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「ミニLEDテレビ」なら全部いいと思うなよ!? 山之内×本田の新春対談【前編】
2023年1月12日 08:00
評論家の山之内正氏と本田雅一氏が、オーディオ・ビジュアルの製品や出来事を本音トークする恒例の対談。2022年の動向を振り返りつつ、両氏が注目した製品や最新技術を語る。
前編では、有機EL・液晶テレビの動向に加え、チューナーレステレビ、動画配信やイマーシブオーディオを取り上げる。また文末には、山之内氏と本田氏が推す、2022年の“ビジュアル名品3選”を掲載した(※編集部注:収録はCES 2023開催前に行なった)。
ソニーのQD-OLEDが圧倒的に綺麗。映像を見てうっとりする(本田)
本田氏(以下敬称略): ディスプレイジャンルのトピックとしては、有機ELのパネル技術で最近にはなかった大きな動きがあったことでしょう。業界全体がLGディスプレイ製のパネルに依存して同じパネルを用い、そこにドライバチップの工夫やパネル冷却などの工夫でどう差をつけるか、というかなり成熟した状況だったところに、LGディスプレイの新パネルとサムスンが参入して大きな変化が生まれました。
LGが輝度をアップさせたevoパネルを発表したのに加え、ソニーがサムスンのQD-OLEDパネルを使った新モデルを出してきました。サブピクセルがWRGBの、いわゆる白画素でピーク輝度を出すパネルばかりだったのが、純粋にRGB画素で純度の高い色を再現できるものが現れたわけです。
本田: パナソニックと東芝レグザは、高級モデルの出荷規模が限られていることを前提に、冷却能力の高いメカニカルな設計で実効輝度をあげることで表現力を高めていますが、QD-OLEDの採用はまさに本質的な部分にメスを入れた進化でした。
山之内: 各社、実際の導入よりも時間がかかりましたね。テレビに限らず、どの分野でも遅れが常態化している印象です。
本田: ソニーは、中国が行なっていたゼロコロナ政策によって工場がまともに稼働できなくなった影響が大きかったようですね。現在は真逆の方向に舵が切られていますが、一方で感染急拡大による混乱が起きてます。こうしたことに加えて、政治的な安定や米国との関係の行方といった懸念もありますから、今後は生産地の見直しなどが進むのではないでしょうか。円安の影響も無視できないでしょうし。
山之内: 日本に戻すなりしていかないと、将来的には厳しいでしょうね。簡単にはいかないと思いますが。
本田: テレビの話に戻ると、2021年までの4K有機ELテレビは、画質面での開発が進み熟成したことで、どこのメーカーを買っても大きくは外さない、といった状況にまで進んでいた。もちろん映像エンジンや絵作りの違いなど個性はあるのだけど、だからと言って”ジョーカーを引く”こともなかった。
そんな安定した状況にQD-OLEDという新しい軸が増え、LGディスプレイも輝度とコントラストをさらに向上させた新世代パネルを持ち込んだ。パナソニックとレグザは、それぞれに絵作りの巧みさや映像処理回路の進化などで頑張ってはいますが、ソニーのQD-OLEDが圧倒的に綺麗ですよ。価格も違いますし、これはしょうがないですよね。カラーボリューム(表現できる色の範囲)が一気に増えて、色彩表現が豊かになった。映像を見ていても、うっとりするぐらいです。
山之内: 今後QD-OLEDパネルが各社にも波及するかどうかは気になりますね。
本田: QD-OLEDは、WRGBの既存構成に比べると生産技術のハードルとコストは上がりますからね。どこまでニーズを引き出せるか。量産に乗ってくれば、一気に変化していく可能性はあると思うのですが。
昨年のアクセスランキングを見ても、以前よりもテレビに対する高画質への傾注度が下がっている印象を受けました。以前であれば、高画質なら買えなくとも“欲しい”と思ってアクセスはしていたと思うのです。
ところが、そこそこ画質が満足できて、でも便利で安価という“グッドイナフ”な製品がウケるようになった。それだけLGディスプレイのOLEDパネルを使った製品が良いところまで進化したということでしょう。しばらくは主流を占めそうではありますね。
