が追加された。

「PlayStation Plus」の最上位プラン「プレミアム」には、ストリーミングゲーム(下線)の機能があるが、PCのウェブやスマホからも、Portalからも遊べない

しかし、PlayStation Plus・プレミアムのストリーミングゲームは「PSの中からだけ」のプレイに限定されている。クラウドからのストリーミングであれば、PCやスマホからでもプレイできて良さそうなものだ。事実、マイクロソフトの「Xbox Cloud Gaming」は、ブラウザさえあればどのデバイスからでも楽しめる。

しかし、PlayStation Plus・プレミアムのストリーミングゲームはPS5の中から遊ぶのが基本。Portalからもプレイできない。

これはどのような考え方に基づくものなのだろうか?

西野:PS5で実行しているゲームは「ある程度の画面とフルセットのコントローラー」があることが前提です。このクオリティが満たせない端末に提供するのは、顧客を欺くことになるのではないか、と考えています。

正直、機能のチェックマークをつけるのは簡単です。でもそれがいいのか、本当に何も問題なくプレイが提供できるのかを、慎重に検討しながら進めたいと思います。

Portalで言えば、リモートプレイとクラウドは「サーバーがどこかの違い」でしかなく、技術的な問題はなにもありません。まずはリモートプレイからはじめ、検証を進めていきます。

我々はクラウドゲーミングについて、(2012年に)Gaikaiを買収以来、大事に大事にやっているつもりです。

クラウドと感じないことが重要。転送がウェイティングで、切れてしまったら、お客様は二度とクラウドゲーミングを信じないでしょう。「クラウドゲーミングは使えませんでした」という言葉は受けたくないんです。

1回使ってみてOK、ではなく、持続的に遊んでいただくにはどうすべきか、ネットワーク接続を切らず、どうお客様に理解しながら使っていただけるか、という点が重要です。

全体につながる重要な要素として、西野氏は次のような条件があると話す。

西野:大事だと思っているのは、「PS5世代を他でフラグメントしない」ことだと思っています。

これは、リモートプレイもクラウドも同様です。

デベロッパーの方々へのお約束として、どの環境でも、PS5で作ったゲームが「そのまま」動くことが重要。

その中で幅広いニーズにどう応えていくか、ということです。

PS5世代では、従来以上に「プラットフォームが提供する機能のために、すでに出ているゲームなどの大幅な作り替えをしない」という選択をしているということだろう、と筆者は理解している。

PCとの差別化はどうなる? 重要な「コントローラー体験」とは

そこで少し気になることがある。

PS5は販売台数を見ると好調だが、これはずっと持続できるのだろうか?

この10年その傾向は強かったが、特にPS5世代以降、ゲームの多くは「PC市場」とともにある。ハイエンドなAAAゲームはPCを含めたマルチプラットフォームであり、インディ系ゲームはまずPCから生まれ、その後コンソールへと移植される。そこではPS5だけでなく、XboxもNintendo Switchへも展開されていく。

「ハイエンドなゲーミングPCを持っていればコンソールは不要」という人もいる。

ゲーミングPCとコンソールの関係を、西野氏はどうみているのだろうか?

西野:PCは色々カスタムし、満足にできるのがいいところかと思います。ただ、PCといってもビジネス用からゲーム用まで色々ありますし、動かす環境についての知識も、利用する方々によってまちまちです。

我々のいいところは「1つに定義されたデバイスで、最高の体験をお求めやすく、いかにシンプルに提供できるか」というところです。

そういう意味では「コントローラー」はとても重要な体験です。

PS5では、振動やトリガーへのフィードバック、3Dオーディオなど多数の要素を、コントローラーである「DualSense」に搭載している。それがPS5のアイデンティティの1つであり、名前にもそれが表れている。

西野:(PS3向けの)DUALSHOCK 3から(PS4)のDUALSHOCK 4になるときは、タッチパッドはついたものの、そこまで大きな変更はありませんでした。

しかしPS5では、メインの変化としてコントローラーを進化させたので「DualSense」と名前を変えたんです。

コンソールの体験は、ゲームのビジュアルだけでも音の体験だけでもなく「握りしめるコントローラーがある」ことが重要な接点です。我々の内部にもゲームスタジオがあるので、そこからアダプティブトリガーやハプティクスのニーズが出てきて、それを上手く実装できたと思っています。

