西川善司の大画面☆マニア

第263回

PS5/Xboxにマッチする、HDMI2.1対応ゲーミングモニターの選び方

最新ゲームを最良の状態でプレイするには、HDMI2.1対応ディスプレイが必要だ

2020年末に新世代ゲーム機として発売された「PlayStation 5」と「Xbox Series X/S」。これらゲーム機では、HDMI2.1対応がアナウンスされている。PCにおいても、'20年末から'21年前半にかけて発売されたNVIDIAの「GeForce RTX 30」シリーズ、そしてAMDの「RADEON RX 6000」シリーズもHDMI2.1をサポートした。いま最新ゲームを最良の状態でプレイするには、HDMI2.1対応のディスプレイ(モニター)が求められる状況になりつつある。

PlayStation 5
Xbox Series S(写真左)、Xbox Series X(右)
GIGABYTE「GV-N3090EAGLE-24GD」
ASUS「TUF-RX6900XT-O16G-GAMING」

実は昨年11月、「プレステ5対応テレビの正しい選び方。キーワードは4K/120p、VRR」(記事参照)と題し、新世代ゲーム機時代を見据えたテレビ購入ガイドを寄稿したが、先日編集部から「ゲーミングディスプレイの購入ガイドを書いて欲しい」とのオファーを受けた。

というわけで今回は、現在発表されているゲーミングディスプレイの情報をまとめると共に、購入時のポイントや選び方を紹介していこうと思う。また後半には、HDMI2.1対応テレビの最新状況も記載した。昨年のテレビ購入ガイドとやや重なる部分はあるが、改めてお付き合い頂ければ幸いだ。

あらためて総復習~HDMI2.1とは何か。その誕生経緯

今や、ブルーレイ機器、ゲーム機、パソコンに留まらず、デジカメやカーナビに至るまでがHDMI端子を搭載している。

HDMIが普及したのは、2005年前後あたりから。家庭用ゲーム機として最初にHDMIを標準装備したのは、ソニーのPS3だった。PS3で採用したのはHDMI1.3。伝送速度にして最大10.2Gbpsの帯域があった。ただ、PS3のHDMIは、HDMI1.4で規格化された3D映像出力にシステムアップデートで対応するなど、かなり将来性の高い柔軟な実装となっていた。

PlayStation 3

PS4では、これがHDMI1.4へと進化。最大伝送速度は10.2Gbpsのままだが、広域な周辺機器への連携対応が行なわれ、AVアンプなどへの接続利便性を向上した「オーディオリターンチャンネル」(ARC)、HDMIのデータ伝送チャンネルをLAN接続に転用するHECなどが盛り込まれた。

PCやAV機器では、HDMI1.4の帯域範囲(10.2Gbps)で、4K(3,840×2,160ピクセル)解像度を伝送する応用事例も見られた。ちなみに、10.2Gbpsの範囲内での4K伝送は、RGB888あるいはYUV444の色深度で30fps、YUV420まで色解像度を落とせば60fpsの伝送が可能だ。

2015年以降、HDMI2.0が一気に普及機へと広まる。背景には4Kテレビの普及、4K Ultra HD Blu-ray(UHD BD)の登場、PS4 Proの発売といった事象が強く影響した。

2015年11月に発売した、世界初Ultra HD Blu-ray再生に対応したパナソニックレコーダー「DMR-UBZ1」
2016年6月に発売した「マッドマックス 怒りのデス・ロード <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>」

HDMI2.0では、あらゆる色深度モードで4K/60fps伝送が行なえるよう、最大伝送帯域が18Gbpsへと高められた。UHD BDの誕生とともに規格されたハイダイナミックレンジ(HDR)映像のサポートも、このHDMI2.0で規格化された。

2016年には、4K/HDR対応ゲーム機としてPS4 Proが登場。この時も、従来型PS4に対してHDMI1.4のままHDRに対応する特別なファームウェアのアップデートが提供されている(ただし4Kは未対応)。

PlayStation 4
Xbox One X

HDMI2.1規格は2017年に誕生するも、トランスミッターやレシーバーのチップ開発と普及が遅れ、事実上の普及期は2020年前後からだ。

登場の契機となったのは、8K(7,680×4,320ピクセル)テレビの発売。従来のHDMIの伝送方式のまま8K/60fpsに対応させると、計算上は72Gbpsの伝送帯域が必要になる。しかしこれは、現状のHDMI規格の伝送方式では実現不可能と判断された。

結果、HDMI2.1は“物理的なHDMI端子”規格だけを流用しながらも、各端子の機能割り当てや電気信号特性など、ほとんど全てを刷新し(詳細は後述)、「もはやこれをHDMIと呼んでいいのか」というくらいの仕様変更を行なった。

しかし端子形状が同じなのに「繋げても使えない」では、ユーザーが不便に感じてしまう。そこでHDMI2.1では、トランスミッターやレシーバーのチップにバージョン違いを認識して動作モードを切り換える“賢さ”を与えて互換性を維持することにした。

ちなみに、インターフェースチップにこうした“適応型の賢さ”を与えることで、バージョンごとに全く技術基盤の違うデータ伝送方式を採用しながらも、手堅い互換性を維持している身近な規格がBluetoothである。

で、このHDMI2.1。

とても頑張って規格化されたのだが、最大伝送帯域は48Gbps止まりだった。要求された8K/60fps伝送に必要な72Gbpsは達成されなかったことになる。

そこで、DSC(Display Stream Compression)と呼ばれる、ライセンスフリーのリアルタイム非可逆圧縮技術を導入することで8K/60fpsに対応させることにした(8Kの24fps、30fpsであればDSC圧縮せずに伝送可能)。しかし非可逆アルゴリズムゆえ、このDSC圧縮によって画質は劣化してしまう。ついにHDMIは、バージョン2.1にして「デジタル伝送なのに画質劣化を許容する規格」となったワケだ。

HDMIで規定されている解像度・フレームレートを記した一覧。「Speed」の欄が、伝送可能なHDMIケーブルを指している。“赤字でUltra”となっているのが、圧縮伝送しなければ伝送できない信号。8K/60fps 4:2:2 10bitや、8K/120fps 4:2:0 10bitなどがこれに該当する

現状、ゲーム業界においては、8K/60fpsには関心が薄い。8K/60fpsを安定して描画できるGPUが今のところ普及していないし、8K/60fps映像を表示できるディスプレイもそれほど普及していない等の理由があるためだ。

8Kのグラフィックスを60fpsで安定的に描画するのは、PS5では全く無理。超ウルトラハイエンドGPUならば不可能ではないが、それでも敷居が高すぎる。8Kテレビ自体は価格が下がってきたが、8K放送はNHKのBS8Kのみで、8K環境導入の魅力が薄く、訴求力が足りないのだ。