ですが、どんなメーカーでも同じかといえばそうではなくて、各国ごとの事情もあります。ストリーミング映像を見る時間が増えたと言っても、日本の地デジは低いビットレートで、しかもMPEG2という、世界の中でも割と特殊な画質の放送。そこを最適化して綺麗に見せる余地はありますし、ストリーミングのサービスごとに画質最適化するなど差別化できるところはあるでしょう。
「ミニLEDテレビだからいい」ということにはならない(本田)
山之内: 2022年のアクセスランキングを見ると、チューナーレスというか、ネット動画視聴を前提にしたモデルのニュースが人気を集めているのですね。
本田: NHKに関する反応を見ても、やはり「チューナーは不必要」と考える層は一定数いる、ということなのでしょう。
山之内: チューナーレスの動きが加速すると、製品の展開がだいぶ変わりそうです。画質の追い込みも、またメインターゲットをどこに置くかということも、考え直す必要が出てくる。視聴する主体が、放送でもなく、ディスクといった既存コンテンツとも違う、ネットコンテンツということになれば、そこに最適化した追い込みが欠かせない。機能面も含め、これまでのテレビ作りが変わってくるでしょう。
最近のテレビの画作りを見ると、コントラストなどは明らかに進化してます。それは1つのトレンドですし、その方向で進化してもらって構わないのだけど、じゃあ何を観るのか? ということになると、その対象のコンテンツが変わってきているのは事実。テレビの用途が広がるというか、使い方のスタイルが広がるということが、確実に起きてると思います。
本田: 例えば「TVer」なんかは、サービスが始まった頃はここまで規模が大きくなるとはテレビ局は考えていなかったはず。ところが、今はもう民放だけではなく、テレビ業界としても、同時試聴や見逃しのサービスがないと成立しないのではないか? というところまで来ている。
以前、ネットサービスはテレビ局にとってはどちらかというと、やりたくないことだったわけです。だって、放送だけで億単位の広告が成り立つわけですからね。そこにネットワークサービスのコンテンツを付加しても、何千万円とかの予算が多少増えたところで、そんな面倒くさいことやりたくないよ、と。
でも、TVerや先日のワールドカップで注目を集めたABEMAのように、配信での番組視聴が日本でも定着してきている。まさにテレビ局は岐路に立っているし、映像制作の人達もどんどん外に向いてきている状況です。
本田: 僕は、前からテレビを“ディスプレイ”として評価して来たけど、“ディスプレイ”が求められる動きは歓迎です。僕も含めてチューナーを必要としない方は結構いるはずですからね。あとは既存のメーカーがどうするか。本格的にやるか? ということだけでしょう。
昔の話ですが、パナソニックの社長に津賀さんが就任した後の新年会で「テレビ受像機では勝負できないが、ディスプレイだと勝負できるかもしれないと思っている」なんて事を話していたのを思い出します。
動画配信サービスに対応したスティック型のデバイスとか、あとは今年サイズが小さくなってファンレスになったApple TVとかいろいろあるけれど、今のテレビってそうしたセットトップボックスやサービスに乗っ取られてしまっている印象で、ディスプレイとしての付加価値がどこにあるのだろうと思うのです。結局ディスプレイは製品選びの原点に立ち替えるというか、“画質”に収斂していくのですよね。
本田: 近年はどこのネットサービスに対応したとか、レスポンスが良くなったとか、音声検索が進化したとか、機能面が注目されたりもしましたが、最後はやはり画質。しいて言えば、あとはAIによる自動画質・音質調整くらいが求められるところでしょうか。
山之内: 環境のセンシングはもちろん、画やコンテンツの嗜好なども把握して、AIが柔軟に最適化してくれるようになると面白いですよね。
それから、有機ELテレビだけでなく、液晶テレビもミニLEDバックライトを採用することで、明るさとコントラスト感が向上しましたね。