Feel、すなわち感じるところは、コントローラーにしか達成できないもの。手というすばらしい感覚機器を活かすことは、没入感にとって重要な要素であり、「次世代」という言葉も、やっぱりインプットとアウトプットも含めた体験としたかったんです。

こう聞くと、Portalが「DualSenseをほぼそのまま搭載している」理由も納得がいくし、リモートプレイも基本的にDualSenseでの利用が前提である理由もわかる。

受け止め方は色々あるだろうが、少なくともSIEの主張として、「自らが設計したコントローラーを使い、差別化された体験をしてほしい」という点があり、それもまたPS5の差別化要因なのだ。

西野氏は「PS5は、あらゆるKPIにおいてPS4世代と変わってきたところがある」と話す。

西野:PS4からPS5への移行を推進していきたいですが、無理に4から5にするものでもないです。PS4と5の間には互換性がありますから、スムーズな移行が実現できる。一方、PS4の時代と比較すると、プレイ時間やプレイ頻度など、あらゆるKPIにおいて、PS4時代よりもプレイの体験が深い。エンゲージメントの観点では非常に好調といえます。

台数ももちろん重要だが、プレイ時間などの増加はSIEにとって収益の安定化にもつながる。

そうした没入度の高いプラットフォームの場合、仮に同じゲームが他のプラットフォーム(PCやスマホを含む)で提供されていたとしても、追加コンテンツや課金コンテンツを購入する比率は高まる。

「あくまで仮説ですが」と付け加えた上で、「そうしたプラットフォームとしてはコンソールの方が強いのではないか、という印象を持っている」と西野氏は説明する。

テレビから「個室のディスプレイ」へ。PS5でも見えてきた消費動向

利用者・ユーザーとの関係という意味で、興味深い話も得られたので、最後にご紹介しておこう。

PS5は当初から、リビングにあるような「4Kの大型テレビ」でプレイされることを念頭においていた。

だが、そこに少し変化が起きているようなのだ。

西野:もちろん、大型テレビがもっとも多く使われているデバイスであり、重要なのは間違いないのですが、PS5が「PC用のディスプレイ」につながっているパーセンテージが高くなっている現象は確認できています。20型・30型といったサイズが増加しているということなのですが、それはおそらく個室でディスプレイにつないでいる、ということでしょうね。

ハードウエアとしての「テレビ」の重要性はまだ残っているが、一方で、個室に置くのはテレビではなくPC用のディスプレイ……という傾向は拡大している。これは日本だけでなく世界的な傾向だ。

実はPS5も、発売当初は「1440p(2,560×1,440ドット)」に対応していなかった。1440pはPC向けであり、テレビを主軸としているPS5ではニーズが弱い……と考えられていたからだ。

だがユーザーからの声もあり、PS5もシステムソフトウエアアップデートで1440pに対応した。ここは、当初から1440p対応だったXbox Series Xの方が「状況が見えていた」ということかもしれない。まあどちらにしろ、現在は1440pが問題なく使えるようになっている。

そこで西野氏は興味深い指摘をする。

西野:PS5のゲームでも、4K+レイトレーシングを優先するのか60fpsを優先するのか、ということで「パフォーマンスモード」と「忠実度優先モード」などが用意される場合があります。1440pの場合「忠実度優先モード」でも60fpsになる場合があって、この解像度が現状でバランスの良いところである、とも言えるのかもしれません。

今のコンソールの場合、4Kは出力できるが、レイトレーシングも含めた全ての機能を活用して「60fps以上」を両立するのは難しい。PCで高価な最新GPUを使えば可能だが、そこはコストとのバランスの問題がある。

その中で「1440pのPCディスプレイ」というのは確かに1つの解ではある。

コンソールでもいつか(おそらく次のターゲットとして)4K・60fpsが常に出る環境が登場するのだろう。そしておそらくそれは、当面のグラフィック面での1つの到達点でもある。

現状、PS5を含めたハイエンドコンソールはその手前にいるが、PCもまた、全員が超ハイエンドGPUを使っているわけではない。

消費者の生活スタイルの変化に加え、今のディスプレイにおけるバランスの1つが垣間見えて興味深い。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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