その一方で、HDMI2.1で可能となる「4K/120fps」は、リアリティをもってゲームへの対応が考えられている。

たとえば10TFLOPSクラスのGPUを搭載するPS5、Xbox Series Xの場合、グラフィックス品質がそれほど高くないことが許容されるeSports系ゲームであれば、4K/120fpsの実現が十分視野に入る。またPCゲーミングでは、20TFLOPSオーバーのハイエンドクラスのGPUであれば、かなり高品位なグラフィック品質でも4K/120fpsが実現出来るようになりつつある。

4K/120fpsの伝送には計算上、36Gbpsほどの帯域が必要になるのだが、これはHDMI2.1の最大伝送帯域の48Gbps内でカバーできるため、前述したDSC圧縮を用いずに伝送できる。

4K/120fpsの場合、4:4:4 12bitまでは非圧縮で伝送できる

そうそう。前回の記事でも「念のために書いておくか」程度で触れたつもりだった「4K/120fps入力対応は倍速駆動対応とは別モノ」という注意喚起。けっこう、初心者の間では衝撃だったようだ。

中堅機以上のテレビでは「倍速駆動対応」(機種によってはフレーム補間機能と呼称されている場合もあり)という文句がスペック表やカタログに記載されているが、これは「4K/120fps入力対応」とは全く異なる機能なので注意したい。

「倍速駆動対応」のテレビは、入力された60fps映像を映像エンジンが不足している中間フレームを算術的に補間生成して120fps化して表示する機能であり、ゲーム機やPC側で120fps出力された映像をそのまま表示する「4K/120fps入力対応」とは全然別モノ。改めて注意しておきたい。

ソニー・ブラビアでの「倍速駆動」説明図。テレビで倍速駆動を行なう場合、同じコマを複数回表示、もしくは補間コマを挿入するのが一般的。こうした倍速機能と「4K/120fps入力対応」とは全く別モノなので注意

このような流れもあり、いまゲーミングディスプレイを購入検討するなら、「4K/120fps入力できるHDMI2.1対応ディスプレイを選びたい」という、ユーザー心理が強まっているのである。

ゲームに関係するHDMI2.1機能を総ざらい

確かに、これからゲーミングディスプレイを選ぶなら「HDMI2.1対応」が、最も明解な要件にはなると思う。しかしHDMI2.1には、最大伝送帯域48Gbps、4K/120fps対応、DSC活用で8K/60fps対応(実際には120fpsまでOK)といった機能以外にも、ゲームユーザーには気になる機能がある。

その機能を改めて振り返っておこう。

ALLM:ディスプレイがゲームモードに自動で切り替わる機能

HDMI2.1がサポートする機能のうち、ゲームファンに響きやすい機能に「Auto Low Latency Mode」(ALLM)がある。ゲーム機が出力する「ゲーム映像」を、ディスプレイが認識すると、自動的に「低遅延モード」にしてくれる機能だ。

ここでいう“遅延”とは、映像パネルの応答速度ではなく、表示映像が映像パネルに出力されるまでの“入力遅延”のこと。テレビなどの高画質エンジンが搭載されたディスプレイ機器では、画像処理に時間がかかり、画面に表示されるゲーム映像は、ゲーム機側が出力している映像と比較して数フレーム前の状態を表示している場合がある。

1:ゲーム機側が映像を出力
2:ゲーム機側では、プレーヤーキャラクターは既に攻撃を食らっている
3:回避操作をした時点で、プレーヤーキャラクターはダメージを受けていた。表示遅延が大きいと最速で反応してプレイしても間に合わない状況が出てくる

ゲームプレイにおいて、入力遅延はゲームの勝ち負け、楽しさに直結する要素なので、このALLMは確かに重要な機能だ。しかし、ゲーム機をディスプレイの特定のHDMI端子……たとえばHDMI 3にいつも接続しているならば、手動で「HDMI 3を低遅延モードにする(≒ゲームモードに設定する)」としてしまえば、ALLMはなくても困らないとする意見もある。

まあメーカー側も、すでに低遅延モードを実装/搭載したディスプレイをリリースしていれば、次期モデル等でALLM機能を実装することは難しいことではないだろう。実際、現在リリースされているHDMI2.1対応ディスプレイ(特にテレビ)では、ほとんどの機種がALLM対応となっている。

パナソニック・ビエラのALLM設定画面

VRR:フレームレートが変動しても滑らかに表示する機能

ゲームファンは、「Variable Refresh Rate」(VRR)もチェックしておきたい機能。

ブラウン管時代からずっと映像は、60fps(秒間60フィールド)の固定フレームレートで伝送することが当たり前になっていた。これは、(ブラウン管時代にとっては)高速な電気信号のやりとりを、送信側と受信側の都合を伺いながら(ネゴシエーションしながら)行なうことが当時は困難だったこと、そして固定フレームレート伝送で大きな不都合がなかったこと等が原因だ。

ところが、ゲームというメディアにとって、この固定フレームレートは、都合が悪い局面が多い。

描画処理が軽いフレームが続けば60fpsを維持、あるいはそれを上回れるが、描画処理が重いと60fpsを下回る場合がある。すると、60fps前提の表示システムで映像を表示すると、テアリングやスタッターといったエラーが発生する。

ゲーム映像を表示中、60fps周期の表示タイミングを待たずに映像が届いた瞬間から上書き表示を行なう(=Vsync無効表示)と、これまで表示していた映像と、新しく表示しようとする映像が、画面上のランダムな位置で上下にそれぞれ表示される。動きの大きい映像の場合、ランダムな境界線の上下で映像がずれたような表示となる(テアリング現象)
テアリングの見た目のイメージ
新たに伝送された映像を、60fps表示間隔の次のタイミングまで待ってから表示(=Vsync垂直同期待ち表示)した場合、テアリング現象は避けられる。しかしこの場合、映像が伝送されてから表示されるまで、ランダムな「待ち」(遅延)が発生する。動画として見た時、「カク付き」を知覚させてしまう(スタッター現象)

こうしたエラーを改善すべく立ち上がったのが、GPUメーカーでお馴染みのNVIDIA。可変フレームレートを表示する仕組みを「G-SYNC」として2013年に発表。2014年にはライバルのAMDが、G-SYNCと同様の可変フレームレート表示「FreeSync」を発表した。

