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ついに公開「アバター2」。リアルすぎる映像に脳みそバグった

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
12月16日(金)全国劇場公開 ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映像を観て、これほどワクワクさせられたのは何年ぶりだろう? ジェームズ・キャメロン監督の最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(アバターWOW)』が描く異次元の映像と驚異のリアリティに、正直脳みそがバグった。

ストーリーは賛否両論あるだろうが、映像は紛れもなく、技術の粋を集めた“最高到達点”であり、おそらくこのクオリティは、2年後の公開を見込む『アバター3(仮)』まで、更新できる映画は現れないだろう。

前作『アバター』は3Dブームに火をつけ、テレビをはじめとしたAV機器で3D対応を加速させたが、『アバターWOW』の反響次第では、近年下火だった3Dに再び注目が集まり、VR機器やヘッドセット、プロジェクターを中心に、3D映像が楽しめる製品がまた増えてくるかもしれない。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

3D映画も、HFR映画も本当に苦手だった

いまだから白状するが、実は筆者は3D映画も、そしてHFR(ハイフレームレート)映画も、本当に苦手だった。

劇場で鑑賞して違和感を感じなかった3D映画は『アバター』など、片手で数える程度。その他、ほとんどの3D映画は個人的には全く効果的と思わなかった。その多くが、キャラクターやセットが切り抜かれたかのような“書き割り”にしか見えなかったし、手前に飛び出るようなあからさまな演出にはうんざりした。「2Dの方が、よっぽど自然で立体的に見えるんですけど」と感じることの方が多かったのだ。

中でも個人的に興ざめしていたのが、上下の黒帯部分に映像が飛び出る“フレームブレイク”。映画というよりも、テーマパークのアトラクション映像を見せられている気分で、どうしてこんな演出をするのか理解できなかった。余計なことはしないで黙って映像を見せてくれ、というのが本音だった。

HFRも映画には不要と思っていた。48fps撮影だった『ホビット』も、120fps撮影だった『ジェミニマン』も、まるでB級ドラマのような雰囲気で、丁寧に作り込まれているであろう登場人物たちの衣装や周囲のセットがチープなニセモノにしか見えない。

『ジェミニマン』の120fps映像は、周辺の動きまでカメラでつぶさにキャプチャされるが故、疲れ始めたエキストラの様子まで見えてしまって、ただただ鑑賞のノイズ。“水の表現”以外、HFRの利点を見いだせなかった。だから「キャメロン監督は、アバター新作を3D/HFRで撮っているらしい」と聞いた時は正直卒倒した。

『アバター:3Dリマスター』で3D/HFRに開眼。ネイティリに恋する

『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

しかし、今年9月に限定上映された『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』(3Dリマスター)は、3DとHFRに対して抱いていた筆者の考えを、180度ひっくり返すものだった。

惑星パンドラやナヴィ、資源開発公社RDAのマシーンが高精細かつ色鮮やかに生まれ変わっていて、その半端ないリマスターの仕上がりにも驚いたが、しかしそれ以上に衝撃を受けたのが、HFRの使い方と3Dの見え方だ。

『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

HFRは全編通しではなく、あくまで、登場人物やクリーチャーが走ったり、カメラが激しく動くカットでのみ使用されていた。具体的には、ジェイクがサナターから逃亡するシーンやネイティリがジェイクを救出する場面、イクランの飛翔、ドラゴン・シップの出撃、クライマックスの戦闘などで、48fpsによって、3D鑑賞にありがちな“見難さ”が明らかに払拭されていた。

もちろん、通常シーン(人間同士の会話、基地牢屋からの脱出など)は24fpsのため、映画らしさはそのままにチープさは感じない。しかも24fpsの映像ブレがなくなることで、クリーチャーのディテールをハッキリと捉えられるようになり、48fpsのカットでは解像感が増して見えた。

『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

いやいやこのままHFRに騙されてはなるまいと、ドルビーシネマを鑑賞後、IMAXレーザー/GTテクノロジーで念のため24fps版を試したが、ジェイクがサナターから逃亡するシーンでは映像が完全に崩壊。24fps版は何が起きているのか判別できない程の2重像の嵐で、画面が大きい分、疲労感もすさまじかった。

結局筆者は、あれほど苦手だった3D/HFR映画の『リマスター3D』を5回鑑賞。ネイティリにも恋をし、キャメロン監督がなぜHFRを採用したのか、HFRが3Dにとっていかに効果的か、恥ずかしながらこの時ようやく理解した。

とにかくすごいよキャメロン。目も心も奪われ、リアルネイティリで脳バグる

16日から公開が始まった最新作の『アバターWOW』は、ジェームズ・キャメロンが13年間心血を注いだ意欲作だ。事実、これまで目にした3D、CG映像をあらゆる面で凌駕するド級の作品に仕上がっている。

従来のCGを安っぽい偽物と言わんばかりに、ありとあらゆるものが生々しく、地球上では見ることができない美しい景色と色彩に彩られた“超現実”が、3時間10分に渡って展開される。映画のキャッチコピーは「奪われるのは 目か、心か。」だが、あまりの映像の美しさに、筆者は目も心も奪われた。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