ただ、画としてこれが本当に好ましい方向に向かっているのかというと、個人的には疑問に感じているところもあるのです。コントラストを付け過ぎでは? ちょっと明るすぎるのでは? と感じるテレビも少なくない。映像の内容とは無関係に、とにかく明るさを志向するような方向には進んでほしくないですね。
本田: 「ミニLEDテレビいいよね」という声があるのは理解できるし僕も賛成だけれど、はっきり言って「ミニLEDテレビだからいい」ということにはならないですよ。
リビングで明るく大画面で、という用途ならミニLEDテレビは候補に挙がりますが、結局はバックライトの領域分割を如何に制御するかがキモ。その制御がうまくいかなければ、たとえミニLEDテレビでも、見ていて驚くような違和感を覚えてしまうわけですからね。ただ、ソニーのミニLED採用モデルはその点、とてもよくできています。ただ繰り返しますが、ミニLEDテレビだからと言って、どのメーカーでもいいよということにはなりません。
日本メーカーのサウンドバーはまだまだ低音が足りない(山之内)
山之内: テレビのHDR対応が当たり前になって来た一方で、HDRコンテンツのクオリティもここ1〜2年で大きく変わりました。ベルリンフィルが提供している「デジタルコンサートホール(DCH)」も、HDR映像が素直にキレイになったし、観ていて全く違和感がなくなりました。
昨年11月にドイツ・グラモフォンが「Stage+」という配信サービスを始めたのですが、これが4K/HDRであることはもちろん、音声はロスレスでクオリティ志向が強い内容になっています。DCHとほぼ同額(19,900円/年)なので、けっして安くはありませんが、その品質とコンテンツの充実ぶりは注目に値します。
本田: カメラの性能向上も相まって、HDRの良さと言われてきたスタジアム、コンサートの生感がストレートに出ているということなんでしょうね。配信はどのような端末で視聴しているのですか?
山之内: DCHは2022年6月にドルビーアトモスでの配信を始めたので、シアタールームではApple TV 4KをAVアンプにつなぎ、サラウンドで聴いてます。仕事場のテレビはDCHのアプリで受信していますが、STAGE+はまだテレビ用アプリがないので、パソコン(Mac)で受信し、AirPlayでApple TVに飛ばして再生することが多いですね。
STAGE+は、iOS用アプリがまだ日本のAppStoreでは入手できないのです。どちらも、画質・音質と手軽さのバランスが良いのはApple TVですね。
本田: わたしはOPPOのプレーヤー「UDP-205」のHDMI入力にApple TV 4Kを挿して、205で映像と音声をセパレートさせて、テレビとAVアンプに繋げています。205にはHDMIオーディオ・ジッターリダクション回路が搭載されていて、映像信号用クロックを破棄して再度マスタークロックを生成しているんですよね。
山之内: ディスクプレーヤーではなく、スプリッターとして使っていると(笑)。
本田: ストリーミング映像の再生プレーヤーとしては、僕もApple TV 4Kを使っています。昨秋、第3世代モデルが登場したのですけど、“コンテンツの楽しみ方”というのを本格的に考え直さないといけないかなと感じました。
Apple Musicにおける空間オーディオのカタログ充実って、iPhoneの市場を大きく持っているからできたパワープレイだと考えていたんですが、考えてみればそれを楽しむためのバーチャライゼーションの技術も、動画コンテンツの配信も、ゲームもすべて繋がっている。つまりApple TVさえ持っていれば、Atmos対応のサウンドバーやAVアンプで空間オーディオが楽しめる。最高品位の音質じゃないかもしれないけど、少なくても制作者が意図した、その環境に見合った音で体験できるというのは、すごいなと。
山之内: デジタルコンサートホールもStage+もアトモスに対応していて、とくにオペラなどは劇場空間の臨場感を求めるようなコンテンツは、聞いてみると楽しいですよ。アトモスが徐々に拡がってきたと感じますね。
ところで、本田さんはアトモスをどのように楽しんでいるのですか?