専用ハードウェアが必要なNVIDIA G-SYNCと比べ、AMD FreeSyncは、従来の映像伝送の枠組みを少しいじるだけで実現が可能だったため、発表同年の2014年、早々と映像技術標準化団体のVESAに標準規格「AdaptiveSync」として採用された。

このAdaptiveSyncをベースに、HDMI2.1規格に採用されたのが、前述のVRRだ。

ゲーム機とGPU側の対応が必要だが、HDMIのVRR機能はHDMI2.1対応のディスプレイでなくても、AdaptiveSync/FreeSyncに対応した製品であれば利用できる可能性が高い。実際、VRR対応製品は、AdaptiveSync/FreeSync対応も謳っている場合が多い。

VRRは、例えばフレームレートが40fpsや90fps、あるいは90fps~120fpsに変動するゲームにおいて、滑らかな表示となるので、ゲームファンは重視したい機能だ。

VRRのイメージ(HDMI資料より)

HDRとWCG:現実世界のような明暗描写と豊かな色表現

HDMI2.0からサポートされた機能ではあるが、今後ゲーミングディスプレイを購入する人は、HDR(High Dynamic Range)とWCG(Wide Color Gamut)についても気にするべきだろう。

HDRは、映像中の明暗表現(要するにコントラスト表現)を、なるべく現実世界に近づけようとする仕組みのこと。WCGは、従来の色表現よりも、豊かな色表現を可能にする仕組みだ。

SDRゲーム映像(左)とHDRゲーム映像のイメージ。HDR光源を用いたHDRレンダリングでは、右のように埋もれた陰影が見えるようになる。「Half-Life 2: Lost Coast」(Valve,2005)より

HDRは、UHD BD誕生と共に規格化。PS4 ProやXbox One Xの発売と前後して、ゲーム映像にも対応が進められた。

HDR登場以前の映像は、100ニットの最大輝度の範囲でコントラストが設計され、これをわずか8ビットの階調表現に割り当てていた。そして、その映像を各ディスプレイ/テレビが各映像エンジンで独自解釈し、コントラストの拡張を行なって表示していた。

対して、HDR映像は、映像制作段階から規格上、最大1万ニットの範囲でコントラストを設計でき、さらに10ビット階調に割り当てることが出来る(HDR10規格の場合)。

ゲームにおいても、HDRの効果は大きい。これまでの非HDR映像(SDR)では、電球に照らされた机の最明部と、窓の外の空の雲の白色が同じ8ビットの最大値255に飽和させられていたものが、HDRになると明確な輝度差で表現できる。屋内シーンと屋外シーンの表現力に、絶大な違いが生み出せるわけだ。

ゲームビジネスにおいては、ライバル関係にあるソニーとマイクロソフトだが、両者は共同で、ゲーム映像のHDR表現に関しての取り扱いガイドラインを策定するワーキンググループ「HDR Gaming Interest Group」を2018年発足した。このガイドラインに従って制作されたHDRゲーム映像は、「プレイしやすさ」と「HDR映像の美しさ」が担保される。加えて、同一タイトルであればPlayStation系、Xbox系、どちらのハードで動かしても、ほぼ同一のHDR効果が得られる

WCGは、BT.2020色空間と呼ばれる、現実世界に存在する99%の色を再現できる仕組みのこと。これまで広く使われてきたsRGB(≒BT.709)色空間では、現実世界の色の約58%程度しか再現できなかった。

WCGは輝度・色空間の拡張により、色の情報量が格段に増える

国民的レーシングゲームの「グランーツリスモ」シリーズでは、早くから登場車種の制作において、ボディカラーなどをフルスペクトル測色機で取得しているが、測定された色をそのまま画面に出すと、実車の発色と全く異なるものになってしまうことがよくあるという。

その要因は色々あるが、根本的な理由は、現行のディスプレイの多くが現実世界の色をそのまま再現できないことにある。現行のハイエンドWCG対応機でも、BT.2020色空間の再現率は80%~90%前後と色域をフルカバーできていない。

それでも、広い色空間を取り扱えるメリットは大きいし、優秀なディスプレイであれば、出せない色を(正しく出せないにしても)最も近い色へ変換して表示できるので、従来よりも美しく正確な色は出せることにはなる。

実世界の輝度を数値で表した例(Dolby資料より)

HDR/WCGの対応度については、VESAが「DisplayHDR」と呼ぶ指標を打ち出し、下表のようなランク付けを行なっている。

DisplayHDRを訴求するテレビは少ないが、有名メーカーのゲーミングディスプレイでは、精力的にDisplayHDRの指標をアピールしているものが多い。

基本的に、DisplayHDRの後に付く数値が、HDR表現における最大輝度を示しており、その数値が大きいものほど表示品質が高いといえる。

例えばDisplayHDR 400は、HDR対応ではあるが、WCGには未対応。HDR/WCG両対応を求めるならば、必然的にDisplayHDR 500以上を選択した方がよい。これまで数多くのHDR対応機を見てきた筆者の体験では「まともなHDR/WCG体験ができる最低ラインは、DisplayHDR 600以上」という印象をもっている。参考にして頂きたい。

DisplayHDRのロゴ
DisplayHDRは現在7クラス。名称にTrue Blackと付いたクラスは、有機ELなどの自発光画素タイプのディスプレイに付与される

QMS、QFT、eARC

前回は省略していた、QMS、QFT、eARCにも軽く触れておく。

QMS(Quick Media Switching)は、接続中に解像度、フレームレートなどの映像フォーマットが切り替わっても、ほとんどブラックアウトなしに接続回復(≒接続維持)を行なう機能。

QMSにより、HDMI2.1環境下ではフレームレートや解像度の変更が行なわれても、表示が乱れることがなくなる

QFT(Quick Frame Transport)は、効果としてはVRRに近い。

規定のタイミングで送信できなかったフレームを、あとから高速に伝送することで、なにごともなかったように表示する仕組み。待たされている側のディスプレイは、前フレームの表示を維持するので、結果的にVRR的な効果が得られる。VRRはリフレッシュレートを可変制御するが、QFTはリフレッシュレートを据え置いたままVRR的な効果が得られる。

eARCは、ARC(Audio Return Channel)の略称。“e”nhanced、すなわち拡張版という意味だ。

ARCはHDMI1.4で規格化された機能で、具体的には、1本のHDMIケーブルで、伝送方向の上りと下りの双方でデジタル音声の送受が行なえる。映像機器と音響機器を適材適所で使い分けたい際に便利な機能で、具体的には、AVアンプのようなオーディオ機器のARC対応のHDMIと、テレビ、プロジェクタのような映像機器のARC対応のHDMI同士を接続して使う。

