小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第880回
めちゃめちゃ遊べる! DJI最少のジンバルカメラ「Osmo Pocket」
2018年12月12日 08:00
Osmoがさらに小さく
ドローンでお馴染みDJIが、ジンバルとカメラ部分だけを切り出して製品化したのが、2015年の「DJI Osmo」であった。その後、このOsmoの筐体とジンバル部を利用してスマホ用ジンバルとしたのが、2016年の「Osmo Mobile」である。
今年発売されたドローンの「Mavic 2」は、1/2.3型センサーで24~48mmの2倍光学ズームと、1型センサーの単焦点という、異なるカメラを搭載した2製品で登場した。これまでの流れからすれば、Mavic 2に搭載されたどちらかのカメラが、新Osmoとして切り出される可能性は非常に高かった。
だが今回登場したOsmo Pocketは、ある意味その予想を裏切るものであった。カメラがMavic 2のものではなく、全くオリジナルのカメラを搭載した、手のひらサイズのミニジンバル製品としてリリースされたのだ。発売日は12月15日で、DJI公式ストア価格は44,900円(税込)。
大がかりな製品発表イベントが行なわれたので、すでに簡単なレビューはご覧になったことだろう。今回は一般発売を前にじっくり触る機会に恵まれたので、Osmo Pocketの性能をテストしてみよう。
さすがの作りに脱帽
まずボディだが、全長約122mmと、従来のカメラ用ジンバルからすれば破格に小さい。これまで小型ジンバルといえば、GoProを載せるタイプが主流だったが、カメラ部が小さいので、ジンバル部もボディ部もさらに小さくなっている。通常はカメラ部に搭載されているモニターをボディ内に移した点も、専用機ならではである。
カメラスペックを見ていこう。画角は80度で、35mm換算だと26mm相当となる。レンズは光学ズームなしのF2.0だ。センサーは1/2.3インチCMOSで、有効画素数は12Mピクセルとなっている。Mavic 2 Zoomのカメラスペックと比較すると、以下のようになる。
こうして比較すると、Mavic 2 Zoomとセンサースペックはかなり近い。レンズをズームではなく単焦点の明るいレンズにした、と考えるのが妥当だろう。フレームレートでは、4K/60pに対応した点が新しい。その代わり、2.7Kの撮影機能が落とされている。
ジンバルの角度は、Osmo Pocketのパンの角度に偏りがある。これは、モーター的にはボディ右側が正面として設計されているからだ。またMavicにはなかったロール軸が加わっている。
ボディは長方体で、グリップとしては変わっているが、重量が116gしかないので、つまんで持てるほどだ。モニターは20×18mmのほぼ正方形で、タッチ式。視野角が広く、横から覗き込んでも反転がないので、使いやすい。
UIとしては、上から下になぞることで設定画面、左から右になぞると再生画面、右から左になぞると撮影モード変更、下から上になぞるとジンバル動作設定画面となる。
ボタンは2つで、左が録画ボタン、右ボタンの長押しで電源入切ができる。右ボタンは1度押すと静止画と動画の撮影モード切り換え、2度押しでジンバルがセンターに戻る、3度押しでセルフィーモードとなる。このあたりは以前のOsmoとだいたい同じだ。
画面とボタンの間には接点端子があり、付属のスマートフォンアダプタをスライドインさせる。本体にはLightningとUSB-Cが付属する。
ボディ左側にmicroSDカードスロット、底部にUSB-Cの充電端子がある。本体での防水機能はなく、別途防水用のハウジングが必要だ。
アクセサリ類も多数案内されているが、執筆時点ではまだ購入できないようである。本体の発売に合わせて、徐々にオーダーできるようになるだろう。本体にはさきほどのスマートフォンアダプタと充電用ケーブル、ソフトケースが付属する。
軽快に撮影できる
では早速撮影してみよう。本体の電源を入れると、カメラ部が上下左右に素早く動き、キャリブレーションを行なう。カメラヘッドが正面を向いたら、撮影準備完了だ。
撮影モードは、写真、スローモーション、タイムラプス、パノラマの4種類だ。まずは画角からチェックしてみよう。
レンズ画角は80度とあるが、これは静止画の画角であろう。動画になると、多少画角が狭くなるが、それほど大きな違いではない。タイムラプスは静止画の連番を撮影するので、画角は動画と同じだが、ガンマカーブは静止画と同じである。
パノラマには、180度と3×3の2モードがある。180度は横方向にジンバルが動き、4枚の写真を撮影して1枚に合成する。3×3はその名の通り、3列3行の9枚を撮影し、自動で合成する。
スローモーションでは、センサー読み出し範囲が狭くなる。35mmカメラと画角を比較すると、35mm換算で約50mm程度となる。
続いてスタビライズ効果を見てみよう。さすが小さくてもジンバルなだけあって、補正力はかなり強い。だが本体の軽さゆえに歩行による縦揺れまでは吸収できず、“歩いてます感”はそれなりに出る。以前Osmo用として、縦方向のショックアブソーバとして「Osmo Z-Axis」というオプションパーツが販売されたことがあるが、現在は生産中止となっている。優秀な機構だったが、ちょっと見た目にも大げさ過ぎたのだろう。