本田: もともと9.1chだった環境をアレンジして、サラウンドの前1組が天井設置だったので7.1.2chにしています。7.1ch構成のコンテンツもいまだに多いですしね。
山之内: わたしは5.1.4chにしています。当初はサラウンドバックを考えていたのですが、部屋の出入りなど導線の都合で天井に設置したのです。結果的には、天井4本の方が効果が大きく感じられました。
本田: これだけイマーシブオーディオのコンテンツが増えているわけですから、バーチャライゼーションではなくて、ディスクリートでアトモスの環境を作ろうというユーザーが増えてくれると嬉しいですよね。音楽作品も楽しめますから。
ソニーのサウンドバー「HT-A5000」(’22年モデル)と「HT-A7000」(’21年モデル)は、リアスピーカーを後付けできるようになっていて、本格的なアトモスの入り口に導いてくれるという意味では、あのアプローチはスマートだと思いました。
山之内: 最近になって、B&WやSENNHEISER、Devialetなど、ハイエンドなサウンドバーが、一つのジャンルを築きつつありますよね。実際に音を聴くと、一般的な10万円以下のモデルとはまるで違う。正直わたしはサウンドバーが嫌いだったのですが、ハイエンドなモデルは音の広がりも音色も音質も以前に比べると明らかに進化していて、これならアリだと感じました。
日本メーカーのサウンドバーは、とにかく高さを抑えて、スリムに作る傾向がありますが、まだまだ低音が足りない。クラシックでもポピュラーでも低音楽器の存在が消えてしまうのです。むしろ、アンプとブックシェルフスピーカーを組み合わせた方がはるかに音がいい。サウンドバーは人気ですが、それだけですべてカバーできるわけではない、ということは伝えたいですね。
本田: 各社頑張っていますが、やはりテレビの内蔵スピーカーだけでは限界がありますよね。かといって、テレビがスタイリッシュになっていく状況で、大きなスピーカーは置きにくくなっている。サウンドバーがちょうどいいのでしょう。
山之内: ソニーのサウンドバーは、ブラビアのスピーカーをセンターとしても利用できる機能がありますが、実際に使うと、フロントやサラウンドのスピーカーとの音色乖離が目立ちます。どうしてもガラスっぽいというか、共鳴している感じがある。定位に関してはいいので、テレビ側のスピーカーはもう少し音色にも気を使ってほしいですね。
リマスタリングはなかなか曲者。本当に作り手の腕・耳次第(山之内)
本田: イマーシブオーディオで印象的なソースはありましたか?
山之内: クラシックの作品で印象的だったのは、ベルリンフィルが演奏したマーラー交響曲第2番《復活》ですね。オーケストラがステージに並び、その周囲に合唱が並ぶ。さらにステージ後方の客席を利用して、上の方にバンダと呼ばれる別働隊の金管楽器を配置している。ステージから見ると、斜め上の方に楽器があるわけです。ホールでは上から音が降り注いでくる感じが体感できるのですが、通常のサラウンドだとそれが伝わりにくい。
ところがアトモスだと、ステージの上まで音場が拡がり、上から降ってくる感覚がそのまま再現されるのです。映像では指揮者が斜め上を見ながら振っているので、きちんとその視線の方向から音が来るのはとても気持ちがいい。
同じ音源をステレオで聴くと、ディテールはよく聴き取れるものの、空間は平面的になってしまう。距離感はあるのに高さが出ないので面白くないのです。空間オーディオで聴くと、ホールで聴いているかのような体験ができる。すべてのコンテンツではありませんが、いくつかのコンテンツは空間オーディオのメリットを感じます。
本田: “音をどこにでも配置できる”という最初の触れ込みもあってか、空間オーディオのコンテンツって、アトラクティブなものだろうと思っていたのです。でも、古い楽曲のアトモス版が予想以上に音が良くて驚きました。
山之内: その古い楽曲のアトモスとは、どのようなサウンドになっているのでしょう。音を様々な場所に配置しているとか?
本田: いいえ、それがナチュラルなんです。ダイアナ・ロスのアルバムなどもリマスターされていますが、配置は普通。ところが、モータ音やベースの音がパツンパツンと来るんですよね。
山之内: それは空間オーディオのメリットなのですか?