従来のARCでは対応できなかったDolby AtmosやDTS:Xなどのオブジェクトベースオーディオシステムや、今後登場するかもしれない多bit、高ビットレートへの対応を睨んで、伝送帯域を増やしたARCがeARCという理解でいい。

eARCはARCの拡張版。eARC環境下では、帯域制限のない様々なオーディオフォーマットでARCが利用出来るようになる。上表は、光デジタルなど比較を示したもの

HDMI2.1対応の最新ゲーミングディスプレイはコレだ

ここまでを踏まえた上で、HDMI2.1対応のゲーミングディスプレイにはどのような製品があるのか。前回の記事で紹介した機種はもちろん、あれから約半年の間で発表された機種などもまとめて紹介していこう。

まず、5月末現在で発表・発売されているゲーミングディスプレイは以下の通り。

これらが購入の検討対象になってくると思われる。それでは、各製品をざっと見ていこう。

4K27型・IPS液晶のLG「27GP950-B」

CES 2021で話題を集めた、LGエレクトロニクスのゲーミングディスプレイ。先日国内でも発表された。5月下旬に発売予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は125,000円前後。

LG「27GP950-B」 5月下旬発売 約12.5万円

27型サイズ、4K解像度のIPS液晶パネルを採用。最大リフレッシュレート160Hzで、DisplayPort接続では160fpsまでの映像入力が行なえる。HDMI2.1をサポートしており、HDMI接続で4K/120fpsまでの映像入力が可能。IPS型液晶ながら、応答速度は1msを謳う。ALLM、QFT、VRR対応。DisplayHDR 600準拠なので、HDR/WCGの品質もそれなりに優秀そうだ。

背面

ちなみに、よく似た型番製品に「27GN950-B」というのがある(筆者も愛用中)。4K/144Hzのゲーミングディスプレイなのだが、HDMIは2.0のため、HDMI接続での4K/120fps入力には非対応。ただし、2,560×1,440ピクセル解像度の120fps入力は可能だ。

4K28型・IPS液晶のAcer「XV282KKVbmiipruzx」

28型サイズ、4K解像度のIPS液晶パネルを採用した、Acerのゲーミングディスプレイ。海外では「Nitro XV282K KV」という名称で先行発表していたが、先日国内でもリリースした。発売は6月24日。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は118,000円前後。

Acer「XV282KKVbmiipruzx」 6月24日 約11.8万円

最大リフレッシュレートは144Hzで、DisplayPort接続で4K/144fps、HDMI2.1接続で4K/120fpsまでの入力に対応する。DCI-P3カバー率は90%を達成。HDR表示品質は、DisplayHDR 400なのがやや残念か。

4K32型・IPS液晶のASUS「ROG Swift PG32UQ」

ゲーミングディスプレイとしては大きめの32型サイズが特徴。CES2021で発表されたもので、日本での発売時期や価格は未定。

ASUS「ROG Swift PG32UQ」 発売日・価格未定

リフレッシュレート144HzのIPS液晶パネルを採用。DisplayPort接続時は4K/144fps入力、HDMI2.1接続時は4K/120fps入力に対応する。色域はDCI-P3カバー率98%を達成。DisplayHDR 600準拠でHDR/WCG性能も必要十分だ。発色精度は⊿E≦2を保証しており、ゲーミング用途だけでなく、デザイン系用途にも堪えうる高画質性能を謳う。

背面

なお、本機とよく似た型番に「PG27UQ」があるが、2018年発売モデルでHDMI2.1には未対応なので注意。

4K43型・VA液晶のASUS「ROG Strix XG43UQ」

ASUS ROGブランドで海外発表済みの43型モデル。4K解像度のVA液晶パネルを採用。こちらも発売時期や価格は未定。

ASUS「ROG Strix XG43UQ」 発売日・価格未定

DisplayPort接続時は4K/144fps入力、HDMI2.1接続時は4K/120fps入力をサポート。色域はDCI-P3カバー率90%。DisplayHDR 1000準拠の高性能モデルのようだ。

背面

4K28型・IPS液晶のASUS「TUF Gaming VG28UQL1A」

ASUSにはゲーミングブランドが2つあり、上位が前出のROG、コスパ重視ブランドがTUFになる。そして、コスパ重視のTUFブランドからもHDMI2.1対応のゲーミングディスプレイがCES 2021で発表されている。発売日・価格は未定。

ASUS「TUF Gaming VG28UQL1A」 発売日・価格未定

画面サイズは28型で、リフレッシュレート144Hzに対応した、4K解像度のIPS液晶パネルを採用。DisplayPort接続時に4K/144fps、HDMI2.1接続時に4K/144fps入力に対応する。VRR、ALLMにも対応。色域はDCI-P3カバー率90%。DisplayHDR 400準拠。

背面

よく似た型番のモデルに「TUF Gaming VG27AQL1A」があるが、こちらは2,560×1,440ピクセル解像度モデル。

GIGABYTE「AORUS FI32U」「FV43U」「FO48U」

GIGABYTEからは、AORUSブランドより「FI32U」「FV43U」「FO48U」のHDMI2.1対応ゲーミングディスプレイが登場予定。発売時期・価格ともに未定だが、43型を最初に市場投入するようだ。なお、モデル型番の2文字目が映像パネルの種別(I=IPS、V=VA、O=OLED)、2桁の数字は画面サイズを表している。

「AORUS FI32U」は32型サイズの4K解像度のIPS型液晶パネルを採用。リフレッシュレートは144Hzに対応する。DCI-P3カバー率は95%。DisplayHDR 400準拠。

GIGABYTE「AORUS FI32U」 発売日・価格未定
背面

「AORUS FV43U」は43型サイズ、4K解像度のVA液晶パネルを採用。リフレッシュレートは144Hzに対応する。DCI-P3カバー率は97%。DisplayHDR 1000準拠とかなり画質に配慮したモデルとなる。

GIGABYTE「AORUS FV43U」 発売日・価格未定
背面

「AORUS FO48U」は48型サイズ、4K解像度のLG製有機ELパネルを採用。リフレッシュレートは120Hz対応。DisplayHDR準拠グレードは不明だ。

4K42.5型・VA液晶のAcer「PREDATOR CG437K S」

先日行なわれた新製品発表会「next@acer 2021」でアナウンスされた、HDMI2.1対応ゲーミングディスプレイ。欧米エリアで11月発売予定。参考価格は1799.99ドル。

42.5型サイズ、4K解像度のVA液晶パネルを採用。リフレッシュレートは144Hzに対応。DCI-P3カバー率は90%。DisplayHDR 1000準拠し、発色精度は⊿E≦2を謳う。