また本体だけでも、オートトラッキング機能が利用できる。人物などを撮影する場合、必ず被写体のほうを向くので、面白い使い方ができるだろう。ただし4K/60p撮影時のみ、オートトラッキングは動作しないので注意して欲しい。
本体ディスプレイの右側に触れると、操作バーが表示され、チルト操作ができる。パンは本体のみではできない。スマホと接続し、アプリを使って撮影すると、アプリ内のスティックアイコンでパン/チルト操作が可能だ。
前面、背面と撮影してみたが、気になるのがマイクの位置だ。モニター側にマイク穴があるので、撮影者の声はよく拾うが、前方の音は入りにくい。人のしゃべりを撮影する際は、別途マイクアクセサリが必要になるだろう。
クオリティの高い特殊撮影
続いて特殊撮影を見ていこう。スロー撮影は、4倍速固定となる。画角が狭くなるのが難点ではあるが、普通にカメラだけ持って撮影するのに比べたら、破格に揺れが押さえられており、ハンディでも良好な撮影ができる。ただ、本体のモニターでは小さすぎて被写体が捉えられているのかよくわからない。別途スマートフォンを繋いでモニター代わりにしたほうがいいだろう。
タイムラプス撮影は多くのカメラに搭載されているが、ジンバル搭載のメリットはゆっくり動く動作を設定できることだ。例えば30分かけてゆっくり2点間をパンするといった撮影も可能になる。
撮影ポイントの設定方法は斬新で、ポイント指定モードに入ったら、ジンバルのカメラ部を手で動かして画角を決めるというスタイルだ。ジンバル部はモーターが入っているので、普通は手で触らないものだが、このモードの時はモーター角を記憶させることで、ポジションを覚えるようだ。
タイムラプスを撮影するには本体を固定する必要があるが、本体には三脚穴もなにもないので固定するのは大変だ。オプション品の「アクセサリーマウント」にネジ穴はなく、GoPro用マウントに固定するためのアクセサリのようだ。そのため、さらに別途「アクセサリーマウントを固定するためのアクセサリ」が必要になる。
「ワイヤレスモジュール」はスマホを無線で連携するためのもの。自立するよう、台座っぽい作りにはなっているが、底部に三脚穴があるかどうかは不明だ。三脚穴があるのは延長ロッド。これにはジンバルを操作するスティックも備えている。
DJI製品は、スマートフォンと接続して拡張モニターとして使用できるのが一つのポイントとなっている。Osmo Pocket用のアプリとして、「DJI MIMO」というアプリが間もなく公開されるはずだ。
スマートフォンとカメラを接続すると、スマートフォンが拡張モニターとして利用できるだけでなく、本体ではできなかった撮影も可能になる。その代表例が、「Story」という撮影効果だ。現在10パターンのプリセットが提供されている。
これは、アプリで指定された秒数をクリップ撮影していくだけで、かっこいいエフェクトを加えて自動編集してくれるという機能である。
画面内の「開始」をタップすると、撮影画面に戻る。規定秒数を撮影すると、次のカット撮影画面に移行する、という格好だ。今のは失敗したなと思えば、撮り直しもできる。カメラアクションでカットの間を繋いでいるわけだが、これはエフェクトでそう見せているではなく、実際にジンバルがさっと動いて撮影しているので、画質的にも良好だ。
最終的には、DJIのコミュニケーションサイトに投稿するための画面まで到達する。そこでそのままシェアしてもいいし、ローカルに保存だけしてモードから抜けることもできる。
「DJI MIMO」は撮影をサポートするだけでなく、編集機能も提供されている。トリムやトランジションだけでなく、フィルターによる映像加工やテロップ、音楽挿入機能まで揃っている。
簡単なクリップを作るなら十分な機能がある。Storyと違って最後にDJIロゴが入らないので、パーソナルなコンテンツを作るならこちらの編集機能を使うといいだろう。
総論
単体で撮影できる機能としては、「小型だけど普通のジンバルカメラ」に留まるが、スマホと組み合わせたStory撮影や編集機能により、多くの機能が実現できる。このようにハードとソフト両方を組み合わせて撮影体験を向上させることに成功しているのは、今のところDJIとInsta360ぐらいではないだろうか。
その点では、両方の開発力が揃った中国勢のカメラは、まったく侮れない。高画質や味で勝負の国産カメラメーカーとは、まったくアプローチの仕方が違っている。それぞれが別の顧客層を狙っているので、どちらも正しいということにはなるが、勢いやスピード感という点では、上記2社は一番熱いカメラメーカーと言えるのではないだろうか。
スマホジンバルの新型、Osmo Mobile 2が現在公式ストア13,500円(税込)で買える中、小型カメラに44,900円(税込)は高いか安いか意見が分かれるところではある。だがこの手軽さ+スマホはスマホで別に使いたいというならば、Osmo Pocketか、GoProとジンバルを別々に購入するか、ということになる。そう考えると、44,900円はそれほど高くは感じない。
自分へのクリスマスのご褒美に、欲しいものがまた一つ積み上がった感じである。