前作でトライした3D撮影や、身体・表情を読み取るパフォーマンスキャプチャーも目覚ましい進化を遂げている。アバターの3Dは、手前に飛び出すのではなく、奥へ奥へとオブジェクトを配置して奥行きを出すタイプだが、本作ほど3Dのデメリットを感じさせない映画は観たことがない。

アバターやナヴィ達の顔の描写も更に豊かになった。子供たちが見せる笑顔や拗ねた顔、ネイティリの不安や悲しみ、怒りといった表情の変化が、完璧に再現されている。あまりのそのリアルさに「ネイティリが現実にいてキャメロンが撮影しているわけでもなく、ゾーイ・サルダナが全身青いペイントをしてネイティリを演じているわけでもなく、これは全部CGなんだよな」と、脳みそがバグる。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

そして何より、『アバターWOW』最大のハイライトが、中盤以降に登場する“水”だ。

HFRとHDRは、水とのマッチングが最高で、水が流れる様子や波しぶき、水面の反射・光沢感、水面の揺らぎなど、すべてがリアルに描かれる。水中でのキャラクターの動きも、完全に再現されており、水泳・ダイビング経験のある筆者からみても不自然さがまるで感じられない。

ナヴィがスキューバダイビングするシーンや、水中生物との遊泳、トゥルクンがブリーチングする様子、トゥルクンをハンティングする際の追跡など、すべてが現実と見紛う描写。ダイバーでもあるキャメロン監督ならではの業が炸裂している。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

水のリアルな再現に関しては、今回初めて採用された立体音響も一役買っている。

水中にドブンッと頭まで潜った時に感じる水圧や、口からポコポコボコボコと漏れて上がっていく気泡の音、水中で反響する動物の甲高い鳴き声、水面に頭を出した時に耳元で聞こえる波音や頭にかぶる波など、劇場のハイトスピーカーがフル活用されている。

ネタばれになるため詳細は書かないが、クライマックスのパートは特にサウンドが縦横無尽に飛び回るため、「パッケージ化されたら、Atmos環境のAVファンは鳴らしがいがあるだろうな」と感じる。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

本作で唯一残念だったのは、『エイリアン2』や『タイタニック』、『アバター』と、これまでキャメロン監督と共に仕事をしてきた映画音楽作曲家ジェームズ・ホーナーの不在だ。叶わぬ夢だが、ホーナーの美しくエモーショナルなメロディと、猛り狂った“尺八カンカンズンドコ節”が『アバターWOW』でも聞きたかった。

理想は「ドルシネ」「IMAXレーザー」。ダメなら「3D×HFR」「立体音響」

AVファンが悩んでいるのは「『アバターWOW』をどこで観るか?」ということだろう。

御承知の通り本作は、4K×HDR×3D×HFR×立体音響と、今考えられうる最新の映像と音の技術が、ハイクオリティで“全部乗せ”されている。しかも、この“全部乗せ”を家庭で再現するための規格も製品も現状存在しない。つまり『アバターWOW』は、絶対に映画館で観るしかない。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

結論から言えば、ベストは「ドルビーシネマ」と「IMAXレーザー」。次点は「3D×HFR」と「立体音響」の上映を実施する映画館だ。

まず、ベストに挙げた「ドルビーシネマ」は“全部乗せ”が体感できる唯一の施設。丸の内ピカデリーで鑑賞(フラット)したが、最暗部の沈み込みと明部のピークが生む強いコントラストと、濃厚かつ鮮やかな色彩のHDR映像は、他のフォーマットでは味わえない。

「丸の内ピカデリー」「新宿バルト9」(東京)、「MOVIXさいたま」(埼玉)、「T・ジョイ」(横浜)、「ミッドランドスクエアシネマ」(名古屋)、「梅田ブルク7」(大阪)、「MOVIX京都」(京都)、「T・ジョイ博多」(福岡)の全国8カ所に限られるが、もし行けるならば、絶対に体感するべきだ。

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そしてもう1つのベストが「IMAXレーザー」。4K×3D×HFR×立体音響という組み合わせになるため、ナヴィの光る斑点やスピリットツリーなどのHDR感や彩度は多少タンパクになるが、ひと際大きなスクリーンとヌケのいい映像は、ドルビーシネマに引けを取っていない。

IMAXレーザー館は、TOHOシネマズ(日比谷、新宿、流山おおたかの森、西宮OS)、イオンシネマ(四条畷、市川妙典)、ユナイテッド・シネマ(札幌、浦和、テラスモール松戸、としまえん、キャナルシティ13、PARCO CITY 浦添)、109シネマズ(菖蒲、木場、二子玉川、グランベリーパーク、川崎、湘南、名古屋)、シネマサンシャイン(ららぽーと沼津、大和郡山)の21カ所で、こちらもエリアが限られてしまうが、是非AVファンは足を運んでみてほしい。

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もしドルビーシネマもIMAXレーザーも最寄りにない、という場合は、次点に挙げた「3D×HFR」と「立体音響」(34カ所のAtmos館)の映画館がおススメだ。できればセットが好ましいが、難しい場合は「3D×HFR」の映画館で鑑賞するだけでも、今までに体感したことのない映像が味わえるはずだ。

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阿部邦弘