PREDATOR CG437K S 発売日・価格未定

なお本機と同時発表された、37.5型の湾曲モデル「PREDATOR X38 S」(3,840×1,600ピクセル解像度)、28型の155Hz対応「PREDATOR X28」(1,920×1.080ピクセル解像度)は、どちらもHDMI2.0まで。

以上、各製品を並べてみると、パネルの製造元が数社に限定されることもあって、画面サイズやスペックがよく似ていることが分かるだろう。

国内での発売日と価格が確定しているのは、LG「27GP950-B」、Acer「XV282KKVbmiipruzx」だけだが、おそらく他社の製品も今後追従してくると見られる。価格についても、LGとAcerのモデルが1つの目安になりそうだ。

テレビのHDMI2.1対応状況はどうなっているか

11月の記事では、HDMI2.1対応製品としてテレビを中心に紹介したが、HDMI2.1対応テレビはLGなどの一部モデルに限られていた。

あれから約半年経過した5月現在、だいぶ状況が変わりつつある。遅ればせながら、日本メーカーからもHDMI2.1対応テレビが出てきた。

以下、HDMI2.1対応テレビの最新状況をまとめていこう

シャープ:8K/4K液晶、4K有機ELが4K/120fpsサポート

シャープは今年4月、テレビ製品のラインナップ刷新を行なった。その多くがHDMI2.1へ対応を果たしている。

<8K液晶「DW1」シリーズ>

70型8K液晶「8T-C70DW1」

シャープは数少ない8Kテレビ製品に力を入れているメーカーだが、その8Kテレビの新製品として「DW1」シリーズを発表した。発売は6月12日。70型(49.5万円前後)、60型(38.5万円前後)を用意する。

VA液晶パネルで、直下型バックライトシステムを採用。HDR表示にも力を入れている(DisplayHDR規格は非取得)。HDMI2.1対応で8K/60fps、4K/120fpsの入力に対応。VRR、ALLM、eARCに非対応なのは残念だ。

<4K液晶「DN1/DN2」シリーズ>

65型4K液晶「4T-C65DN1」

今期アクオスの主力製品になりそうなのが「DN1/DN2」シリーズ。4K解像度のVA液晶パネルを採用。HDMI2.1対応で4K/120fps入力が可能。VRR、ALLM、eARCには対応しない。

上位DN1と下位DN2のスペック差は、音声コントロールシステムに対応するか否かで、基本的な機能に違いはない。

ただバックライトシステムに違いがある。70型、65型が直下なのに対し、60型以下がすべてエッジとなっている。バックライトはHDR表示性能を大きく左右するので、画質を重視するなら直下タイプを薦める。

5月下旬から順次発売予定。店頭予想価格は、DN1の70型が31.9万円前後、65型が27.5万円前後、60型が24.2万円前後、55型が19.8万円前後。DN2の50型が17.1万円前後、43型が14.9万円前後。コストパフォーマンス重視ならば、43型がよさそうだ。

なお、4K液晶テレビのコストパフォーマンスモデルとして「DL1」、「DJ1」シリーズも用意するが、この2シリーズはHDMI2.1には対応しない。

<4K有機EL「DS1/DQ1」シリーズ>

65型4K有機EL「4T-C65DS1」

これまで液晶テレビだけだった“アクオス”のブランドが、ついに有機ELテレビにも与えられ話題になった「DS1/DQ1」シリーズ(先代「CQ1」シリーズはアクオスブランドではなかった)。

リアプロジェクションテレビやDLPプロジェクタにもアクオスブランドは与えないという、鉄の意志でブランドを守り続けてきたが、ついに背に腹は返られない状況に来たと言うことか。

4K解像度の有機ELパネルを採用。上位機種のDS1シリーズはシャープ独自のチューニングを施すことで、コントラスト性能を下位DQ1よりも劇的に向上させた。つまり、HDR表示性能はDS1シリーズの方が優秀であることは間違いない。スピーカーの出力性能もDS1の方が上だ。

HDMI2.1対応で4K/120fps入力に対応。VRR、ALLM、eARCには対応しない。

すでに発売済み。店頭予想価格はDS1の65型が49.5万円前後、55型が34.1万円前後。DQ1の65型が46.2万円前後、55型が30.8万円前後となる。

シャープ・アクオスのHDMI2.1対応シリーズ('21年モデル)

・8K液晶「DW1」: 70型、60型
・4K液晶「DN1」: 70型、65型、60型、55型、50型
・4K液晶「DN2」: 43型
・4K有機EL「DS1」: 65型、55型
・4K有機EL「DQ1」: 65型、55型

ソニー:PS5対応に本気を見せた? 4K/120fps、eARC、ALLM、VRR対応

今年のソニー・ブラビアは、一部の下位モデルを除いて、4K/120fps入力に対応。eARC、ALLM、VRRにも対応した。遅ればせながら、ソニーがPS5への対応に本気で取り組んだという印象だ。

<4K有機EL「A90J/A80J」シリーズ>

83型4K有機EL「XRJ-83A90J」

新型XRエンジンを搭載した、4K有機ELテレビの2021年モデル(記事参照)。

A90JとA80J、共に有機ELパネルを採用するが、A90Jの方は、パナソニック・ビエラのように、ソニーが独自のパネルチューニングを行なったカスタム有機ELパネルを採用することで、先代から劇的にコントラストを向上させた。また、画素駆動をRGBベース基準で行なう制御を採用することで、中明色以下の色再現性も高くなった。

4K/120fps入力に対応。eARC、ALLMにも対応する。VRRへはファームウェアアップデートで対応とのこと。

4K/120fps入力時の公称遅延は8.5msとなっているが、これは画面中央での測定値とのこと。大画面☆マニアの画面最上部で計測した値とは比較できない点に注意されたし。

A90Jは、83型(7月10日発売、市場予想価格110万円前後)、65型(5月1日、同55万円)、55型(6月26日、同39万円)。A80Jは、77型(6月26日、同66万円)、65型(6月12日、同47.3万円)、55型(6月12日、同30.8万円)を用意する。A90Jの83型は、これまでにはなかった'21年モデルの新設定サイズだ。

<4K液晶「X95J/X90J」シリーズ>

85型4K液晶「XRJ-85X95J」

映像プロセッサを新型XRエンジンに進化させた、4K液晶の最新シリーズ(記事参照)。

4K解像度のVA液晶パネルと、直下型バックライトシステムを組み合わせ、自発光パネルに迫るハイコントラスト駆動を実現させている。

上位X95Jと下位X90Jの違いは、映像パネルの表面加工。X95Jには、周囲情景の写り込みを低減させる「XーAnti Reflection」を採用する(65型除く)。