本田: 空間オーディオのメリットなのか、リマスターの効果なのか、リミックスした人のセンスなのかは、分からないのですが、旧作にアトモス版が結構いい音で楽しめるのは経験的にありますね。
山之内: いろいろな位置から音が聞こえるのは、最初はすごいなと思うけれど、いつもこれで聴いているとどうかな? となるような気がしていて。
本田: 特に古い楽曲をそのように変えてしまうのはダメでしょうね。いまのEDMのような作品を、アーティスト自身が配置して、曲の中での、ストーリーテリングの道具として使うのはアリだと思います。
山之内: きっとスタンダードな、昔の録音をアトモスにするなら、正統派のステレオの音を良くするリミックス・リマスタリングの方がいいのでしょうね。
リマスタリングというのは、なかなか曲者で。オリジナルから良くなるのは、”50%50%”なんですよ。つまりよくなる場合と悪くなる場合がある。絶対に良くなるとは限らない。本当に作り手の腕・耳次第ですね。
映像処理はブラビア同等。「VPL-XW7000」は本気の購入検討機種(本田)
本田: イマーシブと言えば……1月に発売したパナソニックの「DMR-ZR1」がありますね。画質も素晴らしいのですが、音質がまたいい。特にイマーシブオーディオに変換する機能はよくできています。
本田: それから、HDRコンテンツ時代になってから、少し投資のモチベーションが下がっていたプロジェクターですが、ソニーのVPL-XWシリーズは真面目に買い替えを検討すべき製品だと感じました。
本田: HDR対応プロジェクターはここ数年、JVCが巧みな映像処理で良い絵を出していましたが、ときおり映像処理の弊害を感じることがあって、今使っているソニーの「VPL-VW1100ES」を買い替えることができていませんでした。
しかし、今年の製品はどちらも基本的な輝度が上がったこともありますが、どんなコンテンツでも安定してHDR効果を明確に感じられる上、映像処理の品質も最新のブラビアと同等になりました。レンズ品質の違いはありますが、100インチ以下ならどちらを選んでもいいと思います。個人的には上位「VPL-XW7000」は本気の購入検討機種ですね。
≪後編へ続く≫
2022年の“ビジュアル名品3選”~山之内正編
パナソニック「DMR-ZR1」
オーディオ信号も含めてデジタル系にリソースを集中させることで「DP-UB9000」を上回る画質と音質を目指したBDレコーダーである。個人的にはレコーダーではなくプレーヤーとしてUB9000の開発を期待していたのだが、圧巻のクオリティを実際に見てしまうと納得せざるを得ない。ハイエンド級のホームシアターを支えるソース機器の基準機として、いまのところ他の追随を許さない孤高の存在だ。
ソニー「VPL-XW7000」
直視型ディスプレイの高輝度・高コントラスト映像に慣れてしまうと、スクリーンに投影したプロジェクターの映像は物足りないと感じるかもしれない。だが、100インチを超える大画面の吸引力はOLEDや液晶とは別物で、イマーシブオーディオの立体音響空間に釣り合うスケール感を堪能できる。輝度とのコントラストを大幅に向上させたXW7000はHDR映像の表現力が格段に向上しており、テレビと見比べたときの違和感は小さくなった。VPL-VW1000/VW1100からの買い替えなら筆頭に上げるべき候補である。
2022年の“ビジュアル名品3選”~本田雅一編
パナソニック「DMR-ZR1」
デジタル出力に特化して映像と音響の両面を徹底的に磨くと、ここまで画質と音質が上がるのかと驚かされた製品。基本的な映像処理はUB9000と共通だというが、細かな改良は期待以上。4K放送も素晴らしい画質で見せてくれる。サラウンド音声チャンネルをアトモスにアップスケールする機能も使ってみると納得の出来。今後、この製品を上回るプレーヤーが登場するとも思えない。今後数年は最高峰を名乗れるだろう名品だ。
ソニー「VPL-XW7000/XW5000」
直視型ディスプレイを前提とした現代のHDRコンテンツはプロジェクターには不向き。映画を楽しむならストリーミング配信ならSDR版もあるではないか。そう思ってきたが、この2モデルはやっとそんな現場でも”欲しい”と思えるものに仕上がった。映像処理の工夫だけでHDRをそれらしく見せるのではなく、機器の能力の範囲内で正確に描こうとする上、XW7000では格段の光量向上で表現力が高まっている。レンズ描写に優れたXW7000は理想だが、やや光量が少ないとはいえ100インチまでの暗室ならXW5000のコスパも業界随一で見逃せない。