4K/120fps入力に対応。eARC、ALLMにも対応する。VRRへはファームウェアアップデートで対応。4K/120fps入力時の公称遅延は画面中央で計測された8.5msとなっている点は、前出の「A90J/A80J」と同じ。

X95Jは、85型(6月12日発売、店頭予想価格60.5万円前後)、75型(6月19日、同47.3万円)、65型(7月31日、35.2万円)。X90Jは、75型(発売中、38.5万円)、65型(発売中、29.7万円)、55型(発売中、26.4万円)、50型(発売中、20.9万円)をラインナップする。

ソニー・ブラビアのHDMI2.1対応シリーズ('21年モデル)

・4K有機EL「A90J」: 83型、65型、55型
・4K有機EL「A80J」: 77型、65型、55型
・4K液晶「X95J」: 85型、75型、65型
・4K液晶「X90J」: 75型、65型、55型、50型
・4K液晶「X85J」: 75型、65型、55型、50型、43型

パナソニック:有機EL・液晶の各2シリーズが4K/120fps対応

<4K有機EL「JZ2000/JZ1000」シリーズ>

65型4K有機EL「TH-65JZ2000」

他社と同じLG製の有機ELパネルを使いながらも、独自チューニングのカスタムパネル「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」を採用することで、画質面で一歩リードする有機ELビエラの最新モデル。

上位JZ2000と下位JZ1000の違いは、「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」のポテンシャル。

JZ2000/JZ1000共に、放熱プレートを適用し放熱効率を高めているが、JZ2000は、新素材を用いた貼り付け構造でさらに熱伝導率を高めた。有機ELパネルの場合、放熱効率の向上は、そこから生まれた熱猶予を、より高い輝度生成に結びつけられる。つまり、JZ2000の方がよりハイコントラストな表示が行なえるということだ。とはいえ、下位のJZ1000も昨年モデルの最上位HZ2000に迫るコントラスト性能を実現しているという。

JZ2000/JZ1000共に、4K/120fps入力対応、ALLM、VRR、eARCに対応。

JZ2000は、65型(発売中、店頭予想価格55万円前後)、55型(発売中、同39万円)。JZ1000は、65型(6月25日発売、同48万円)、55型(7月9日、同31万円)、48型(6月18日、同25万円)を用意。

なお、JZ1000の48型は「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」非採用モデルなので、パナソニック製有機ELテレビならではの高画質性能を満喫したい場合は、48型モデル以外を選びたい。

<4K液晶「JX950」シリーズ>

65型4K液晶「TH-65JX950」

優れた視野角性能を持つが、ネイティブコントラスト的にはVAに劣るIPS液晶パネル。そんなIPS液晶を採用するも、液晶ビエラが高い評価を受け続けているのは、これまで培ってきた駆動技術と、進化を重ねたバックライト技術に秘密がある。その1つが昨年モデルから採用する「プレミアム液晶ディスプレイ」。

プレミアム液晶ディスプレイとは、平易にいえば、高効率な放熱設計によって従来機よりもバックライトLED数を上げているということ。

'21年モデルの「JX950」シリーズも、引き続きプレミアム液晶ディスプレイを採用。エンジンが進化し、「オートAI画質」「オートAI音質」という賢い自動調整機能が新たに搭載されたが、ハードウェア面での最大の注目点はやはり「HDMI2.1対応」になろう。

ラインナップとしては、75型(6月25日発売、店頭予想価格42万円前後)、65型(発売中、同35万円)、55型(発売中、同27万円)があり、全モデル4K/120fps入力、ALLM、eARC対応。ただし、VRRについては75型のみサポートする。

<4K液晶「JX900/JX850」シリーズ>

65型4K液晶「TH-65JX900」

液晶ビエラのミドルに位置する「JX900/JX850」シリーズ。

最上位JX950との大きな違いは、「プレミアム液晶ディスプレイ」の採用有無。よって、HDR表現力、コントラスト性能は、JX950と比較すると控えめ。一方、JX900とJX850とでは、映像面で差異はなく、実質的には同系列モデルとみてよい。

JX900は、75型(秋発売・価格未定)、65型(発売中、店頭予想価格29万円)、55型(発売中、同20万円)。JX850は、49型(発売中、同18万円)、43型(夏発売、価格未定)をラインナップする。

やや複雑なのは「採用液晶パネルの種類」、および「HDMI2.1の機能差」がJX900とJX850に存在するところ。

JX900は75型、65型、55型と、JX850の49型がIPS液晶パネルを採用するが、JX850の43型のみVA液晶パネルとなる。

また、JX900とJX850の全モデルが4K/120fps入力、ALLM、eARCをサポートするが、VRRについては75型のJX900と、43型のJX850のみが対応。コストパフォーマンスとゲーム用途を重視するユーザーには、43型のJX850がオススメかもしれない。

パナソニック・ビエラのHDMI2.1対応シリーズ('21年モデル)

・4K有機EL「JZ2000」: 65型、55型
・4K有機EL「JZ1000」: 65型、55型、48型
・4K液晶「JX950」: 75型、65型、55型
・4K液晶「JX900」: 75型、65型、55型
・4K液晶「JX850」: 49型、43型

レグザ:ついにHDMI2.1対応。有機ELの遅延時間も0.83msecに

<4K有機EL「X8900K」シリーズ>

4K有機EL「X8900K」シリーズ

「ゲームするならレグザ」というキャッチコピーを打ち出し続けてきたレグザから、ついにHDMI2.1対応機が登場。

X8900K」シリーズは、専用チューニングにより、高いコントラストと高い階調性を実現した有機ELレグザ。65・55型のみ、高輝度・高コントラストを実現する自社開発の高放熱プレートを搭載する。

X8900Kの特徴の1つが、有機ELレグザ初というハーフグレア処理。パネル表面の映り込みを抑制する低反射加工により、リビングでの視聴やゲームプレイも快適と謳う。さらに、有機ELレグザ史上、最も遅延の少ないゲームモードを実現し、液晶テレビと変わらない遅延時間になっているという。

4K/120fps入力対応、ALLM、VRR、eARCに対応。ただし、ALLM以外は今秋のソフトウェアアップデートで対応する予定。

発売日は6月下旬。店頭予想価格は、65型が44万円前後、55型が28.6万円前後、48型が23.1万円前後となる。

<4K液晶「Z670K」シリーズ>

4K液晶「Z670K」シリーズ

新開発の映像プロセッサ「レグザエンジンZR I」を採用した、4Kレグザの最新モデル(記事参照)。

新開発の高コントラスト4K倍速液晶パネルと、スリム直下型の高輝度LEDバックライトを搭載。レグザ独自のガンマ特性、輝度特性の専用チューニングを施した。バックライト制御はグローバルディミングとなる。

前述のX8900Kと同様、4K/120fps入力対応、ALLM、VRR、eARCをサポート。ただし、ALLM以外は今秋のソフトウェアアップデートで対応予定。

発売日は6月下旬。店頭予想価格は、65型が27.5万円前後、55型が20.9万円前後、50型が18.7万円前後、43型が16.5万円前後。

レグザのHDMI2.1対応シリーズ('21年モデル)

・4K有機EL「X8900K」: 65型、55型、48型
・4K液晶「Z670K」: 65型、55型、50型、43型

LG:今年も怒濤のHDMI2.1攻め。ミニLEDでもスタートダッシュ

昨年、HDMI2.1対応のスタートダッシュ決めたLGだが、'21年も多数のHDMI2.1対応機をラインナップしてきた。

<8K液晶「QNED99」シリーズ>

8K液晶「86QNED99JPA」

ミニLEDバックライトシステムと量子ドット技術を採用した、8K液晶テレビ(記事参照)。

数ミリサイズのLED素子を液晶セル直下に敷き詰め、それら個々の素子を高精度に制御することで高い輝度とコントラストを実現している。映像プロセッサは「α9 Gen4 AI Processor 8K」。

8K/60fps、4K/120fps入力対応のほか、ALLM、eARCをサポート。NVIDIA G-SYNCやVRRには対応しない。

発売は8月。86型のワンサイズのみで、店頭予想価格は121万円前後。

<4K液晶「QNED90」シリーズ>

4K液晶「75QNED90JPA」

ミニLEDバックライトシステムと量子ドット技術を採用した、4K液晶テレビ(記事参照)。

映像プロセッサは、同時発表の有機ELモデルなどよりもグレードが低い「α7 Gen4 AI Processor 4K」。4K/120fps入力対応のほか、ALLM、eARC、VRRをサポートする。

ラインナップは、86型(8月発売、店頭予想価格72万円前後)、75型(6月29日、同55万円)、65型(9月、同44万円)。

<4K液晶「NANO90/NANO85」シリーズ>

4K液晶「65NANO90JPA」

独自のNanoCell Displayを採用した4K液晶テレビ(記事参照)。

NANO90とNANO85の主な違いは、バックライトとその制御。NANO90は、スリム直下型LEDでエリア駆動。NANO85は、エッジ型LEDで部分駆動となる。その他の基本的な機能は変わらない。

映像プロセッサは「α7 Gen4 AI Processor 4K」。4K/120fps入力、ALLM、eARC、VRRをサポートする。

ラインナップは、NANO90が86型(店頭予想価格50万円前後)、75型(同35万円)、65型(同27万円)、55型(同21万円)で、NANO85が50型(同17万円)を用意する。発売日はすべて5月31日。

なお、同時発表の下位モデル「NANO76」「UP8000」シリーズは、HDMI2.1非対応。

<4K有機EL「G1」シリーズ>

4K有機EL「OLED 65G1PJA」

色の再現性と明るさを向上した、次世代有機ELパネル“OLED evo”を採用した、LGのフラッグシップ4K有機ELテレビ(記事参照)。

従来パネルとは異なる新しい発光素材を採用。赤・緑・青の波長を改善するとともに、新レイヤーを付加。各波長のピークを高めながら波長の幅を狭め、明るさと色の再現性がさらに向上したという。

映像プロセッサは「α9 Gen4 AI Processor 4K」。4K/120fps入力、ALLM、eARC、VRRに対応。NVIDIA G-SYNCもサポートする。

ラインナップは、65型(店頭予想価格48万円前後)、55型(同35万円)。発売日は5月31日。

<4K有機EL「C1」シリーズ>

4K有機EL「OLED 65C1PJB」

新開発のディンプルスピーカーを搭載した、LG有機ELテレビのミドルシリーズ「C1」(記事参照)。

上位機G1と同じ映像プロセッサ「α9 Gen4 AI Processor 4K」を搭載。4K/120fps入力、ALLM、eARC、VRRほか、NVIDIA G-SYNCもサポートする。

ラインナップは、83型(6月中旬発売、店頭予想価格110万円前後)、77型(同66万円)、65型(同43万円)、55型(同29万円)、48型(同25万円)の5サイズを用意。83型以外は、5月31日発売予定。

なお、同時発表の4K有機ELテレビのエントリーモデル「A1」シリーズは、HDMI2.1非対応。

LGのHDMI2.1対応シリーズ('21年モデル)

・8K液晶「QNED99」: 86型
・4K液晶「QNED90」: 86型、75型、65型
・4K液晶「NANO90」: 86型、75型、65型、55型
・4K液晶「NANO85」: 50型
・4K有機EL「G1」: 65型、55型
・4K有機EL「C1」: 83型、77型、65型、55型、48型

最後に~もうオカルトではない!「ケーブル」選びに失敗するとHDMI2.1時代は⽣き抜けない!

最後にHDMI2.1時代を迎えるにあたり、最重要注意事項を書き綴っておくことにしたい。

前半でも述べた通り、HDMI2.1は、インターフェースチップの賢いモードチェンジによって互換性を維持している。

端子形状は従来のHDMIのものと同じだが、HDMI2.0以前のデータ伝送(TMDS:Transition-minimized differential signaling)方式では、EMI(Electro-Magnetic Interference)特性上、48Gbpsもの高帯域の信号を伝送できないと判断。

4本ある伝送路のうち、3本をデータ(RGB、YUV)に割り当て、残った1本を同期用クロックに使う従来方式から、伝送データにクロックを重畳させる高速電気信号伝送方式に変更した。これによって、データ伝送路を4本へと拡張することに成功。HDMI2.0のデータ伝送(6Gbps×3CH=18Gbps)から、HDMI2.1のデータ伝送(12Gbps×4CH=48Gbps)を実現している。

HDMI2.1の伝送帯域48Gbpsは、電気特性、端子の各ピンの活用を全く違えることで達成された

つまり、HDMIケーブルには伝送路一本あたり、12Gbpsの高速信号が流れるということだ。

「デジタル信号はノイズに強い」とはいえ、限度はある。伝送されるデータはデジタルといえど、電気信号そのものはアナログ次元のもの。信号の形状が電磁波ノイズ、電線そのものの抵抗値といった要因で歪めば、受信側で正しい信号とは見なされずエラーが出る。

アナログの電気信号ならば、信号の歪みはその部分だけの“乱れ”で済ませられるが、デジタル信号の場合、信号の乱れは“データ化け”に相当し、送られてきたデータ全体が使いものにならなくなる。

端子形状はそのままなので普通に接続できてしまうが、HDMI2.1の信号を扱う場合、これまで普通に使ってきたHDMIケーブルでは“データ化け”が生じる可能性が高くなるのだ。

混乱が起きることは予測できるため、HDMI規格を統括する団体・HDMIフォーラムおよびHDMI Licensing Administratorは、消費者が区別できるよう、HDMIケーブルのカテゴリ番号と、それぞれのHDMI規格に適合するロゴマークを規定した。それが下表になる。

ややこしいのはHDMI1.3~1.4対応のHigh Speed HDMIケーブルと、HDMI 2.0対応のPremium High Speed HDMIケーブルが、ともにカテゴリー2に分類されている点だ。

また、新設されたカテゴリー3のUltra High Speed HDMIケーブルが、Premium High Speed HDMIケーブルの上位なのか、下位なのかが一瞬では分かりにくい。「Ultra」と「Premium」の上下関係の語感は、日本人にはピンと来にくいので、迷った時には「カテゴリ番号の大きい方が上」ということを思い出すとよいだろう。

「Standard HDMIケーブル」のロゴ
「High Speed HDMIケーブル」のロゴ
「Premium High Speed HDMIケーブル」のロゴ
「Ultra High Speed HDMIケーブル」のロゴ

さて、AVマニアやホームシアター愛好家ではない限り、一般ユーザー(特にゲームファン達)は、HDMIケーブルに「パッシブ型」と「アクティブ型」があることを知らない人も多いと思う。

HDMI2.1時代においては、パッシブ型とアクティブ型のHDMIケーブルの存在を意識しておかなければならないので、今後は留意していきたい。

パッシブ型HDMIケーブルとは、HDMI端子同士を銅線で結んだ、ごく普通のHDMIケーブルのことだ。これまで多くの一般ユーザーにとって、HDMIケーブルといえばパッシブ型HDMIケーブルのことを指していたと思う。

HDMI2.1時代において、一般ユーザーですらも無縁でなくなるのがアクティブ型HDMIケーブルだ。

このアクティブHDMIケーブルとは、HDMI端子内にイコライザチップを内蔵して、受け取った電気信号を電気的に増幅して伝送したり、あるいは光信号に変換してから伝送するケーブルのことだ。超高帯域幅のデータ伝送を行なうHDMI2.1の信号をケーブル側(正確には端子側)で補正することで、確実な伝送を実現しようとするのがアクティブ型HDMIケーブルということになる。

ちなみに、HDMI端子に埋め込まれたイコライザチップ(ICチップ)を駆動するための電力は、HDMI端子から供給される5Vの電源ラインを使うケーブルが主流だ。しかし、一部のケーブル長の長いアクティブHDMIケーブルでは、HDMI端子部に装備した電源供給用のUSB Micro-B端子などで電力を供給するタイプも存在する。

アクティブ型HDMIケーブルは、基本的にはHDMI端子からの給電で動作する。ただし、安定的な信号伝送を確実的なものにするためにUSBケーブルで給電できる製品も多い

では、なぜ、HDMI2.1時代では、一般ユーザーがアクティブ型HDMIケーブルの存在を意識しなければならないのか。

それは、HDMI2.1対応のカテゴリー3のパッシブHDMIケーブルであっても、動作が保証されるのはおよそ3m未満までになると見込まれているからだ。

3mという長さは、一般的な家庭環境では十分な気もするが、AVラック内部を取り回して配線すると、ギリギリな長さではある。おそらく、部屋の端と端を結ぶような接続では、3mケーブルでは足りなくなるだろう。

HDMI 2.0およびHDMI 2.1において、何mまでならパッシブHDMIケーブルが使え、何m以上でアクティブHDMIケーブルが必要になるかを示したパネル。なお、この目安はHDMIフォーラムが規格化したものではなく、台湾系ケーブルメーカーの最大手Elkaが彼らの経験則にもとづいてまとめたもの
5m長のパッシブ型HDMIケーブルでHDMI2.1動作保証している製品を出しているメーカーもあるにはあるが、それらは高価な場合が多い

アクティブ型HDMIケーブルには、従来のHDMIケーブルとよく似た銅線タイプと光ファイバータイプが存在する。10m近い長いケーブルでは、光ファイバータイプが奨励されるが、光ファイバータイプは高価。

アクティブ型HDMIケーブルは、HDMI2.0時代からも存在しており、HDMI端子に内蔵されるイコライザチップがHDMI2.0対応止まりだと、HDMI2.1接続に使えない。「あ、安いアクティブ型HDMIケーブルがある!」と思って飛びつくと、HDMI2.1未対応だったりするので、このあたりの対応バージョンチェックも慎重に行ないたい。

HDMI端子で受け取った信号を光データに変換し、光ファイバーで伝送するアクティブ型HDMIケーブルも増えてきた

注意すべき点がもう一つ。アクティブ型HDMIケーブルの端子には、“映像送信側用”と“映像受信側用”があり、ケーブルの向きを間違えると全く動作しない、というワナがある。

多くのアクティブ型HDMIケーブルのHDMI端子の片側には「Source」という記述が書かれているはずで、こちらをBDプレーヤーやゲーム機、パソコンなど“映像を出力する機器”に接続する必要がある。ここも覚えておきたいポイントだ。

“映像を表示する機器”側の端子に「Display」と記載した、アクティブ型HDMIケーブル

これは、PS5やXbox Series X、NVIDIA GeForce RTX 3090の実機を使い、手持ちの様々なブランドの数十本のHDMIケーブルを使い接続実験した経験則になるが、パッシブ型でも上質なHDMI2.0対応ケーブルであれば、3mくらいまでならばHDMI2.1伝送が行なえるものが多かったことを報告しておく。逆に、HDMI1.4時代のケーブルでは、2mの長さでもHDMI2.1伝送は無理なものが多かった。

まあ、PS5やXbox Series Xに付属しているHDMIケーブルは、HDMI2.1接続対応のはずなので、横着はせず、まずはそうした付属ケーブルで機器の接続を試した方がいい。

もし「今まで映っていたのに、4K/120fpsゲーミングを試そうと思ったら、とたんに画面表示が消えた」という事態に遭遇したときには、ゲーム機やGPU、ディスプレイ機器を疑う前に、HDMIケーブルを疑うことから始めるとよいだろう。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。近著に「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(インプレス刊)がある。3D立体視支持者。
Twitter: zenjinishikawa
YouTube: https://www.youtube.com/zenjinishikawa